- AN
- 京阪出町柳駅ー 京阪出町柳駅、終点です。お忘れ物のないよう、お降りください。
- プッシュー・・・
- カヨコ
- ついさっき、失恋を、してしまった。
ほんまは三条でおりな家にかえれへんのに、あたまんなかが真っ白で、降りれへんかった。
出町柳駅。終点。うちの恋も終点や。終わってしまった。
- 屋外
- カヨコ
- 理由はいったいなんやったんやろ。
トモヒロくんは、うつむいたまんま、なんも言うてくれへんかった。
久しぶりのデート。
トモヒロくんは、つないだ手ぇをぱっと話して、ごめん!って言った
突然やった。突然すぎた。理解不能。まるで怪奇現象や。
トモヒロくんのアホ! 好きやったのに!
- 誰かとぶつかる音。
- 男の子
- イッター。
- カヨコ
- あっ、ご、ごめん! 大丈夫? ケガない?
- 男の子
- 膝から血ぃでた!
- カヨコ
- あっ、ごめん! どうしよう、ばんそうこ。ばんそうこあるかな!
- 男の子
- 嘘や。
- カヨコ
- へっ
- 男の子
- 血ぃでてへん。
- カヨコ
- え・・、
- 男の子は自分のお尻を叩きながら。
- 男の子
- よいしょと。よし、ランドセルも傷ないな。
おねえちゃん、僕が運動神経良くてよかったな。
これからは前みて歩くんやで。ほな、僕、飛び石いくから
- カヨコ
- なんでなん。・・・なんでそんな嘘つくん。
- 男の子
- えっ
- カヨコ
- びっくりするやん。そんなん、びっくりするやんか。突然すぎるわ。
- 男の子
- び、びっくりしたんは、僕やんか。
- カヨコ
- 突然すぎるわ、突然すぎるわあ うわああん。
- 男の子
- えええ、どないしたんや、おねえちゃん。。。
- カヨコ
- 失恋してしもてん・・・! うわあああ!
- 鴨川。
- 男の子
- …僕のランドセル、何入ってるかわかる?
- カヨコ
- 勉強道具やろ。
- 男の子
- それは家に置いてきた。野球のボールとパンや。ほら、食べ。
- カヨコ
- ええの?
- 男の子
- いいよ。食べたらいいよ。
- カヨコ
- くるみパン。おいしい。
- 男の子
- あ、気ぃつけや。
- カヨコ
- なに?
- トンビ
- 男の子
- ここは出町柳の三角州。有名なトンピの陣地や。
ほら、あいつら、パンかっさらっていきよんねん。
- カヨコ
- そやった。
- 男の子
- うまいこと隠しながら食べるんやで。
- カヨコ
- うん。
- 男の子
- ぼくも昔やられた事あんねん。突然やで、突然ぱーってなくなんねん。びっくりするわ。
- カヨコ
- お、おねえちゃんもな・・とつぜん・・うう
- 男の子
- うんうん ぱーってなくなったんやな わかるでその気持ち つらいな。
- カヨコ
- きみ、何年生なん?
- 男の子
- ぼく? ぼくもうけっこういってんで。小三や
- カヨコ
- 好きな子とか、もうおるん?
- 男の子
- うん! ぼく、好きな人いっぱいおるねん。おねえちゃんのことも、好きやで
- カヨコ
- えっ、いま会ったばっかりやのに! 早すぎ!
- 男の子
- ぼく足も早いんやで! チーターには負けるけど。学年で一番早いねん。
- カヨコ
- うちはいま、足の話しじゃなくて、恋の話をしてんねん!
- 男の子
- そっか・・ごめんな、まだそれ習ってへんねん
小4になったら習うかもしれんし、そん時はなそか
- カヨコ
- そんなん・・・中学になっても、高校になっても習わんよ・・・
そんな簡単に好きっていうたらあかんよ・・
- バサバサ!
- ふたり
- あっ あーーー!
- トンビが鳴く
- カヨコ
- わたしのパン・・・トンビがもってった・・・!
- 男の子
- ・・・
- カヨコ
- なんで何もいわんの?
- 男の子
- また、泣くかなあって思って。でも、ぼくもうお小遣いないし・・・
パン買いにいけへんし・・。
そや! ボール投げしよか! これ、楽しいで! って・・・あかんか・・・ごめん・・・
- カヨコ
- ううん、しよう! ボールなげ! おねえちゃんこそごめん! おねえちゃんも君のこと好きやで!
- 男の子
- やったー!
- カヨコ
- ねえ! きみ、名前なんていうの。
- 男の子
- トモヒロ!
- カヨコ
- え?
- 男
- カヨちゃあああん!!!
- カヨコ
- ・・・え?・・トモヒロくん・・・
- 男
- よかった! ここにいた!さっきはごめん!! ぼく、ぼく!
- カヨコ
- 男の子ここにいなかった?? いま!
- 男
- え?
- カヨコ
- ううん。ううん、あんな、えっと・・・えっと・・・
- 男
- うん。
- カヨコ
- はなそ・・・トモヒロくん
- 男
- うん! パン、こうてきた。
-
おわり