- ガタガタ!
ここは昔からある町の喫茶店。
- タモツ
- えっ、い、今なんて。
- リ コ
- え?、バトミントン部の合同練習の日を今度の火曜日にしようと思ってるの。
だけど・・わ、タモツくん、珈琲こぼれてる!
- タモツ
- あ、珈琲 ! あっ、ごごごごごごめん! びっくりして。
- リ コ
- え、何に?
- タモツ
- あ、いや!なんでもない!
- リ コ
- そ、そっか。すみませーん、店員さん、何かふくものもらえますか?
- タモツ
- ラジオをお聞きのみなさん。お元気ですか。
僕はし、心臓が跳ね上がっています!
突然ではありますが、僕はエスパーであります。はい、エスパーなんです。
そうです。人の心が聞こえてくるんです。いま、いま、
ずっと読めないと思っていた彼女の心がやっと聞こえてきたんです!
僕のこと、・・・か、かっこいいって。ひゃーーーーー!
いつまでもこうして居たいって!!
ちなみに、彼女は、リコさんって言うんですけども、
ええ。そうです、もちろん、ぼくの、ぼくの好きな人です。うひゃーー!
- 喫茶店の雑踏。
- タモツ
- あっ・・また彼女の心の声が・・・なになに。いつか、さよならする日が来ても、わたしは一生あなたと一緒・・・。え、リコちゃん、そこまで僕を・・・
- おばあさん
- あなた、相変わらずここの珈琲は、おいしいですね。
- おじいさん
- うん。うん。
- タモツ
- なんだ・・・僕の真後ろのおばあさんの心の声か・・・。
はは。てっきりリコちゃんの心の声かと・・・へえ。
この喫茶店は二人の思い出の場所なんだ。へえ。そうか。
ここで初めて一緒にお茶をしたんだ。
あのとき、学生だったあなたが私を誘ってくれたこと。
あなたが幸せそうに私を見つめてくれたこと。わたしはずっと覚えてます・・・
- リ コ
- おまたせ! わっ。タモツくん!珈琲のしみ、シャツにひろがってる!
- タモツ
- あっ、うん!
- リ コ
- はやく拭かないと!
- タモツ
- うん。ありがとう。
- リ コ
- もー、タモツくんったら、相変わらずぼんやりしてるんだから。
- タモツ
- うん。
- リ コ
- ね、後ろの夫婦、全然話さないの。もしかして、熟年離婚とかかな。
- タモツ
- え。
- リ コ
- さっきから奥さんは話かけてるけど、
旦那さんったら返事がほとんどないんだもの。
- タモツ
- 違うよ・・。おじいさんは、恥ずかしいんだって。
- リ コ
- え?
- タモツ
- 初めて告白したときから、恥ずかしくて、嬉しくて、
それ以上、何も言えないんだ。一生分の勇気、使ったんだって。
- リ コ
- そうなんだ・・・。タモツくんは・・
- タモツ
- あー、あの、違うよ!これは僕の想像で。なんとなくそうかなーって。
はは。えーっと、なんの話だっけ。合同練習の話だっけ!
- リ コ
- う、うん!そう、合同練習の話!
- リ コ
- ・・・ラジオをお聞きのみなさん。実は私もエスパーです。
タモツくんに心を読まれないように必死です。
だって、わたしも彼に恋をしてるから。
- リコとタモツ
- 今日こそ言おう。今日こそ。あなたに恋をしているって言おう。
- リ コ
- あの!
- タモツ
- はい!
- リ コ
- ええっと・・・・! 火曜日に!
- タモツ
- あ、うん。・・・火曜日に! !
- リコとタモツ
- ああ!
- おわり。