| 第227話 (2000/08/04 ON AIR) | ||
|---|---|---|
| 『夏のお仕事』
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作:深津篤史 | |
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セミ時雨… |
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| 女 |
今日はもうええの |
| 男 |
え |
| 女 |
仕事 |
| 男 |
こう暑いと仕事ならんなあ |
| 女 |
せやけど |
| 男 |
って、おっちゃんがゆうてた |
| 女 |
おっちゃんて、カントクの |
| 男 |
うん。なあ、お好み焼でも食べにいこか |
| 女 |
お好み焼 |
| 男 |
キンキンに冷房の効いた店でビールのんで |
| 女 |
今晩やろ |
| 男 |
え |
| 女 |
コンサート |
| 男 |
まあ、せやねんけどな |
| 女 |
お好み焼たべて、ビールのんでる場合とちゃうやん |
| 男 |
はるちゃん、幾つになったんやっけ |
| 女 |
え、私 |
| 男 |
うん |
| 女 |
20才 |
| 男 |
せやろ、もうどうどうとビールのめるなあ |
| 女 |
お兄ちゃん 何言うてるの |
| 男 |
お兄ちゃんか |
| 女 |
どないしたん |
| 男 |
お兄ちゃんももう今年で30才 |
| 女 |
知ってるよ |
| 男 |
この仕事も今年で5年 |
| 女 |
うん |
| 男 |
はるちゃん、まだ中学生やったもんなあ |
| 女 |
お兄ちゃん |
| 男 |
覚えてるか 5年前は桑名正博のコンサート |
| 女 |
うん |
| 男 |
若い子誰も知らん、知らん |
| 女 |
うちのお父さんよろこんどったで |
| 男 |
次が牧しんじや |
| 女 |
そうそう |
| 男 |
今年は名前も知らんような演歌歌手や |
| 女 |
この町、若い人少ないから |
| 男 |
ええとこやのになあ |
| 女 |
ほな、なんで出ていったん |
| 男 |
ははは |
| 女 |
ええとこやのに |
| 男 |
せやから毎年帰ってきてるんやないか、里帰り、仕事ついでに |
| 女 |
うん |
| 男 |
はるちゃんはどっか出ていこうて思たことないか |
| 女 |
お父ちゃん病気やからな |
| 男 |
旅館の手伝いか |
| 女 |
うん、これでも三代つづいたシニセやからな |
| 男 |
今時珍しいで そういうの |
| 女 |
私、この町好きやから、何にもないけど |
| 男 |
海ぐらいか |
| 女 |
山もある |
| 男 |
俺この町おっても仕事なかったからな |
| 女 |
わかってる |
| 男 |
ははは |
| 女 |
何よ |
| 男 |
いや、はるちゃんもゆうようになったなあ思て |
| 女 |
いつまでも子供や思てたらあかんで |
| 男 |
せやな |
| 女 |
なあ、どないしたん |
| 男 |
金、持ちにげされたそうやわ |
| 女 |
え |
| 男 |
されたいわんな。持ちにげしたんは社長やからな。 |
| 女 |
何、どういうこと |
| 男 |
まあ、俺らにとっては持ちにげされたゆうことになるんかな |
| 女 |
お兄ちゃん |
| 男 |
ちゅうことで今日のコンサートはなしや。お好み焼たべにいこか |
| 女 |
…… |
| 男 |
職探さんといかんなあ。来年からはこられへんか、ここも |
| 女 |
お兄ちゃん |
| 男 |
お兄ちゃんはやめにしようや。俺ははるちゃんにとって |
| 女 |
うん |
| 男 |
今日からただのおっさんや。30やしな。 |
| 女 |
なあ |
| 男 |
何や |
| 女 |
おっさん、お好みたべにいこか。私がおごったげるわ。 |
| 男 |
ははは |
| 女 |
ぴちぴちの若い女の子のおシャクつきやで。 |
| 男 |
ぴちぴちなあ |
| 女 |
明日、泳ぎにいこ |
| 男 |
え |
| 女 |
明日はまだ、こっちおれるんやろ |
| 男 |
うん |
| ー了ー |
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