第67話(97/07/11 ON AIR) | ||
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『「あたりまえ」ということ』 | 作:冬乃 モミジ |
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七月。 小さなアパート。 同棲している二人。 二人とも二十二、三歳。 男はフリーター。女はOL。 つきあいはじめて半年ほど、 暮らしはじめてまだ、四、五ヶ月といったところ。 なんでもない夜、夕食をすませて二人でビールを飲んでいる。 |
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オトコ | 夏やなぁ。
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オンナ |
うん、夏やね。 |
オトコ |
夏、来たなぁ。 |
オンナ |
(笑)そうや、夏や。 |
オトコ |
あっつう! |
オンナ |
(笑)そら、しゃぁないわ、夏やもん。 |
オトコ |
な、ビール。 |
オンナ |
早いなぁ、ハイ。(ビールを注ぐ) |
オトコ |
ああ、遊びたいわぁ。 |
オンナ |
何ゆうてんのよ、いっつも遊んでるようなもんやんか。 |
オトコ |
…きっついなぁ。 |
オンナ |
…なぁ、もうすぐお祭りやんなぁ。 |
オトコ |
え?ああ、そうやなぁ。 |
オンナ |
わたし、お祭り好きでなぁ。 |
オトコ |
ふーん。 |
オンナ |
去年な、一緒に行ってくれる子いてへんかったからな、一人でいって ん。 |
オトコ |
気色わる! |
オンナ |
しかも、浴衣着て。 |
オトコ |
うわ、それ恐いで! |
オンナ |
(笑)そうか?
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オトコ |
めちゃめちゃ恐いわ。みんなに振り返られへんかったか? |
オンナ |
ううん、別に。誰も他人(ひと)のことなんか見てへんわ。ひととお りプラプラ歩いて、花火見て、ビール飲んで帰ったわ。 |
オトコ |
変やわ、それ、変やわ。 |
オンナ |
そうかなぁ。だって、友達みんな、なんやかんやで一緒に行かれへん かったし、わたしは、どうしても浴衣着てお祭り行きたかってんもん。 しゃぁないやん。 |
オトコ |
まぁ、ええけどな。
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オンナ |
な、お祭り、一緒に行ってくれる? |
オトコ | イヤ。 |
オンナ |
なんでよぉ? |
オトコ | いややわ、人多いもん、俺、嫌いやねんあんなん。 |
オンナ | お祭り嫌いな人なんかおんの? |
オトコ | おまえ、行きたかったら、また一人で行ったらええやん。 |
オンナ |
…ひっどぉ。二人で行きたい女心がわからへんの?一人やったら行か へんわ。 |
オトコ | 去年は一人で行ったんやろ?今年も行ったらええやん。 |
オンナ |
ちゃうの。一緒に行きたい人がおるのに一人で行くのはいややの。 |
オトコ |
…あんな、俺はな、そういうヤツやねんて。なんでわざわざ人いっぱ いの所を歩かなあかんねんな。おまえは行きたくても俺は行きたくな いねん。しゃぁないやろ。あきらめ。…な、ビール。 |
オンナ |
…アホ、自分で注いで。 |
オトコ |
…なんやねんな、もう…(ビールを注ぐ) |
オンナ |
一緒に歩きたいって、あたりまえの感情やと思うけどなぁ。 |
オトコ |
おまえの「あたりまえ」と俺の「あたりまえ」は違うねん。 |
オンナ |
そうかもしれんけど…あーあ。 |
オトコ |
俺は一生そういうヤツやからな。 |
オンナ |
あーあ。(さらに大きなため息) |
オトコ |
(笑)(甘えるように)なぁ、祭行ったらな。 |
オンナ |
何よ、行かへんわ。 |
オトコ |
どっちでもええけど、行ったらな。 |
オンナ |
何よ。 |
オトコ |
たこ焼買うて来てな。 |
オンナ |
たこ焼? |
オトコ |
ビール冷やして待っといたるわ。 |
オンナ |
…行かへんわ、アホ。 |
オンナ |
…な、ビール。 |
オトコ |
あんまり飲みすぎんなよ。(ビールを注ぐ) |
オンナ |
うん。…なぁ、わたしがたこ焼嫌いやったらどうする? |
オトコ |
うそ!たこ焼嫌いなヤツなんかおんの? |
オンナ |
(笑)知らんけど、どっかには居てるやろ。 |
オトコ |
はぁ、それはえらいこっちゃな。 |
オンナ |
(笑)ほんまや、誰かの「あたりまえ」なんてイイカゲンなもんやぁ。 |
オトコ |
(笑)そやろ。 |
オンナ |
ここにこうして居てるのは? |
オトコ |
はぁ? |
オンナ |
あたりまえ? |
オトコ |
え、…なんやねんな。はずかしいやっちゃな。 |
オンナ |
ふうー。(ため息) |
オトコ |
(笑)そやな、普通やな。…あたりまえや。 |
オンナ |
…そう。(うれしそう) |
オトコ |
(甘えた声で)な、たこ焼買うて来てな。 |
オンナ |
(笑)知らんわ。 |
オトコ |
ちょいちょい(おいおい)、つまみないで。(テーブルの小皿をカチカ チさせる。) |
オンナ |
もう! |
(「早よせぇアホ」「なによ、うるさいなぁ」楽しそうである。) 間 (先程までとは違う空間) |
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オンナ |
「あんたらのは、〈生活〉というより〈生活ごっこ〉やって母親に言 われた。けど、このバカバカしく過ぎていく時間が私は大事。 … な、そやんな。」 |
オトコ |
「え、…なんやねんな、おまえ、ハズカシイこと言うな、あほボケカス」 |