- 白木屋お初天神通り店。閑散とした店内の、今までたくさん人がいたであろうが、
今は男女二人しか残っていない席がある。
- カツ子
- みんな、帰っちゃったね。
- 新之進
- 何が悪かったんだ。今日の合コンの何が。
- カツ子
- え、藤家君くんわからないの。
- 新之進
- みじんもわからないよ。
- カツ子
- そっか。女子10人来てたよね、今日。
- 新之進
- うん。
- カツ子
- それで男子が藤家くん一人って言うのが、悪かったんじゃないかな。
- 新之進
- ・・・えっ?
- カツ子
- そんなインコみたいな目をされても。今日の合コンの幹事は君だよね。
- 新之進
- そうだよ。メンバーを集めたのも、お店を決めたのも、僕だよ。
- カツ子
- 普通合コンっていうのは、男女同数を集めるものなのよ。
- 新之進
- でも僕は今日、僕だけがもてようと思ったんだ。
- カツ子
- どう言ったらイイのかな。今日さ、変なハーレムみたいになってたよね。
- 新之進
- みんなが怒り出すまではとても楽しかったよ。
- カツ子
- 怒ったよね。なんでかわかるかな?
- 新之進
- みんなの心が狭かったんだろうね。
- カツ子
- ふざけんじゃねえよ。
- 新之進
- 小野寺さん。
- カツ子
- なんでわざわざてめえ一人のために集まんなきゃならねえんだよ!!合コンてのはな、
たくさんの中から自分に合う人を見つけるための楽しい会なんだよ。
- 新之進
- そ、そうか!!合コンて、みんなが楽しくなければだめなんだ!!
- カツ子
- わかってくれた!
- 新之進
- うん!
- カツ子
- その一か月後、再び藤家くんから合コンのお誘いが来た。
- 藤家
- 飲み物足りてますか?そこ、今話題困ってる?じゃあ、大阪と兵庫の県民性の違いに
ついて語ってみたらどうかな?
- カツ子
- 藤家くん。
- 藤家
- さあ、お次はビンゴ大会だよ!!その後は席替えで、その後はわくわく告白タイム!!
最後は連絡先交換会です!
- カツ子
- ちょっとちょっと!
- 藤家
- 忙しいんだけど。
- カツ子
- ちょっとやりすぎじゃない?婚活パーティーじゃないんだからさ。
- その日の合コンが終わる。
- カツ子
- (藤家に)お疲れ様。
- 藤家
- ぁぁ・・・。
- カツ子
- めっちゃ疲れてんじゃん!!
- 藤家
- 苦行みたいだった・・・!
- カツ子
- そこまでしなくていいよ!藤家君、全然楽しくなかったでしょ?
- 藤家
- (泣いて)なんでわかるの。
- カツ子
- もう。もっと力を抜いて楽しまなくちゃ。せっかく幹事なんだから。
- 藤家
- そうか。
- カツ子
- そうだよ。
- カツ子
- ありがと、小野寺さん。いつも気づきを与えてくれて。僕、合コンを極めるよ!
- カツ子
- そして一か月後、再び藤家くんから合コンのお誘いが来た。
- 藤家
- 小野寺さん、こっちだよ!
- カツ子
- ごめんね、遅れて。
- 藤家
- いいんだよ。
- カツ子
- あれ?ほかのみんなは?
- 藤家
- 今日はいないよ。
- カツ子
- えっ?
- 藤家
- 今日はね、僕と小野寺さんだけの合コンだよ。
- カツ子
- どういうこと?
- 藤家
- ビールでいい?(店員に)ビール二つお願いします。
- カツ子
- 二人だけなの?
- 藤家
- うん。その方が小野寺さんといっぱいしゃべれるじゃない。
- カツ子
- えっと。
- 藤家
- 普通の合コンだったらあんまりしゃべれないじゃない。
- カツ子
- これ、合コンなの?
- 藤家
- うん。
- カツ子
- 合コンって、基本的には恋人を探すためのものだけど・・・。
- 藤家
- そうだよね。
- カツ子
- えっと・・・。
- 藤家
- 僕ね、この三か月、合コンのことばっかり考えてたんだけど、わかったことがあるんだ。
- カツ子
- 何?
- 藤家
- 合コンの真理は、さっさと合コンを卒業しろってことだよね。
- カツ子
- ああ、そうね。恋人できたら、別に合コン行かなくていいもんね。
- 藤家
- 今日で卒業できるといいんだけど。
- カツ子
- ・・・えっと・・・。
- 藤家
- でもそれがわかるのに毎日合コン行ったからね。30万ぐらいかかったね!
- カツ子
- うわあ、もったいなすぎでしょ!!
- 終わり。