印刷会社勤務の村田、仕様書を手に取る。
なんだよこれ。また瀧岡、ふざけやがって。
あ、村田さん、それお願いしたいです。
おい、お前、待て。ちょっと座れ。
あ、いえ。
座れよ。
あ、いや。
お前な、こんな納期、急に言われたってできねぇよ。
あっ、無理ですか…?
なんでお前、こんな無茶なスケジュールになるんだよ。
先方がどうしても年内に欲しいみたいで。
だったら年内なら年内で、もっと前もって段取り組めって。
はい、あの、稟議がなかなか通らなかったみたいで。やっぱり人が多いから、
知らねぇよ、向こうの会社の都合は!
はい。
お前はさぁ、うちの会社の人間なんだからさぁ、相手の都合ばっか合わせてないで、
うちの現場のこともちゃんと考えてやってくれよ!
はい。
これも、もうできるって言ってあんだろ?
できるというか、そうですね。
だったらやるしかねぇけどさ。急なんだよ、お前の案件は。
すいません。
お前あれだろ、斎藤とか同期だろ? あいつとかさ、「今こういう話があって、
たぶん判型こんなもんで部数こんなもんで、フィックスしたらまた伝えます」とか、
世間話ついでにちゃんとこっちに知らせておいてくれんだよ。
はい。
お前そういうの全然ねえだろ? なんでだよ?
はい。
そんでいきなり仕様書だけポンって置かれててよ。
はい。
なんでこういうことになるんだよ。
すいませんでした。
なあ。
はい。
いい加減な仕事してんじゃねぇよ!
ごめんなさい、ちょっとでも今、パンツ履いてなくて。
……あぁ?
すいません。本当に、すいませんでした。
…まあできねぇ量じゃねぇから、機械割り変えて対応はするけど。
はい。
もっと余裕ある納期にするか、切羽詰まった案件になりそうなら、
なりそうな時点で一声かけてくれ。次からは。
はい。
なんでパンツ履いてねぇんだよ?
いえ。
どうしたんだよ?
(泣きだす)
おいおい、いや。なんだよ。怒鳴って悪かったよ。
大きな声が、怖くて。
わりぃ、わりぃ、わりぃ。泣くなよお前。そうだよな、パワハラだよな。
(泣きながら否定する)
いやいや、わりぃわりぃ。お前なんでパンツ履いてねぇんだよ。
(「ロッカーのカギが」や「水道がおかしくて」など発しているが、泣き声で不明瞭)
どうしたんだよお前、わかんねぇよ。あんまり聞くとセクハラか?
(泣きながら否定する)
仕事してくれりゃいいだけで…。悪かったよ。怒鳴る必要はなかったよな。
お前なんでパンツ履いてねぇんだよ。わりぃわりぃ。
納期間に合うから。大丈夫だから。
ありがとうございます。
おう、わかったよ、行け。お前、階段気をつけろよ。なんなんだよお前。
おい、瀧岡、しっかり歩け! 転んだらお前、お前なんでパンツ履いてねぇんだよ。
おい、近藤ちょっと瀧岡についてってやってくんねぇか。
わかんねぇ。俺あいつわかんねぇよ。
END