- 女
- この前、君のことなじったことあったやん
- 男
- え、いつの?
- 女
- いつの? いつも私が君のことなじってるみたいに言うやんか。
私、そんなに君のことなじってへんやん
- 男
- あれ、そうやったっけ?
- 女
- うん
- 男
- え、自覚ないの?
- 女
- 自覚もなにもそんなにいっぱいなじってへんもん
- 男
- まあ、なじってへんつもりなんやったら別にいいけど。え、なんやったっけ?
- 女
- 君のことなじったことあったやんか
- 男
- どれのことかわからへんけど
- 女
- 私と一緒におらんときも私のことずっと考えとってって。
なんで私と一緒じゃないときも私のこと考えててくれへんのって
- 男
- あー、怒ってたなあ
- 女
- なじったやろ?
- 男
- うん。すげーなじられたし、謝らされた
- 女
- そうやね。謝らせた。私、あのときめちゃくちゃ怒っててんけど、あれ、ごめんな
- 男
- え?
- 女
- いや、せやから、ごめん
- 男
- ごめんってなによ。どういうこと?
- 女
- この前、本で読んだんやけどな
- 男
- うん
- 女
- 女の脳と男の脳って、だいぶ感じ方っていうか、考え方が違うみたいやねんな
- 男
- え、その本にはそう書いてたん?
- 女
- え、うん
- 男
- どんな風に書いてたん?
- 女
- だから、男と女の脳は違うって
- 男
- ああ
- 女
- 私、君のことなじって、なじった上に謝らせたけど、
男の脳味噌には、ずっと好きな人のこと考え続けるってことができへんみたいやね。
そう書いてあった。女の脳味噌は好きな人のこと考えていられるらしいねんけど
- 男
- そうやねん
- 女
- え?
- 男
- 無理やねん、男は
- 女
- うん
- 男
- なじられてたときも、謝ってたときも、なんで怒ってんのかよくわかってなかった
- 女
- よくわからんまま謝ってるやろって、またそれでなじってしまった
- 男
- 俺も、ごめんって、わかってるって、ごめんって、って何回も言ってたけど、
ほんまは全然わかってなかった。なんのことを謝ってるんかなあって思ってた。
思いながら謝ってた
- 女
- なじったし、謝らせたし、謝ってもらってもよくわからんまま謝ってるやろって
またなじってごめん。あのときはごめん
- 男
- 俺のせいちゃうしな
- 女
- せやなあ
- 男
- 俺の脳味噌のせいやしな
- 女
- せやなあ。しょうがないことやねんな
- 男
- うん。せやねん。一緒にいないときに考えられへんのはしょうがないことやねん。
だからといって、浮気とかはしてへんねんで
- 女
- うん。わかってるよ
- 男
- わかってくれてるならよかった
- 女
- 私のこと好き?
- 男
- 好きやで
- 女
- でも、私、やっぱり嫌やねんな
- 男
- ん?
- 女
- 私、君のこと好きやからずっと考えてんねん。ずっとずっと考えてんねん。
好きな君から私のことずっと考えてもらえてへんの、やっぱり嫌やねん。
しょうがないの、本にそういう風に書いてたからわかってるけど、でも、やっぱり嫌やねん
- 男
- 嫌なんや
- 女
- 謝ってほしい。私のこと忘れてる瞬間があること、謝ってほしい。
しょうがなくても謝ってほしい
- 男
- え、しょうがないねんで
- 女
- うん。わかってる。でも、謝って
- 男
- 君のことずっと考えられなくて、ごめん。これでいい?
- 女
- 嫌や。もっと謝れ
- 男
- 本当に申し訳ない
- 女
- でも、本のこと鵜呑みするのもどうかなあと思うけどな。関係あるかよという気持ちや
- 男
- なんやそれ
- 女
- 考えてろ。私のことずっと考えてろ
- 男
- まあ、できるだけそうしてみるけど
-
――終わり。