朝。高校に向かう通学路。
息をのみ、心臓を鷲掴みにされた桃山梅彦がいる。
はあっ・・・(心臓を鷲掴みにされた声)っっ!
見かけた女
あははは、違うって・・・
(声にならない叫び)ーーーーーっ! なんだなんだ今のは! 天使か、いや奇跡か、
奇跡の塊かあの子は!そうだ、そうに違いない、なんなんだ今のは。
笑いながら振り返って、ふっくらともち上がったホホに木漏れ日が当たるってなんなんだ。
もともと輝いてるその笑顔をさらに輝かすってなんなんだ。なんの技術だ一体!!
かわいさがすぎるんじゃないのか!!計算なのか、いぃや違う! まさか太陽光の角度、
それを邪魔する枝の角度まで把握して、光さすエリアに振り返ることなどできまい!!
いぃや、しかし!、やってのけてしまうのだ。そうだ、やってのけてしまうのだ。あの子は!
そして僕は!! ・・・その瞬間を目撃してしまう運命だったのだ。
桃山梅彦17歳、まだ名も知らぬあの子に・・・僕は恋をしてしまったのだ!!
漫画みたいな爆発音。
とも
おい、バカ。
あっ、ともちん。
とも
まーた朝から盛り上がってんのね。
なんだよ、文句、あるのかよ。
とも
ふーん。次はあの子なの。どれどれ。
そ、そうだよ。可愛いの塊だよ。なんだよ、その目は。
とも
どこらへんが可愛いのよ。
全てだ。すべてがかわいい。何よりタイミングがかわいい。
とも
タイミング・・・。チッ、またか。
僕が落ち込んでいる時に、人生辛いことばっかだ、って嘆いてるその時に、
風に誘われふとあげた視線に飛び込むあの笑顔。ビシィィィ!。最高じゃないか。
タイミングが最高っていうのは、とにかく最高ってことなんだよ!ズキューーン!
とも
落ち込むってどうせ昨日の晩ご飯がカレーじゃなかっただけでしょ。
さすがともちん!よくわかってる! 毎日カレーがいいって言ってるのに我が両親は全く聞く耳を!!
はっ、んなことより、聞くぞ! 名前を!お嬢さーー
とも
あ、あの子行っちゃうよ。
あ、ちょ、あぁーーーー・・・
とも
いっちゃった。ほー、違う高校か。どうする、梅ちゃん。このまま出てくるの待つ?
ちぇ〜。何言ってんだ、遅刻するじゃないか。今日はカニセンに黒板掃除を頼まれている。
とも
いいの?
いいんだ。明日もあるさ! 今度はきっと僕ハンカチを拾うだろう。
もしくはボールが飛んでくる。うん。さ、行こう!
とも
家が隣同士で、同じ学校同じクラス、席だって隣同士。
こんなにタイミングが最高なのに、どうして梅ちゃん、私に恋をしないの。
(心臓を鷲掴みにされた声)っっ!・・・。
ズモモモモモ・・・と空間と時間がねじ曲がっていく音。
(神様みたいになった) 梅
高校三年生の僕らよ・・・それこそタイミングというものなのだ。
ゆくゆく僕らにまことのピンチがやってくる・・・。
宇宙人の襲来、地下に隠された未来型マシンの始動・・・。
平凡な僕らを変えるそれらすべてが、真実の愛に気づかせる・・・
とも
・・・・梅ちゃん! 梅ちゃん!!どうしたの梅ちゃん!
はっ。なんだったんだ今のは!
とも
もー!! 告白するたびにいっつもそれ!
が、学校に遅れるぅう!! カニセン、カニセン!
とも
もーーー梅ちゃんのバカッ
終わり。