- 印刷会社勤務の村田、仕様書を手に取る。
- 男
- なんだよこれ。また瀧岡、ふざけやがって。
- 女
- あ、村田さん、それお願いしたいです。
- 男
- おい、お前、待て。ちょっと座れ。
- 女
- あ、いえ。
- 男
- 座れよ。
- 女
- あ、いや。
- 男
- お前な、こんな納期、急に言われたってできねぇよ。
- 女
- あっ、無理ですか…?
- 男
- なんでお前、こんな無茶なスケジュールになるんだよ。
- 女
- 先方がどうしても年内に欲しいみたいで。
- 男
- だったら年内なら年内で、もっと前もって段取り組めって。
- 女
- はい、あの、稟議がなかなか通らなかったみたいで。やっぱり人が多いから、
- 男
- 知らねぇよ、向こうの会社の都合は!
- 女
- はい。
- 男
- お前はさぁ、うちの会社の人間なんだからさぁ、相手の都合ばっか合わせてないで、
うちの現場のこともちゃんと考えてやってくれよ!
- 女
- はい。
- 男
- これも、もうできるって言ってあんだろ?
- 女
- できるというか、そうですね。
- 男
- だったらやるしかねぇけどさ。急なんだよ、お前の案件は。
- 女
- すいません。
- 男
- お前あれだろ、斎藤とか同期だろ? あいつとかさ、「今こういう話があって、
たぶん判型こんなもんで部数こんなもんで、フィックスしたらまた伝えます」とか、
世間話ついでにちゃんとこっちに知らせておいてくれんだよ。
- 女
- はい。
- 男
- お前そういうの全然ねえだろ? なんでだよ?
- 女
- はい。
- 男
- そんでいきなり仕様書だけポンって置かれててよ。
- 女
- はい。
- 男
- なんでこういうことになるんだよ。
- 女
- すいませんでした。
- 男
- なあ。
- 女
- はい。
- 男
- いい加減な仕事してんじゃねぇよ!
- 女
- ごめんなさい、ちょっとでも今、パンツ履いてなくて。
- 男
- ……あぁ?
- 女
- すいません。本当に、すいませんでした。
- 男
- …まあできねぇ量じゃねぇから、機械割り変えて対応はするけど。
- 女
- はい。
- 男
- もっと余裕ある納期にするか、切羽詰まった案件になりそうなら、
なりそうな時点で一声かけてくれ。次からは。
- 女
- はい。
- 男
- なんでパンツ履いてねぇんだよ?
- 女
- いえ。
- 男
- どうしたんだよ?
- 女
- (泣きだす)
- 男
- おいおい、いや。なんだよ。怒鳴って悪かったよ。
- 女
- 大きな声が、怖くて。
- 男
- わりぃ、わりぃ、わりぃ。泣くなよお前。そうだよな、パワハラだよな。
- 女
- (泣きながら否定する)
- 男
- いやいや、わりぃわりぃ。お前なんでパンツ履いてねぇんだよ。
- 女
- (「ロッカーのカギが」や「水道がおかしくて」など発しているが、泣き声で不明瞭)
- 男
- どうしたんだよお前、わかんねぇよ。あんまり聞くとセクハラか?
- 女
- (泣きながら否定する)
- 男
- 仕事してくれりゃいいだけで…。悪かったよ。怒鳴る必要はなかったよな。
お前なんでパンツ履いてねぇんだよ。わりぃわりぃ。
納期間に合うから。大丈夫だから。
- 女
- ありがとうございます。
- 男
- おう、わかったよ、行け。お前、階段気をつけろよ。なんなんだよお前。
おい、瀧岡、しっかり歩け! 転んだらお前、お前なんでパンツ履いてねぇんだよ。
おい、近藤ちょっと瀧岡についてってやってくんねぇか。
わかんねぇ。俺あいつわかんねぇよ。
- END