- 朝。高校に向かう通学路。
息をのみ、心臓を鷲掴みにされた桃山梅彦がいる。
- 梅
- はあっ・・・(心臓を鷲掴みにされた声)っっ!
- 見かけた女
- あははは、違うって・・・
- 梅
- (声にならない叫び)ーーーーーっ! なんだなんだ今のは! 天使か、いや奇跡か、
奇跡の塊かあの子は!そうだ、そうに違いない、なんなんだ今のは。
笑いながら振り返って、ふっくらともち上がったホホに木漏れ日が当たるってなんなんだ。
もともと輝いてるその笑顔をさらに輝かすってなんなんだ。なんの技術だ一体!!
かわいさがすぎるんじゃないのか!!計算なのか、いぃや違う! まさか太陽光の角度、
それを邪魔する枝の角度まで把握して、光さすエリアに振り返ることなどできまい!!
いぃや、しかし!、やってのけてしまうのだ。そうだ、やってのけてしまうのだ。あの子は!
そして僕は!! ・・・その瞬間を目撃してしまう運命だったのだ。
桃山梅彦17歳、まだ名も知らぬあの子に・・・僕は恋をしてしまったのだ!!
- 漫画みたいな爆発音。
- とも
- おい、バカ。
- 梅
- あっ、ともちん。
- とも
- まーた朝から盛り上がってんのね。
- 梅
- なんだよ、文句、あるのかよ。
- とも
- ふーん。次はあの子なの。どれどれ。
- 梅
- そ、そうだよ。可愛いの塊だよ。なんだよ、その目は。
- とも
- どこらへんが可愛いのよ。
- 梅
- 全てだ。すべてがかわいい。何よりタイミングがかわいい。
- とも
- タイミング・・・。チッ、またか。
- 梅
- 僕が落ち込んでいる時に、人生辛いことばっかだ、って嘆いてるその時に、
風に誘われふとあげた視線に飛び込むあの笑顔。ビシィィィ!。最高じゃないか。
タイミングが最高っていうのは、とにかく最高ってことなんだよ!ズキューーン!
- とも
- 落ち込むってどうせ昨日の晩ご飯がカレーじゃなかっただけでしょ。
- 梅
- さすがともちん!よくわかってる! 毎日カレーがいいって言ってるのに我が両親は全く聞く耳を!!
はっ、んなことより、聞くぞ! 名前を!お嬢さーー
- とも
- あ、あの子行っちゃうよ。
- 梅
- あ、ちょ、あぁーーーー・・・
- とも
- いっちゃった。ほー、違う高校か。どうする、梅ちゃん。このまま出てくるの待つ?
- 梅
- ちぇ〜。何言ってんだ、遅刻するじゃないか。今日はカニセンに黒板掃除を頼まれている。
- とも
- いいの?
- 梅
- いいんだ。明日もあるさ! 今度はきっと僕ハンカチを拾うだろう。
もしくはボールが飛んでくる。うん。さ、行こう!
- とも
- 家が隣同士で、同じ学校同じクラス、席だって隣同士。
こんなにタイミングが最高なのに、どうして梅ちゃん、私に恋をしないの。
- 梅
- (心臓を鷲掴みにされた声)っっ!・・・。
- ズモモモモモ・・・と空間と時間がねじ曲がっていく音。
- (神様みたいになった) 梅
- 高校三年生の僕らよ・・・それこそタイミングというものなのだ。
ゆくゆく僕らにまことのピンチがやってくる・・・。
宇宙人の襲来、地下に隠された未来型マシンの始動・・・。
平凡な僕らを変えるそれらすべてが、真実の愛に気づかせる・・・
- とも
- ・・・・梅ちゃん! 梅ちゃん!!どうしたの梅ちゃん!
- 梅
- はっ。なんだったんだ今のは!
- とも
- もー!! 告白するたびにいっつもそれ!
- 梅
- が、学校に遅れるぅう!! カニセン、カニセン!
- とも
- もーーー梅ちゃんのバカッ
- 終わり。