第167話(99/06/11 ON AIR) | ||
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『おいしい おいしい ああおいしい』 |
作:深津 篤史 |
トビラを開けると雨の音。 | |
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男 | おかえり |
女 | うん |
男は食器を洗っている | |
女 | 急に降ってくるんやもん |
男 | うん |
女 | タオル、タオル |
男 | カッパ着てけゆうたやろ |
女 | カッパなあ |
男 | カゼひくで |
女 | アホはカゼひかん |
男 | まあ、せやな |
女 | もう店じまい? |
男 | この雨やしなあ、酔客もおらんやろ |
女 | 静かなもんやな |
男 | ちょっと早いけど店じまいや |
女 | ほうかあ |
男 | ラーメン食うか、いつものやつ |
女 | うーん、どうしよっかなあ |
男 | あれ、珍しいな |
女 | うん、珍しい |
男 | お前、髪の毛ビショビショやないか |
男、洗う手を止めた | |
女 | 今、気いついたんか |
男 | そらお前、仕事中やし、早よふけ |
女 | カッパやからな |
男 | 何やそれ |
女 | おもんないか |
男 | わからんわ、早よふけて |
女 | ふいてくれ |
男 | 自分でせえ |
女 | セクシーか |
男 | セクシーやあるかい |
女 | おっちゃん、やもめ長いんやろ、サービスや |
男 | おっちゃん言うな、まだ33や |
女 | 立派なおっちゃんやないか |
男 | 33でおっちゃんか |
女 | ふいてくれ |
男 | しゃあないなあ |
男、女の頭をふいてやる | |
女 | やさしくして |
男 | あほか、はいあがりや |
女 | おおきに |
男 | 何や |
女 | うっ |
女、カウンターにつっぷした。 | |
男 | 今度は何や |
女 | カッパかしな |
男 | あほ |
女 | 頭かわいたら力ぬけた |
男 | しようもない事いうとらんと |
女 | チューせえ |
男 | 何言い出すねん |
女 | お姫さんに王子様のチューで目え覚ますもんや |
男 | お前、カッパか白雪姫かどっちかにせえや |
女 | どっちもや、王子様にしちゃふけとるけど このさいガマンしたる |
男 | あんなあ |
女 | ここやここ、頭のてっぺん ここにチューせえ |
男 | 何でやねん |
女 | 早よせえ、死ぬど |
男 | ほんまに |
男、キスをした。 | |
女 | ええにおいしたか |
男 | ラーメンのにおいやな |
女 | 色気もへったくれもないな |
男 | さ、おきいや |
女 | …… |
男 | 何やねん |
女 | ありがとう |
男 | 何や |
女 | ここは見つめあうシーンや |
男 | 見つめあうて |
女 | 貴方のおかげで私はふつうのお姫様にもどることが できました |
男 | ふつうのお姫様て、何やねん |
女 | ええとこのお姫さんとちゃうしな |
男 | うん |
女 | ええとこのお姫さんはラーメン屋では働かん |
男 | うん |
女 | 明日から新しい子くるんやろ |
男 | ああ、そやな |
女 | こないだ面接きとった茶髪のにいちゃん |
男 | まあな |
女 | 色気ないなあ |
男 | そのぐらいがちょうどええねん |
女 | さみしいか |
男 | さみしいことあるか |
女 | うちはさみしい |
男 | あほ |
女 | おっちゃんが顔赤くしてもかわいい事ないな |
男 | ほっとけ |
女 | ラーメン作れ、いつものやつ |
男 | 最後やしチャーシューおまけしようか |
女 | いつものやつでええ |
男 | うん |