- ゴーーーと宇宙空間の音が消こえる。
            ドカーン……。  
        - 洋
 
        - 爆発したのか・・俺たちの住んでた星。 
 
        - 源
 
        - あの星屑が、ぼくたちの家だったなんて。
 
        - 洋
 
        - ほんとうに無くなったのか・・・
 
        - 源と洋
 
        - 10月21日朝5:00 計画通りに、惑星32(さんじゅうに)、無事爆破。
 
        - 源
 
        - 兄さん、僕たちこれからどうなるの。
 
        - 洋
 
        - また星を探すんだよ。俺たちの帰る家を。何度目だよ・・・。
            ほんと、何度目なんだよ。 
        - 音楽
 
        - 源
 
        - 宇宙船の窓から、くだけちった星のかけらをみています。
            僕らは今、無限の空間を漂っています。 
        - 歌い出し。
            人の雑踏。
            笑い声、生活音。 
        - 母
 
        - ララ! 見て!
 
        - ララ
 
        - なあに?母さん
 
        - 母
 
        - ほら、火星の横!  あんな星あった?
 
        - ララ
 
        - 星じゃないよ、あれ。
 
        - 母
 
        - じゃあなに?
 
        - ララ
 
        - 惑星32の最後の瞬間。エンディングセレモニーだよ。
            ほら、ニュースで出てたでしょ。役割を終えた星をああやって終わらせてるんだ。 
        - 母
 
        - あれが星の最後。初めてみたかも。
 
        - ララ
 
        - もうじき、12月24日、星の誕生祭。
            またいくつかの星が、ホームから宇宙へと放たれる。
            その星にもまた、町ができて、人が住む。
            そしていつか、ああやって、最後を迎える。 
        - 母
 
        - 不思議ねぇ。人の最後の瞬間には、なかなか立ち会えないけど、
            星の最後の瞬間には、いま、夜空を見上げたみんなが、立ち会ってる。 
        - ララ
 
        - ロマンチストだなあ。母さんは。
 
        - 母
 
        - ふふふ。わあ、見て。スローモーションの花火みたい。きれいねえ。
 
        - ララ
 
        - うん。きれいだ。
 
        - 音楽
 
        - ララ
 
        - 僕らの家は、ホームから宇宙船をふたつ乗り継いだ先の、惑星57にあります。
            惑星57は、57番目に作られた、とても小さな惑星です、
            あの崇めく星々の一つ一つに転々と町があり、人が住んでる。
            いま僕らは、宇宙全部を地図にして、
            どこまでも、どこまでも、暮らしています。 
        - 朝の音。
 
        - 女子たち
 
        - ララー! 
 
        - ララ
 
        - おはよう!みんな。
 
        - ハル
 
        - ララ! ララ! 
            ねえ、アイドルやめるってほんと?嘘だよね。
            12月24日の、星の誕生祭がラストステージって・・・ 
        - ララ
 
        - ほんとだよ。僕の敏腕マネージャー、母が設定してくれたんだ。
            アイドルの最後にはロマンチックだろ。 
        - ハル
 
        - ねえ! 考え直して。ララのコンサートだけが私の生きがいなの!
            私だけじゃない、全宇宙のガールズの! 
        - ララ
 
        - 言ってくれるね。でも、もう決めたことなんだ。
 
        - ハル
 
        - ララ?!
 
        - ララ
 
        - そうだ、ハルもおいでよ。今年の誕生祭もホームでやるんだ。
            きっとすごいよ。世界中からパフォーマーが集まって、盛大に祝うんだ。
            なんてったって、今年は7つの惑星を打ち上げて、空に送り出すんだぜ。
            きっとすごい景色が見れる。 
        - ハル
 
        - ちょっと!ファンの気持ちを無視するき!
 
        - ララ
 
        - ははは。アイドルってさ疲れるんだよ。
            いつもいつも笑顔で、振られた手を振り返さなきゃいけない。
            もういやだ! はは。先行くよー。学校、学校! 
        - ハル
 
        - ララ?!! もー…!
 
        - 宇宙船が迫りくる音。ゴーーー 
 
        - 女子たち
 
        - …なにあれ。宇宙船・・・まっすぐこっちに、
            ちょ。ちょちょちょっと、ララ!・・・あぶない! 
        - ララ
 
        - え? あっ。あーー!
 
        - ゴーーーーー
            宇宙船に吸い込まれた。
            遠くから声が聞こえる。 
        - 源
 
        - ララさん、ララさん、ララさん…お腹減ってませんか…。
 
        - 目覚めるララ。
 
        - ララ
 
        - はァッ。どこ?ここ!  
 
        - 源と洋
 
        - 宇宙船です。僕らの。
 
        - ララ
 
        - 宇宙船?あんた誰!
 
