| 第200話 (2000/01/28 ON AIR) | ||
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| 『タツの日』
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作:久野 那美 | |
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風の中。絶え間なく、ブランコの音。 |
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| 兎(N) | 1月1日。快晴。公園はしんと静かだった。 |
ふと。後ろで誰かの気配がした。 |
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| タツ | あけましておめでとうございます。 |
| 兎(N) | タツは軽く会釈をし、新年の挨拶をした。 |
じゃり、じゃり |
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| タツ | 兎さん…ですよね。 |
| 兎 | わかります? |
| タツ | ええ。わかりやすい形ですから。 |
| 兎(N) | 馬鹿にされたような気持ちがした。 |
| 兎 | わかりやすいのは形だけです。見てわからないこともありますよ。 |
| タツ | ??? |
| 兎 | ひとを食べる兎の話…聞いたことありますか? |
| タツ | ひとを食べるんですか。 |
| 兎 | はい。 |
| タツ | あなたが? |
| 兎 | ええ。 |
| タツ | 兎なのに? |
| 兎 | 兎なのに。 |
| タツ | ふうん。 |
| 兎 | 食べないと死んでしまうんです。この町の人もみんな、食べて |
| タツ | この、町の人…。…(ぼおっ炎を吐く) |
| 兎 | ………炎を吐きましたね。 |
| タツ | …ごめんなさい。 |
| 兎 | いえ…。 |
| タツ | きいてますよ、ちゃんと。 |
| 兎 | …。 |
| 兎 | 人を食べる兎との付き合い方を誰も知りません。僕にもわからないんです。 |
| タツ | 文学…(ぼおっ炎を吐く) |
| 兎 | はい。 |
| タツ | 哲学…(ぼおっ炎を吐く) |
| 兎 | はい。 |
| 兎(N) | なんだかひどく疲れてきた。 |
| タツ | 何をやっても、どうしようもないんですね。 |
| 兎 | …。 |
| タツ | 兎なのにね。 |
| 兎 | …。 |
| タツ | あなたが「間違った兎」だからですね。 |
兎(N)タツはきっぱりと言い放ち。そして七色の炎を吐いた。 |
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兎あなたも人間を食べるんですか? |
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タツいいえ。 |
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兎…タツって、は虫類ですか? |
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タツ…(無視) |
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兎卵を産みますか? |
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タツ(無視) |
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兎…空を飛びますか? |
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タツ(無視) |
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兎休みの日は何をしてるんですか? |
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タツ(ぼーーーーーっ大きな炎を吐く) |
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兎…ごめんなさい。質問されるのは嫌いですか? |
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タツ答えられないんです。何を聞かれても。 |
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兎?? |
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タツ存在しない生き物だから。 |
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| 兎 | え? |
| タツ | 正しいタツも間違ったタツもいない。タツなんていないんです、どこにも。 |
| 兎 | だって…。 |
| タツ | あなたは今、私と話をしているけれど、ほんとはそんな気がするだけ。 |
| 兎 | …。 |
| タツ | だからわたしは人間を食べたりしないし、兎も食べたりしないし、 |
| 兎 | …。 |
風が吹く。 |
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| タツ | (ぶるるっとふるえる) |
| 兎 | 寒いですか?…。 |
| 兎 | …寒いですか? |
| タツ | 平気です。寒い時は炎を出しますから。 |
| 兎(N) | タツは地面に降り、大きな炎を吐いた。 |
間 |
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ふとブランコの音が止まる。兎がとび降りたのだ。 |
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| タツ | 何処行くんですか? |
| 兎 | おなかがすきました。ここにはもう。食べるものがありません。 |
| タツ | 乗らないんですか? |
| 兎 | はい。 |
| タツ | (ブランコを揺らしてみる) |
| 兎(N) | 背後でじりじりと音がした。 |
| タツ | さよなら。(ほおっ) |
| 兎 | …さようなら。 |
兎(N)タツに背を向けて、てくてくと歩いた。 |
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| (終わり)……………………………………………………… |
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