スペースカフェ。
キリ
へぇ・・・あれが、ガクさんかー。
リイ
ね、わかいでしょ。
キリ
でも、ほんとなの、500年前からずっとああって。
リイ
うん、そうみたい。
エン
じゃなに、ちゃんと人?
リイ
エンちゃん!遅い!
エン
ごめんごめん。よく寝たよー!
リイ
全くもー。そう人。触れる。それに、会釈もする。
店長
それに、ちゃんと会話もしますよ。
エン
おっ。店長!
店長
いらっしゃいませ!
エン
お久しぶりですっ
店長
相変わらず調子良さそうですねえ。エンくん。
エン
僕、ココアで。
店長
はいはい。
エン
いや若いよ、ずっと若い。本当にいたんだガクさん。
リイ
うん。伝説かなにかだと思ってた。!
キリ
500年も、いやずーっと前からか。じゃああの人、地球で暮らしてたってことになるな・・・。
店長
そういうことになりますね。
エン
地球で・・・。
リイ
私、行ってみる。
キリ
え、まさか声かけるの?
リイ
うん。
エン
じゃ僕も行く!
キリ
ややややめとけよ。なにに巻き込まれるかわかんないぞ。
リイ
話したいの。もし、全部本当なら。あの人、ひいおじいちゃんの初恋の人だから。
エン&キリ&店長
えっ。
キリ
でも、なに話すんだよ・・・。
リイ
わかんない! でも、話したい!ひいおじいちゃんから受け継いだ家訓なの。
キリ
はあ?
リイ
とにかく飛び込め!
エン
やっぱり僕も行く!
キリ
ばか!エン!お前はやめとけ。
リイ
行ってくる!
ガタガタ。
リイ
あの・・・こんにちは!
キリ
あ、あー。話かけちゃったよー!リイはいっつもああだもんなあ。
エン
でもさ、なんかさ、あの人500年感じないね。
キリ
うん。
ガク&リイ
あははは。
エン
あ、笑った。
店長
そりゃ笑いますよ。
エン
ハハ、しかもおっきい、あの人の笑い声。あ、机叩いて笑ってる。
キリ
500年の重みがないよな。
店長
そうなんですよね・・・それで、実に
リイ
ウッソーーー!
ガク
嘘じゃない!
ガク&リイ
あはははは。
店長
・・じつに楽しそうなんですよねえ。はい、ココア。
エン
・・・何であの人、ずっと生きてるんだろ。
店長
さあ・・・
ガタガタ!
リイ
キリくん、エンちゃん!
エン&キリ
はい!
リイ
一緒にどうぞって!
キリ
え!
エン
えーーー、いいんですか!
リイ
うん! ね、ガクさん!
ガク
うん。
エン
えーーー、そっち行きますね、僕、そっち行きますね!
キリ
エン!
エン
ココア持って行きますね!
ガク
あなたがエンさん。
エン
はい! エンです!エンのエンは円形のエンです!
ガク
それから、あなたが、キリさん。リイさんの恋人。
キリ
リイ!
リイ
えへへ。言っちゃった!
エン
えっ。そうなの! 二人そうなの? いつの間に!!
リイ
えーと・・一昨日くらい?
エン
ええー!教えてよー!
店長
エンくん! ココア、こぼれてます! 
みんな
あーっ
エン
すみません、ガクさん、服に!ココアが!
ガク
大丈夫!
エン
あ。笑った。・・・えくぼだ。右頬に・・・
ガク
えっ。
キリ
エン!
エン
すすすみません!僕!変なこと言って。
ガク
いいの。ニィィィイ。
エン
へ?
ガク
ほら、みて、三つできる。エクボ。
エン
へんな顔。(ここで恋に落ちる)
キリ&リイ
エン!!
ガク
いいのいいの。・・・あのね、500年じゃないの。
エン&キリ&リイ
え?
ガク
523年。
エン
523・・・
ガク
私、長く生きすぎてるの。どうぞよろしく。
エン
差し出された手を一番に握ったのは僕だ。笑った右頬。やっぱりエクボが浮かんだ。
僕は吸い込まれるように、それをみていた。その時だ。
クリスマスソング
エン
スペースカフェに、クリスマスソングが流れ始めた。500年前から変わらないクリスマスソング。
僕とガクさんを包むクリスマスソング。
ガク
そっか。クリスマスなんだ、今日!
エン
はい!クリスマスです!
キリ
おいエン。手離せよ。ガクさん困ってるだろ。
リイ
エンちゃん!
エン
どうして!
ガク
え?
エン
どうしてそんなに長く生きれるんですか。
ガク
・・・。
エン
どうやったら。そんなに・・・笑えるんですか。
キリ
なにいってんのエン!
エン
僕も生きたい。あなたと。
みんな
はあ??
エン
あなたと!!
みんな
エン!!