        - 源
 
        - あ、えー…「犯人」で間違いないよね、兄さん。
 
        - 洋
 
        - 間違いない、俺たちは、犯人だ。
 
        - ララ
 
        - 犯人?
 
        - 洋
 
        - ララさんですよね。
 
        - ララ
 
        - そうですけど…
 
        - 洋
 
        - ファンです! 握手してください!
 
        - ララ
 
        - はい…
 
        - 洋
 
        - 握手した。4Dじゃないララさんと、握手したぞーー!あったかーい!
 
        - 源
 
        - 兄さん、なにやってんの、こんなときに!
 
        - 洋
 
        - 申し遅れました。わたくし坂上洋(さかあがりよう)と申します!
 
        - 源
 
        - えっ本名名乗るの?
 
        - 洋
 
        - 本名名乗るよ! 礼儀だろ。相手はあのララさんだぞ。
 
        - 源
 
        - ええ…。
 
        - 洋
 
        - 洋って呼んでください。
 
        - ララ
 
        - よう・・
 
        - 洋
 
        - はい、ようです!! おとうとよ、おまえも名乗れ!さあ、名乗れ!
 
        - 源
 
        - 坂上源(さかあがりげん)です。
 
        - ララ
 
        - さかあがり…?
 
        - 洋
 
        - 珍しい名前でしょう! 検索しても僕らしか出てきません。
 
        - 源
 
        - 兄さん!  僕ら誘拐犯なんだよ!
 
        - 洋
 
        - わかってるよ!
 
        - ララ
 
        - 誘拐? ぼく、誘拐された?
 
        - 源
 
        - そうなんです! すみません!
 
        - ララ
 
        - いま、何日…
 
        - 洋
 
        - 12月23日です。
 
        - ララ
 
        - 23日! 
 
        - 洋
 
        - 誕生祭の前日です。
 
        - ララ
 
        - まずいよ。帰んなきゃ!
 
        - 洋
 
        - ララさん、ほんの少し俺たちに時間をください!
 
        - ララ
 
        - え?
 
        - 洋
 
        - 大丈夫です。絶対、出演時間には間に合わせます!
 
        - ゴーと宇宙戦艦の軍団がくる音。
 
        - アナウンス
 
        - ララ奪還フォーメーションα 
 
        - アナウンス
 
        - 犯人発見次第撃破 
 
        - アナウンス
 
        - ララ奪還フォーメーションα
 
        - アナウンス
 
        - 犯人発見次第撃破
 
        - 洋
 
        - きたぞ!
 
        - ララ
 
        - すごい数の宇宙戦艦…! 
 
        - 源
 
        - 勢ぞろいだ
 
        - アナウンス
 
        - 「坂上に告ぐ。坂上に告ぐ。ララを解放せよ。ララを解放せよ。」
 
        - 源
 
        - 名前呼ばれてる!
 
        - 洋
 
        - いったろ。隠したって無駄なんだ。かせ、マイク!
 
        - 源
 
        - 何いうの!兄さん!
 
        - 洋
 
        - 安心しろ。俺は、本当のことしかいわん!
 
        - 洋
 
        - 「えー。全宇宙の皆さま、初めまして、坂上と申します。
            さきほど、ララさんは元気にお目覚めになりました。」 
        
        - アナウンス
 
        - 「ララを解放し、いまここで出頭しなさい…」
 
        - 母
 
        - 「ちょっと貸して!」 
 
        - アナウンス
 
        - 「あっ、ちょっ、あの。」
 
        - 母
 
        - 「どこのだれだか知らないけど!
            本当にララは元気なの!今すぐ出しなさいララを!」 
        - ララ
 
        - 母さんの声だ! 
 
        - 源
 
        - あの三角錐の、最新型ハイブリット宇宙船からですね!
 
        - ララ
 
        - マイク貸して!
 
        - 洋
 
        - あっ、ちょっ!
 
        - ララ
 
        - 「母さん、ララです。元気だよ!」
 
        - 母
 
        - 「ララ!  よかった。あんた帰りは何時になるの?
            リハーサルあるんだけど!」 
        - ララ
 
        - 何時くらいに帰れるの!
 
        - 洋
 
        - マイクください。
 
        - ララ
 
        - あっ。
 
        - 洋
 
        - 「全宇宙の皆様。この坂上が代わりに、
            ララさんのお戻り時間をお伝えします。」 
        - 母
 
        - 「あんたに聞いてない! ララを出しなさい。」
 
        - 洋
 
        - 「こちらの条件をのんでください。そしたらすぐに。」
 
        - 母
 
        - 「条件?んなの聞くわけ」
 
        - 洋
 
        - 「聞いてください。お母さん!」
 
        - 母
 
        - 「あんたを産んだ覚えはない!」
 
        - 総裁
 
        - 「はー。…代わりなさい。」
 
        - 源
 
        - だれ、この声。
 
        - 洋
 
        - あれだよ。 あの真っ黒で一番ごつい宇宙戦艦からだ。
 
        - 総裁
 
        - 「リンです。」
 
        - 洋と源
 
        - リン総裁!
 
