どうしたん? いつもやったらパクパク食べるのに、なんかあったん?
いや、まあ、うん
体調悪いん?
いや、体調悪いわけじゃないねんけどな
食欲ないの?
いや、食欲はあんねん
カレーやで
わかってるよ
あんたの大好物のカレーやで。カレーライスやで
うん
食べへんの?
いや、食べるけど
どっかおかしいんちゃうか、あんた
このカレー、食べてええんかな
どうぞ
俺にこのカレーライスを食べる資格あるんかな
私があんたのために作って、私があんたのためによそったんや。食べえや
俺な
うん
カレー食べたいけどな
うん
カレー食べてええんか、わからへん
重症やな、これは。どうしたん? なんかあったん?
俺、働いてないやんか
まあな
それが申し訳なくて
それは、でも、私は納得してるやん
それやのに、料理も作ってもらってさ
それも、私は納得してるし
いや、もう、本当にごめん
謝れるよりか、作った料理をおいしく食べてもらう方が嬉しいけどな
あ、ほんまに?
うん
カレー食べてもいいの? 俺にカレー食べる資格ある?
あるよ。いいよ。食べて
ありがとう。いただきます
どうぞ。召し上がれ
――カレーを食べながら。
そんなんなるっていうことは、うまいこといってないの?
うん。全然うまいこといってない
どう? カレーの味は
カレーはうまい
そうやろう。食べておいしかったら気分転換もできるやろ
うん。せやな
小説書けそう?
いや、それは、まあ、わからんけど
この前、アイディア聞かせてくれたやつ、あれ、面白そうやったけどな。
あれじゃ、あかんの?
どのやつ?
高校生の男女が深夜の河原で喋ってるやつ。
ずっと、生きてんのつまらんなーって言うやつ
あれ、あかんくない?
私、高校のときそんな感じやったから、めっちゃ気持ちわかるなあって思ったけどな
でも、小説にはできへんなあ
なんでもいいから書き出してみたら?
いいアイディア思い浮かんだらな
私に対してさ、悪いと思ってんの?
それは、まあ、そうやな
いいねんで、別に
マジで
私、あんたがいつか書くであろう小説のこと楽しみにしてるし、
っていうか、あんたと一緒におると面白いし
俺、でも、働いてないねんで
小説諦めるまでは待つよ
俺、終わってんで
終わってないよ。勝手に終わらんといて。まあ、働けるなら、働いてほしいけど。
あんたは、私、才能あると思ってるから。ね
ちょっと待って。このカレーからない?
あれ、カレー、辛い方が好きちゃうかったっけ?
辛い方が好きやけど、それにしても辛すぎ
うわあ、ごめん
――終わり。