ねぇ、キャロル…もったいないと思わない?お前にあげることが出来ないものかしら?
ねぇ?だってもうそろそろよ。私のこれからの涙も、汗も、くしゃみも、恋も、全部全部お前にあげるわ。
片方の目で空を見るともうカラスは雲の彼方。ちっくしょ!意地悪いだけでも、お人好しなだけでも生きていけないって、ほんと暮らしにくい街。通りすがりの子供達は面白がってあたしをひっつかんで振り回してどぶ川に投げ込んだ。やっとこさどぶ川から這い出したら雨。泣きっ面に蜂ってまさにこのこと。お気に入りのスカートは泥にまみれて、自慢の巻き髪だって雨にやられてグシャグシャ。
はっくしょん!ああ、もう。寒いから。泣けてきちゃう。何でだろ。体が勘違いするのねきっと。体が寒いとココロまで寒く思えてくるのよ。指先がかじかんで、赤く赤く冷えて、それ息はいてこすりあわせても、ちっとも暖まらない。
ああ、もう。チイコったら、こんなものあたしにくれなくっても良かったのに。