中学校の理科室。
男、ドアを開け、外の様子を伺う。
うん、廊下には誰もいない。
それでは、化学実験部の極秘部活動を始める。
吉村先生に内緒で大丈夫かな。
今日の実験は部外秘である。吉村先生も例外ではない。
うん。
山田、ビーカーを。
これでいい?
うむ。そこにリンゴの皮を少々。
僕がむくよ。
できるのか?
うん、家でもたまに手伝うし、得意なんだ。
今日は山田が被験者でもあるのに、悪いな。
ううん。
男、リンゴの皮をむく。
慣れた手つきだ。
へへへ。
そしてカカオ、ハチミツ、イチジクを入れる。
なんだか、おいしそうだね。
ここまではな。
その、ピンク色の玉はなに?
ヒツジの睾丸だ。
えっ。いったいどこで。
叔父がトルコ料理屋を営んでいる。
もらったの?
拝借した。
盗んだんだね。
さらに麻の実、ラベンダー、イモリの黒焼き。
わあ。
そして赤ワイン。
お酒持ってきちゃったの?
部外秘だぞ。
さっちゃん、これはいったい、何になるの?
山田、リンゴの皮を。
あ、うん。
上出来だ。それを入れて、混ぜる。ガラス棒を。
はい。
ぬちゃぬちゃという音。
うわあ。
最後に、バニラエッセンスを少々。
塗り薬であれ。
飲み薬だ。
やはり。
山田。さあ、グイッといくがよい。
これは、なんの薬なの?
惚れ薬だ。
惚れ薬?
果たしてこの調合でうまくいったかどうか。さあ、グイッといくがよい。
・・・これさ、さっちゃんが飲みなよ。
なぜ?
僕が飲んでも、実験が成功したかわからないよ。だって僕、すでに。
山田、貴様。飲みたくないからって嘘をついているのではあるまいな。
違うよ! 僕、結構前から、さっちゃんのこと。
・・・そうだったのか。
うん。だから。
ならば、私が飲んでも意味はない。私だって、すでに。
なら、これはもう、片付けようね。
仕方がない。実験は失敗に終わった。
ああ、良かった。
器具や材料を片付ける。
しかし、山田。貴様からまだ、愛の言葉を聞いていないではないか。
え?
極秘部活動、継続だ。自白剤の調合を始める。タランチュラの粉末を少々。
大好きだよ、さっちゃん。大好き、大好き。
END