- 女
- 私、神様に謝ってほしかったんだと思う
- 男
- そうなんだ。だから、なんだ
- 女
- そう
- 男
- もし、神様に出会えたならなにを謝ってもらうの?
- 女
- え? ごめんなさいって
- 男
- うん
- 女
- こんな世界にしてって。あー、違うな
- 男
- うん
- 女
- 私の人生をこんな人生にしてごめんなさい、かな
- 男
- 神様に謝ってほしいくらい自分の人生に納得いってないの?
- 女
- あ。私、あなたと出会えたことは良かったと思ってるよ。
でも、それだけ。ただ、それだけ
- 男
- 僕と出会ったこと以外は?
- 女
- そんなこと訊かないで
- 男
- あ、ごめん
- 女
- でも、謝ってもらってもしょうがないな
- 男
- え。神様に?
- 女
- うん。もう謝ってもらってもしょうがない
- 男
- せっかく宇宙旅行にまで出かけてきたのにな
- 女
- それに神様なんていないみたいだし
- 男
- いないのかな?
- 女
- 少なくても宇宙にはいないみたい。
ずっとここから探してるけど見当たらなかったから
- 男
- そっか。残念だね
- 女
- だから、残念じゃないよ。もう気が済んだから。宇宙って広いね
- 男
- 気が済んだ?
- 女
- 私、こうやって実際に宇宙までやって来て初めて、自分なんて、自分の悩みなんて、本当にちっぽけなものだったんだなって思えた。宇宙って広いね
- 男
- よかったね
- 女
- ずっと地球にいたならわからなかったと思う
- 男
- 宇宙旅行に来てよかった
- 女
- 宇宙って怖いな
- 男
- え?
- 女
- 宇宙って怖い
- 男
- どうして?
- 女
- 私、このまま生きていてもいいのかなって思う。
消えてなくなれたらいいのにって。私もなんにもなくなりたい
- 男
- 寂しいよ
- 女
- 私のことなんて、なかったことにならないかな
- 男
- それは無理だと思うよ。一度生まれてきたものはなかったことにはならない
- 女
- そっか。無理か。私、これからも生きていてもいいのかな
- 男
- いいよ。神様だって、もし仮に神様が本当にいれば、だけど、
生きていてもいいって言ってくれると思うよ
- 女
- 私が消えてなくなっちゃったら気付いてくれるかな
- 男
- 寂しくなるからずっと一緒にいてよ
- 女
- 違うよ。神様に
- 男
- あ、神様か。神様だって気付いてくれると思うよ
- 女
- 退屈だね、宇宙旅行って
- 男
- そうだね
- ――終わり。