- ――放課後。
- 男
- あのさ、あの、えっと、あの
- 女
- もう、なんなん
- 男
- いや、ごめん
- 女
- なんか言いたいことがあるから、呼び出したんやろ
- 男
- うん。せやねんけど
- 女
- ほんなら言いや
- 男
- あのさ、俺、あの、ずっと、ずっと、す、好きやねん。君のこと
- 女
- うん
- 男
- だから、好きやから、付き合ってほしくて。あ、いや、あのー
- 女
- え?
- 男
- いや、ごめん
- 女
- なに?
- 男
- やっぱり、今のなし。ごめん。聞かんかったことにして
- 女
- え?
- 男
- 聞かんかったことにしてほしい
- 女
- いいけど、別に
- 男
- ごめん
- 女
- え、私のこと好きで、付き合ってほしいっていうやつやんな?
- 男
- うん
- 女
- いいけど、別に
- 男
- うん、ごめんな
- 女
- いいけど。別に。告白してみたけど、やっぱり好きじゃなかった?
- 男
- いや、そういうわけじゃないねんけど
- 女
- 断られるの怖くなった?
- 男
- それも違う
- 女
- ふーん。いいけど、別に、聞かんかったことにしても
- 男
- ごめんな。ほんまごめんな
- 女
- なんやねん。むかつくな
- 男
- え
- 女
- 時間返して欲しいわ。ずっとずっと言い出すの待ってたんやで、私。それやのに、
なかったことしてって。むかつくむかつくむかつく
- 男
- ごめん。ほんまごめん。なんか、あのな、告白しながら、嫌やろうなって思ってん
- 女
- は?
- 男
- 俺から告白されんの嫌やろうなって
- 女
- は?
- 男
- 俺、だってクラスでもパッとせんし、ずっと秘かに想われてるっていうのも気持ち悪いと思うけど、
でも、どうせ告白されるんやったら、俺よりもっとかっこいいやつからされた方が嬉しいやろうし。
だから、俺から告白されんの嫌ちゃうかなって。気持ち悪いんちゃうかなって
- 女
- 別にそんなことないけど
- 男
- え、そうなん?
- 女
- 呼び出されたときから、なんとなくどんなこと言われるかわかってたし。
告白されるんやろうなって。告白されるん嫌やったら、最初から適当に理由作って帰ってたわ
- 男
- うん。あ、そっか
- 女
- 私、素直にずっと待ってたんやで、言い出すまで
- 男
- うん
- 女
- もういいけど
- 男
- うん
- 女
- 聞かんかったことにするけど
- 男
- え
- 女
- 帰るわ、私。え、帰ってもいいよね?
- 男
- うん
- 女
- じゃあ、バイバイ
- 男
- バイバイ
- ――女、帰る。
- 男
- あ、ちょっと待って
- ――女、立ち止まって、振り返って、
- 女
- もう、なに
- ――終わりです。