エン
(まくしたてる)彼女の存在は知ってた。
500年前。地球という星から僕らが離れた時に、その中で数名、年を取らない人類が現れた。
全部で七人だ。ファイナルセブンって呼ばれた。何だよそれ。原因はわからない。
その七人だけ、なにかしらの使命を帯びてるんじゃないかってことになったけど、
何だよそれ!見てよ。普通の人じゃないか。
にぎったまま離さない僕の手を、びっくりした目で見てる。
その目がキラキラ輝いてる。普通の女の子じゃないか!
キリ
エンーーー!!てめー!
みんな
いい加減にしろ!!
バシッ
エン
いってーーー!
ガク
あなた誰なの・・
エン
エンです!
ガク
知ってる!
エン
好きです!あなたが好きです!
リイ
エンちゃん!! あってまだ数分だよ!
エン
関係ないよ!きたんだ! 僕にも恋がやってきたんだ!!
キリ
店長、こいつ抑えてください!
店長
お、おう!
エン
しかも500年も前から生きてたんだ!僕の好きになる人が!
みんな
エン!しっかりしろ!
エン
ガクさん!
ガク
はい・・・
エン
僕と!
みんな
まさか・・・
エン
結婚してください!
みんな
こおらっ!!エン!!
水が落ちて、響く音。
エン
僕はゲートに閉じ込められた。
警護
面会だ。
店長
エンくん・・・きみねえ・・呆れますよ。
エン
店長。僕ここを出ます。
店長
どうやって!
エン
どうにかして。
店長
どうかしてますよ、エンくん!
エン
どうかしてるんですよ!店長! 好きになるのに理由なんてなかったんですよ!
店長
わからんでもないですよ。素敵な人です。でも、相手がまずい。523年だ。
エン
ええい! こっちは、30年だ!
店長
え、うん。え?
エン
今まで、誰も好きにならなかったんですよ! その理由が、ビカーってきたんです!!
店長
キミねえ!
エン
僕は!絶対に抜け出す!絶対に!!
だって・・・せっかくの・・・初恋なんだ!まだなにも始まっちゃいない!!
リイ
(どこからか響く声)本気なのね。エンちゃん!
エン
リイ?
警護
な、何だ君たちは!な。な。
ビリビリビリ
警護
なー!グエッ
バタン!
エン
リイ! キリくんまで!
キリ
俺は、やめろって行ったんだよ?!だったら別れるってこいつが言うから!
リイ
人の恋路は邪魔しない!行くわよ!エンちゃん!
エン
ありがとう!
警報がなる。
店長
走りますよ!! 彼女、私の店で待ってます!
エン
うん!
走りながら。
リイ
ガクさん、約束してたんだって!
エン
え?
リイ
500年前のクリスマス。地球で、恋人と待ち合わせをしてたんだって。
必ず行くって、だから待っててって。だからガクさん、その約束をずっと守ってるんだって!
エン
じゃあ僕振られるね!!
リイ
そうかな!!
エン
そうでしょ!!!
リイ
恋人は、エンくんかもしれないじゃん!
エン
なにいってんの、リイ! 僕30年しか生きてない!
リイ
生まれ変わって、エンくんになったのかもしれないじゃん!!
エン
はあ?
キリ&店長
こっちだー!
リイ
500年だよ!!500年!!そんなにあったら、私たち何度、生まれ変われるの。
エン
え・・・
ウイーン、と何かが開く。
店長
しまった! 私の店、スペースレンジャーに囲まれてます!!!
みんな
スペースレンジャー!!!??
キリ
そんなのいたのか!
店長
ガクさんはファイナルセブンです。世界が守ってるんだ。
キリ&リイ
どうする?
エン
どっかのじいちゃんの遺言だよ。とにかく飛び込む!!
ガク
エンーーー!!
エン
ガクさんの声だ・・・!ガクさーーーん!どこですかー!
みんな
あ! あそこ!!
店長
私の店の真上。地球と月の間。星空のど真ん中です・・・
エン
それはスローモーション。空たかく、両手を広げて、ガクさんは僕に向かって飛んできた。
僕は、手を広げた。ガクさんは、僕の胸に飛び込んできた。
ぶつかる音。か、抱きしめる音。
ガク
エンーーー!!
エン
ってーーー!
ガク
はあ・・・はあ・・・。エン!私!
心臓音
エン
今朝は、僕、まだ寝起きだった。心臓は動いてたかな。自信ない。
なのに今はこんなにはっきりわかる。ガクさんを見た瞬間に、
クリスマスソングがかかった瞬間に。もし、これが、500年前の、約束の合図なら。
ガク
私、返事してなくて!
エン
返事。
ガク
プロポーズの返事。
エン
でも僕、生まれ変わりかどうかも、わかりませんよ!
ガク
私も、あなたが誰だか全然わからない!!でも、
エン
彼女の目が輝いてる。
ガク
一緒に生きて。もしもこれから、私にシワや、白髪ができたなら。
もしも、あなたと一緒に、私が年を取れたなら、それは、約束が叶った証だから。一緒に。
エン
はい!! はい!!
抱きしめ合う二人。
ナレーション
ガクさんとエンちゃん。二人がその後どうなったかは、
もうあと、20年先に明かされる秘密。
終わり。