| 第157話(99/04/02 ON AIR) | ||
|---|---|---|
| 『ハルノヒ』 | 作:深津 篤史 | |
| ひとしきり、強い風が窓をゆらした | |
|---|---|
| 女 | おきてたの? |
| 男 | うん、あれ? |
| 女 | 何 |
| 男 | 起こしちゃった? |
| 女 | ううん、何時? |
| 男 | 5時すぎ |
| 女 | ふうん |
| 男 | ねてなって |
| 女 | のど、かわいた |
| 男 | うん |
| 男立って台所の方へ、水道の音 | |
| 女 | (台所の男に)始発で帰んの? |
| 男 | いや(戻ってきて)水でいい? |
| 女 | いいよお |
| 男 | …何? |
| 女 | のませて |
| 男 | 自分でのめって |
| 女 | うん(女、水をのんで)おきてるの? |
| 男 | いや、…あ、こら |
| 女 | 朝から元気 |
| 男 | そりゃ… |
| 女 | 若いね |
| 男 | まだ30だし |
| 女 | 長いよね |
| 男 | え? |
| 女 | 私達 |
| 男 | うん |
| 一ヶ月ぶり? | |
| 男 | だいたい、そうかな? |
| 女 | 時々 |
| 男 | 何 |
| 女 | もう、こないんじゃないかって思う。 |
| 男 | そんなことない。 |
| 女 | あたし、死んでもわかんないでしょ |
| 男 | おい |
| 女 | 怒った? |
| 男 | いや… |
| 女 | まだ元気 |
| 男 | さわってるから |
| 女 | する? |
| 男 | ええと |
| 遠くで鳥の鳴く声 | |
| 女 | カラス |
| 男 | 何だかなあ |
| 女 | 商店街、近いし |
| 男 | あのさ |
| 女 | 何 |
| 男 | 風の音。泣き声みたいだなって思って |
| 女 | 何それ |
| 男 | バンシーって知ってる? |
| 女 | え? |
| 男 | 西洋の妖怪?いや妖精? |
| 女 | こわい話? |
| 男 | うーん |
| 女 | 話して |
| 男 | きれいな女の人の姿形をしててね。夜、みんなが 寝静まった頃、家の周りを泣きながら飛んでくん だ。すると、近いうちにその家から死人がでる。 まあ、バンシーが泣くと死人がでるんじゃなくて、 死人がでるからバンシーが泣くって言った方がい いかもしれない。家の人に知らせにきてるわけだ し。うん。死人がでるよお、悲しいよおって。 |
| 遠くで鳥の鳴く声 | |
| 女 | あれ、ねちゃった? |
| 男 | … |
| 女 | 俺、見たような気したんだよね。女の人が泣きな がら走ってく。ここ、7階だろ? |
| ふたたび風の音、強く、ひとしきり | |
| 男 | …おい、ちょっと、おい! |
| 女 | 何 |
| 男 | いや |
| 女 | ごめん、ねちゃった |
| 男 | なあ、このマンション、何人ぐらい住んでると思う? |
| 女 | 知らない 100人ぐらい? |
| 男 | そっか |
| 女 | どうしたの? |
| 男 | ううん |
| ふたたび風の音 | |
| 女 | バンシだっけ? |
| 男 | あ、うん |
| 女 | 泣くと、どうなるの? |
| 男 | どうもしないよ、マンションだし |
| 女 | ふうん |
| 男 | すっかり朝だね |
| 女 | ねえ |
| 男 | 何 |
| 女 | 春一番って唄、あったよね |
| 男 | ああ |
| 風がふいている。静かに音楽 |
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