- ここはお料理教室。にぎやか。
- 先生
- はい。エリンギは縦に裂きます。玉ねぎは皮を向いてくし切り。
じゃがいもは芽をとってください。それぞれひとくち大に切ります。
- 山川
- あのー先生。
- 先生
- あら。新しく参加された山川さん。どうなさいました?
- 山川
- わたしの一口大きいのですが・・・
- 生徒たち笑う。
- 先生
- では、食べる人のお口に合わせた大(だい)で結構ですよ。
- 山川
- あ、そうなんですね! いっつも本に書いてあって分からなくて、
妻に怒られてまして。そうですよね。じゃ食べる人の口の大きさに合わせて。
えー、では。
- ザク!
- 山川
- これがわたしの口。
- ザクザクザク
- 山川
- これが妻の口。
- ザクザクザクザク
- 山川
- これがみよちゃんのお口、と。ははー。料理って大変ですね。
- 先生
- ではみなさん。次いきますね! フライパンをしっかり熱したあと、油を引きます。
炒めたあと、塩胡椒で味付けしていきましょう。あ! 山川さん、
- 山川
- はい!
- 先生
- みよちゃんは何歳ですか。
- 山川
- 先月誕生日がきまして6歳に。
- 先生
- その頃はコショウの刺激に弱かったりするんです。
コショウを抜いたほうが良いですね。
- 山川
- え、でも妻は、コショウが好きなんです。ちなみに味にうるさい。
- 先生
- なるほど。子供よう、大人ようで作るのはどうですか。
- 山川
- それが・・わたしの仕事が奇跡的に定時で終わったとして台所まで35分。
調理して食卓まで約7分で仕上げないと、家族のお腹がなってしまうんです。
しかも!我が家のテフロン加工フライパンは一台しかない。
先生! いったいどうしたら。
- 先生
- コショウを抜きましょう。
- 山川
- でも妻が !
- 先生
- コショウを抜くんです。山川さん!
- 山川
- でも先生!
- 先生
- 山川さん、よく聞いてください。・・・しお、コショウはあとから足せます。
- 山川
- な、なんですって・・・。
- 先生
- 山川さんは確か車のディーラーでしたね。
- 山川
- はい! ??っさんです。
- 先生
- ファミリーカーの場合、ベースのシートは大体、撥水シート。
汚れ防止が基準。
- 山川
- はい! お子様がのることを想定して。
- 先生
- 料理も同じ。
基準は小さなお子様! そしてこだわる大人に対して用意されているのが、
- ふたり
- オプション!
- 先生
- そうです。オプションはつまり、
- ふたり
- しおこしょう!
- 先生
- そうです。つまり、スパイスはオプションです! 後出しでいける!
- 山川
- な、なるほど! では、食卓にしおこしょうを用意すれば!
- 先生
- お醤油もぜひ!
- 山川
- そ・・・それでも文句を言われたら・・?
- 先生
- きっと、理由は・・・お皿の上だけではないでしょう・・・。
- 山川
- 車に、乗ることだけが・・・目的ではないように・・・
- 先生
- はい、では火を消してー。次は盛り付けです。
暖かさも美味しさにとって大切ですから素早く、
- 山川
- はい! 山川、帰ります!
- 先生
- えっ。
- 山川
- 実は、妻のお腹にもう一人いるんです。
- 先生
- なんですって・・・。 タッパ!
- 教室の生徒
- 僕、持ってます!
- 先生
- つめてください!
- 教室の生徒
- うす!
- 先生
- はい。暖かいうちに!
- 教室の生徒たち
- おつかれさまです! おとうさん!
- おわり。