        - 源
 
        - 銀河系の支配者じゃないか、そんな人がなんで!
 
        - ララ
 
        - リンばあちゃん! おーい!ばーちゃん!
 
        - 源
 
        - ばあちゃん?え? 孫?
 
        - 洋
 
        - 知らなかったのか、源。ララさんはただのアイドルじゃないんだ!
 
        - 源
 
        - 知ってたら反対してたよ! 総裁って…なんて人敵にまわすんだよ!兄さん!
 
        - 一瞬静かになる。
 
        - 総裁
 
        - 「…坂上さん。大舞台を控えた孫を攫われて、いい気分はしないわね。
            条件はなに。お金ならいくらでも用意するわ。
            でも、この銀河系からあなたがたの自由は一切なくなるでしょう。
            その覚悟はおあり。」 
        - 洋
 
        - 「ある!」
 
        - ララ
 
        - 洋! あの人を敵に回したら、もう…
 
        - 洋
 
        - 「金はいらない。星をくれ。永遠に、消えてなくならない星だ。」
 
        - 総裁
 
        - 「ははは。なんてロマンチック。」
 
        - 洋
 
        - 「俺が生まれた星は、惑星8だ。
            15の時に、資源が切れて爆破処分。次は惑星25。
            設計ミスでたったの三年で水が枯渇。その次は、惑星32。」 
        - ララ
 
        - 母さんと見た星だ!
 
        - 洋
 
        - 「家がほしい。故郷だよ。帰れる場所だ。変わらず、そこにある星だ。」
 
        - 総裁
 
        - 「そう、あなたがたは、宇宙難民ね。」
 
        - ララ
 
        - 宇宙難民…なにあれ!
 
        - グワングワンと宇宙船の音。
 
        - ララ
 
        - 宇宙船の軍団!
 
        - 源
 
        - ぼくらと同じ宇宙難民だよ。
            きっと聞きつけて集まってきたんだ。 
        - ララ
 
        - すごい数だ…
 
        - 源
 
        - いっぱいいるんだ。自分たちの星を失った人たち。
            僕らは、家を失い、星々の間をさまよい続けてる。 
        - 洋
 
        - 「星を手にいれれば、ララさんはすぐ帰す。
            傷ひとつつけず、お戻しする。俺たちに消えない星をくれ。
            あんたなら簡単なはずだ。」 
        - 総裁
 
        - 「いったい、人はなにをそんなに夢みてるの。」
 
        - ララ
 
        - え?
 
        - 総裁
 
        - 「消えてなくならない星。いつでも帰れる家。
            永遠のアイドル。そんなもの、何一つないのに。」 
        - ララ
 
        - ばあちゃん…
 
        - 総裁
 
        - 「誕生祭で放たれる惑星は、持って20年が限界。
            私たちは神様にはなれなかった。坂上さん。」 
        - 洋
 
        - 「ここにいます。」
 
        - 総裁
 
        - 「自由を奪われる覚悟はある。そうね。」
 
        - 洋
 
        - 「はい!」
 
        - 総裁
 
        - 「全宇宙戦艦乗組員に告ぐ。いますぐ、宇宙戦艦から、降りなさい。」
 
        - みんな
 
        - えっ。 
 
        - 母
 
        - 母さん! 何する気!
 
        - 総裁
 
        - 「最新鋭の技術と科学が詰め込まれた、
            宇宙戦艦を差し上げます。チームもつけましょう。
            見つけて。永遠になくならない星。
            もしも、夢を託される、覚悟がおありなら。」 
        - 洋
 
        - 「…ある!」 
 
        - 源
 
        - 兄さん!
 
        - 総裁
 
        - 「ララ。」
 
        - ララ
 
        - 「はい。」
 
        - 母
 
        - 「母さん、ララに何する気よ?」
 
        - 総裁
 
        - 「引退は許さないわ。」
 
        - 母
 
        - 「でもララは、普通の!」
 
        - 総裁
 
        - 「わたしも普通のおばあちゃんよ。
            でも、こういう星のもとに生まれついた。逃げられない。」         
        - ララ
 
        - 「ただのアイドルに、何ができる。」
 
        - 総裁
 
        - 「手を降り続けなさい。笑顔で。
            永遠になくならない家が見つかるまで。
            あなたにそれができるなら。」 
        - 音楽
 
        - 源
 
        - 兄さん、僕たち、これからどうなるの。
 
        - 洋
 
        - 星を探すんだよ。なんども、なんどもな。
            何度覚めても、見果てぬ夢だよ。 
        - 源
 
        - ずいぶん遠くまで来た僕たちへ、
            電波にのって、星々の間から歌声が届きます。
            心細くて、どこまでも孤独な、ぼくらをつなぐ、歌声です。