第225話 (2000/07/21 ON AIR) | ||
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『さまざまな結婚』
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作:四夜原茂 |
「老人2人の会話です。 |
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男 |
おーい。こっち、こっち、こっちじゃー。どこ見とんじゃ、 |
女 |
あなた、やめて下さいよ。はずかしいじゃないですか。 |
男 |
なにがはずかしいんじゃ。お前、もうちょっとで迷子になる |
女 |
はいはい。 |
男 |
なにつっ立っとるんかの?すわってまあお茶でも飲んだちぇえ。 |
女 |
ええ、コーヒーにします。 |
男 |
コーシーをたのむ。砂糖は多めに入れといてもらおかの。お |
女 |
あなた、砂糖はここに入ってるんじゃありませんか。ほらほ |
男 |
…ほんに。このツボに入っとったのかー。それならそうと言っ |
女 |
入れてあげますよ、わたしが。いくつ入れましょうか? |
男 |
まず、5杯くらい入れて様子を見ようかの。 |
女 |
はいはい。まず5杯ですね。 |
男 |
…で、どうじゃった?ええの見つかったかの? |
女 |
見つかったって、何がですかね? |
男 |
な、なんじゃて?お前、何も買うてねぇのか。 |
女 |
あれ?何か買う約束でしたかね。 |
男 |
なに言うか。お前が言いだしたんじゃど。記念日じゃからプレ |
女 |
あら。 |
男 |
「あら」ってお前、じゃあ何のためにわしら、電車乗って、 |
女 |
…さあ。 |
男 |
だめじゃ。とうとうボケがはじまってもうた。 |
女 |
ああ、誰でもなるんですよ。たいした事ないですよ。ちょっと |
男 |
でもよ。記念日っちゃ、大事な日なんじゃ。それをお前…あ、 |
カチャリとテーブルに置く音。 | |
女 |
ああ、どうも。それじゃ、いただきます。 |
男 |
砂糖は多めに入れといてくれたかの?あんた。砂糖は入れとい |
女 |
あなた。砂糖はこのツボに入ってますって。 |
男 |
あ、ああ、ああ、そうじゃった。 |
女 |
あなたは何を買ってくれたんですか? |
男 |
わしはちゃんと買うた。宝石売り場のねえちゃん達に相談して |
女 |
あなた、宝石買ったんですか? |
男 |
ああ、ドーンと宝石ば買うた。お前のためじゃけん。金に糸目 |
女 |
…。 |
男 |
あれ、どげんした?そんな目ばふせて。うれしくなかか? |
女 |
うれしいですよ、そりゃ。なんか、昔のこと思い出しちゃった |
男 |
ああ、昔のことか。お前、美人じゃった。ああ、今でも美人じ |
女 |
あなたも、りりしい男でした。ああ、今でもりりしい男だと私 |
男 |
うれしくてうれしくて、婚礼で飲みすぎたわしは、そのまま酔 |
女 |
うふふふ…。お調子者でしたね。あなた。 |
男 |
そうじゃ、調子に乗って、踊りまくった。あれがいかんかった。 |
女 |
うふふ…。ほんとに大声でしたよ。アハハハ…。 |
男 |
その後、旅行に行ったかの? |
女 |
熱海でした。 |
男 |
おろ?白浜じゃなかか? |
女 |
熱海でしたよ。 |
男 |
たしか白浜じゃと思ったんじゃが… |
女 |
どっちだっていいじゃないですか。たいした違いじゃないですよ。 |
男 |
ああ、そうじゃな。たいした違いはないわな。一泊二日の新婚 |
女 |
え?はじめて聞く話ですよ、それ。行き先はどこでもよかった |
男 |
あたり前じゃろ。新婚旅行なんじゃもん。目的はひとつだけじゃ。 |
女 |
そうだったんですか。 |
男 |
じゃが、まてよ。この旅行でもわしは、酔いつぶれちょったかな? |
女 |
あたり前ですよ。あんなに飲んで、何度も温泉につかったら誰 |
男 |
はずかしかったんじゃろ。 |
女 |
え? |
男 |
なんかの。わしら、見合いの時に一回だけ顔を見て、次に会う |
女 |
あーあ。なんかそんな感じでしたね。二人っきりになるとなん |
男 |
そんなことしちょったかの?海を見ながら砂浜を歩いたのはな |
女 |
あなた緊張してましたよ。出来上がった写真を見ると、口をへ |
男 |
そんなことしちょったか…。やっぱ、はずかしかったんじゃろ |
女 |
あたしも、そりゃ、はずかしかったんですよ。だから、あんま |
男 |
ああ、そうじゃったなぁ。お前、あんまりしゃべらなかったか |
女 |
そうじゃなかったんですよ。そうじゃなくて、なんかはずかし |
男 |
そうじゃったのかー。 |
女 |
今ならいろいろ話せて楽しいでしょうにね。もったいないこと |
男 |
ああ、もったいない旅行じゃったなぁ。 |
女 |
ええ、もう二度と行けませんしねぇ。 |
男 |
…行ってみるかの。 |
女 |
え? |
男 |
白浜。 |
女 |
熱海。 |
男 |
ああ、熱海。 |
女 |
だめですよ。もう手おくれなんですよ。 |
男 |
あー、やっぱり手おくれなのかのー。…お前、あれ知り合いか? |
女 |
え? |
男 |
ほれ、あのバアさん。さっきからずーっと、こっち見てるんじ |
女 |
あらあら、たいへん。こんな所に私がいたんじゃ奥様はお困り |
男 |
え?なんじゃて? |
女 |
ほらほら、大きなプレゼント持ってるじゃありませんか。あな |
おわり |