ねえ。ねえってば
なに?
触らないの?
うん
触ってくれないの?
うん
意地悪
どうして?
わかってるくせに
意地悪なんだよな、僕は
こんなに触ってほしいって思ってるのに
仕方がないから触ってあげようか
触ってくれるの?
仕方がないからね
嬉しい
そんなに触ってほしかったんだね
だって
だって、なに?
だって、全然触ってくれなくなった
そうだね
たくさん触ってくれてたのに
そうだね
ずっと触ってほしいって思ってて、やっと触ってくれるんだもん。嬉しいよ
そんなに嬉しいのか
どうしてずっと触ってくれなかったの?
どうしてそんなこと訊くの?
だって、それは、だって、不安だから
不安だから訊くのか? 不安だから、そうやって僕のこと詮索するのか?
詮索なんて、そんな大袈裟な言葉使わないで
やっぱり触ってあげない
どうして?
やっぱり触ってあげない
意地悪
意地悪かな? 僕は
ほんと意地悪だと思う
君が今まで付き合ってきた人の中で、僕は何番目に意地悪かな?
一番だよ。一番、意地悪
そっか
私はこんなに、こんなに触れられたいのに、少しも触ってくれない
少しも触ってなんてあげないんだ、僕は。意地悪だからね
ねえ、私のこと嫌いなの? もう嫌いになったの? 最初から好きじゃなかったの?
好きだよ。ずっと、今でも、初めて会ったときから、好きだよ
好きなものに、触れたくならない? 好きじゃないから触りたくならない?
触りたいさ。でも、触ったら、喜ぶから、駄目なんだ
駄目なの?
喜ぶから駄目なんだ
私に触ってほしい。私を駄目にしてほしい
触れてあげよう。好きだから。駄目にしてあげよう。どうしようもなくしてあげよう。いつかね。
いつかだよ。駄目になるくらい触れてあげよう
どうして今じゃ駄目なの?
まだ本当には僕に触られたいと思ってると思えない
そんなことないのに
そんなことないかもしれないね
約束よ。そのときは意地悪しないでね。ずっと私のこと好きなままでいてね。
一緒に駄目になろうね
――終わり。