この前、君のことなじったことあったやん
え、いつの?
いつの? いつも私が君のことなじってるみたいに言うやんか。
私、そんなに君のことなじってへんやん
あれ、そうやったっけ?
うん
え、自覚ないの?
自覚もなにもそんなにいっぱいなじってへんもん
まあ、なじってへんつもりなんやったら別にいいけど。え、なんやったっけ?
君のことなじったことあったやんか
どれのことかわからへんけど
私と一緒におらんときも私のことずっと考えとってって。
なんで私と一緒じゃないときも私のこと考えててくれへんのって
あー、怒ってたなあ
なじったやろ?
うん。すげーなじられたし、謝らされた
そうやね。謝らせた。私、あのときめちゃくちゃ怒っててんけど、あれ、ごめんな
え?
いや、せやから、ごめん
ごめんってなによ。どういうこと?
この前、本で読んだんやけどな
うん
女の脳と男の脳って、だいぶ感じ方っていうか、考え方が違うみたいやねんな
え、その本にはそう書いてたん?
え、うん
どんな風に書いてたん?
だから、男と女の脳は違うって
ああ
私、君のことなじって、なじった上に謝らせたけど、
男の脳味噌には、ずっと好きな人のこと考え続けるってことができへんみたいやね。
そう書いてあった。女の脳味噌は好きな人のこと考えていられるらしいねんけど
そうやねん
え?
無理やねん、男は
うん
なじられてたときも、謝ってたときも、なんで怒ってんのかよくわかってなかった
よくわからんまま謝ってるやろって、またそれでなじってしまった
俺も、ごめんって、わかってるって、ごめんって、って何回も言ってたけど、
ほんまは全然わかってなかった。なんのことを謝ってるんかなあって思ってた。
思いながら謝ってた
なじったし、謝らせたし、謝ってもらってもよくわからんまま謝ってるやろって
またなじってごめん。あのときはごめん
俺のせいちゃうしな
せやなあ
俺の脳味噌のせいやしな
せやなあ。しょうがないことやねんな
うん。せやねん。一緒にいないときに考えられへんのはしょうがないことやねん。
だからといって、浮気とかはしてへんねんで
うん。わかってるよ
わかってくれてるならよかった
私のこと好き?
好きやで
でも、私、やっぱり嫌やねんな
ん?
私、君のこと好きやからずっと考えてんねん。ずっとずっと考えてんねん。
好きな君から私のことずっと考えてもらえてへんの、やっぱり嫌やねん。
しょうがないの、本にそういう風に書いてたからわかってるけど、でも、やっぱり嫌やねん
嫌なんや
謝ってほしい。私のこと忘れてる瞬間があること、謝ってほしい。
しょうがなくても謝ってほしい
え、しょうがないねんで
うん。わかってる。でも、謝って
君のことずっと考えられなくて、ごめん。これでいい?
嫌や。もっと謝れ
本当に申し訳ない
でも、本のこと鵜呑みするのもどうかなあと思うけどな。関係あるかよという気持ちや
なんやそれ
考えてろ。私のことずっと考えてろ
まあ、できるだけそうしてみるけど
――終わり。