- 女
- 昔、命に代えても君を守るって言ってくれたことあったやん
- 男
- そんなこと言うたこともあるなあ
- 女
- 最近なんか、言うてくれたなあってよく思い出すんやけど
- 男
- そうなん?
- 女
- ちょっと、それについて訊きたいことあるんやけど、いい?
- 男
- え、なになに?
- 女
- あのさ、どういう状況を想定してたん?
- 男
- ん? ちょっとなにを聞きたいんかがよくわからへんねんけど
- 女
- だから、私のこと命に代えても守ってくれるって言ったよね。
命に代えても守るって、それって具体的にどんな状況?
- 男
- え、なに? 大喜利?
- 女
- 大喜利ちゃうわ。なんでもお題にせんといてや。まじめに訊いてるんやから
- 男
- ごめん。えっとな。えっと、宇宙人が
- 女
- 大喜利やってるやん。大喜利やめてって。
大喜利の答えとしても面白くなさそうやし
- 男
- 宇宙人がな、宇宙人ならではのな、やり方で、君のことをあれするときやな
- 女
- 大喜利としてもなんやねん。大喜利としても0点やんけ
- 男
- 悔しいなあ
- 女
- あれするっていう答えでは悔しがる資格もないよ。いや、ちゃうねん。
私のこと命に代えても守るって言ってくれたやん。
命に代えなあかん状況ってなんやねんって訊いてんねん
- 男
- えっとな、ちょっと待ってな
- 女
- もしかして、言うてくれたとき、具体的に考えてなかった?
- 男
- なにも考えてなかった
- 女
- なんやそれ
- 男
- あ、でも、もし、君がな、命の危険にさらされたとき、
いつでも身代わりになる心づもりはあるよ
- 女
- あ、ほんまに。嬉しい。ありがとう
- 男
- どういたしまして
- 女
- あとさ、世界中を敵にまわしても
僕は君の味方でいるよって言ってくれたこともあったやん
- 男
- うん
- 女
- どんな状況?
- 男
- カリスマ宇宙人がいて
- 女
- 宇宙人好きやな。なんでもかんでも大喜利にすんなや
- 男
- え? 世界中を敵にまわしても僕は君の味方でいるよ?
- 女
- そう
- 男
- 浮かれてたんやろね
- 女
- そりゃ、浮かれてたに決まってるやろうけど
- 男
- あんまりなんにも考えてなかったと思う
- 女
- あ、そう
- 男
- 憧れだけで言うたんやと思う。彼女できたらそういうこと言いたいって
- 女
- ふーん
- 男
- ほんまに世界中を敵にまわすようなことってあんのかな?
- 女
- いや、知らんわ。自分が言うたんやで
- 男
- でも、世界中を敵にまわさなあかんようなときが来るかもしれん
- 女
- 私の人生にそんな劇的なことあるかな
- 男
- そんときは、俺、うまく立ち回るわ
- 女
- うまく立ち回る?
- 男
- 君が果たさなあかん使命を果たせるようにしつつ、
被害を最小限に抑えられるようにうまく立ち回る。
なんやったら、俺が矢面に立ってあげてもいいよ
- 女
- めっちゃ味方でいてくれてるやん
- 男
- せやろ
- 女
- でも、そんなことできんの? あんた
- 男
- わからん
- 女
- わからんのかい
-
――終わりです。