店長
エイリアン、、、君はつまり、エイリアンだったんですね。
従業員
ごめんなさい。騙すつもりはなかったんです。
店長
いや、いいんです。薄々そうじゃないかと、ぼく思ってましたから。
従業員
そんな、じゃあ許して下さるんですか。
店長
許すも何も、君も、大変だったでしょう。ぼく以上に。いや、比べ物にならないくらいに。
だって、きみ、田舎から都会にきましたとか、そういうのとは数段違うわけです。
あの星から、地球にきた。これはもう大変な事ですよ。苦労したでしょう。
従業員
そんな優しいことを言ってくださったの、店長が初めてです。ありがとうございます。
店長
申し訳なかった。もっと早くに気づいてやればよかった。
従業員
いいえ、人間の格好をしつづけたぼくが悪いんです。
店長
その、一つ見せてくれますか。きみの、本当のすがたっていうのを。
従業員
・・・わかりました。
ピカーという何か異質な音。
ミョンミョンミョン、シャー!などの
長い手足が何本もあって、目が一つのような異様な姿を連想させる音。
従業員の姿が本来の姿に戻った。
店長
それが君の本当の、、、あ! いけない! それはいけない! それは!あ!あーーーー!!
従業員
戻りました!店長! ぼく戻りました!
店長
はーはー。・・・本当に申し訳ない。
従業員
いいえ、そんな。どうか気になさらずに。
店長
それで、年越しは実家でご家族と。
従業員
はい。母が会いたがっていると父から連絡が来ました。
店長
そうですか。
従業員
恥ずかしい話、両親は年越しになると張り切るんです。こたつをだして、
お餅もたくさん仕入れて。親戚一同集まりますから、幼い甥や姪も来ます。
花札、コマ、オセロ、トランプ。ぼく、相手になってやらなくちゃいけません。
店長
そうですか。どこもそう変わらないんだなあ。
従業員
店長は、どうなさるんです。年越しは。
店長
ぼくは、店がありますから。
従業員
店、開けるんですか。ぼく。
店長
気にしない!気にしないで。お客さんはぼくの家族のようなもんです。
君は君の年越しを楽しんできてください。
従業員
店長、、、、
ゴーーーーと、宇宙船の一軍が去来する。
店長
なんだ・・・なんだあれは・・・! 空に光の、光の集まりが。あ! あーーーー!
従業員
新幹線です。
店長
しん、かん、せん、、、!
従業員
はい。おかげさまで早めに予約を取ることができました。
店長、今年一年お世話になりました。ぼく、1月4日に帰ってきますね。
店長
ゆっくりしてきてもいいんですよ。
従業員
いいえ、店をやってると知った以上、そうは言ってられません。ぼくにとっても、
店長はもう一つの家族ですから。
店長
きみ・・・ありがとう。
従業員
あ、時間です。
ゴーーー、と従業員は光に吸い込まれる。
従業員
では店長、よきお年を!
店長
ああ! きみも! きみも、よきお年をーーーー!!新年で待ってますよ!待ってます!
従業員
はーーーーい・・・
飛び去る宇宙船。
店長
はー・・・はー・・・・。
空一面にどんどん飛び去っていく他の宇宙船たち。
店長
すごい、、、来年もきっと凄くなる。年越しの準備をしなければ、、、!
終わり。