- ・マルガリータ ― 金持ちの娘
・ミカエル ― マルガリータの家の使用人。マルガリータのことが好き。
マルガリータ、鳥小屋の掃除をしている。そこへミカエルがやってくる。
- マル
- ♪ランララン・・・。
- ミカ
- マルガリータお嬢さん。
- マル
- おはよう、ミカエル。
- ミカ
- 鳥小屋の掃除なんて僕がやるのに。
- マル
- いいのよ、ミカエル。私のお父さんはあなたたち使用人のことを奴隷と呼んでいるけれど、
私は、お友だちだと思っているもの!
- ミカ
- お嬢さん! ・・・友だち、ですか?
- マル
- ええ!あら、あなた、なんか頭に・・・昆虫の触覚みたいなのが二本、生えてるわよ?
- ミカ
- ああ、なんか急に出てきたんですよ。
- マル
- そうなの?心配ね・・・。
- ミカ
- (たかぶって)お嬢さん・・・。
- マル
- ダメよ、ミカエル。だってお前は使用人じゃない。
- ミカ
- あっ・・・。
- マル
- 今年のブロイラーはどう?
- ミカ
- それが、なんかおかしいんですよ。ちょっと見てもらえますか?(扉を開ける)
- マル
- ああっ!!何これ!!
- ミカ
- そうなんですよ、ブロイラー達がすごくカラフルなんですよ。あれなんか赤色だし、
黄色もいるし、青もいるし。なんであんな色になったんだろうなあ。
- マル
- 一つ聞くけど・・・あれ、食べてないわよね?
- ミカ
- 食べてますよ。
- マル
- ウソ!
- ミカ
- 僕らのまかない、ここのブロイラー使ってるんで。
- マル
- もう、終わりだわ・・・。
- ミカ
- お嬢さん?
- マル
- ああ!
- ミカ
- どうしたんですか!
- マル
- いいこと?私、大学で悪魔の研究に手を染めてしまったの。
- ミカ
- えっ?
- マル
- 私、鶏の色を変える研究をしてるの。
- ミカ
- 色を?
- マル
- で、ついうちのブロイラーで実験を。
- ミカ
- 何やってんですか。でも、羽の色が変わるだけなんでしょ?
- マル
- 鶏はね。問題はその鶏を食べた人間よ。
- ミカ
- どうなるんですか。
- マル
- こないだ同じゼミの子に赤い鶏を食べさせてみたの。
- ミカ
- そしたら?
- マル
- 真っ赤な伊勢エビに変身したわ。そして静かに海に沈んでいった・・・。
- ミカ
- エビ?
- マル
- 茶色を食べた子もいたわ。
- ミカ
- そしたら?
- マル
- ヒグマに変身したわ。そして静かに森の奥へ消えていった・・・。
- ミカ
- 人間じゃないものになってしまうんですか?ぼ、僕も食べたんですよ?
- マル
- お気の毒さま。
- ミカ
- あなたのせいでしょう!
- マル
- それもそうよね。あなた、何色のを食べたの?
- ミカ
- 多分、黒ですね。黒をまとめてしめた日に、食堂で親子丼食べたので。
- マル
- じゃあ、黒いなにかに変身する・・・。ワオ!
- ミカ
- なんですか。
- マル
- ・・・あなたの頭の触覚・・・ああ!
- ミカ
- なんですか!
- マル
- これは、ゴキブ・・・
- ミカ
- えっ! ええっ! か、体がむずむずする!
- マル
- きっともう変身するのね!
- ミカ
- お嬢さん、どうして殺虫剤を手にもっているんですか!!いやだあー・・・!
- 爆発音のような音がする。ミカエル、ゴキブリに変身するかと思いきや、
悪魔に変身している。
- ミカ
- ははははは。
- マル
- ゴキブリじゃなかった! 悪魔に変身したわ!
- ミカ
- おまえにおもちゃにされた鶏たちのうらみを晴らすぞ。
- マル
- ミカエル!
- ミカ
- 奴の意識は私がのっとった。私は、鳥たちの怨念の集合体だ。死ねー!
- マル
- きゃー!
- 悪魔、マルガリータに襲いかかる。ところがその瞬間、ミカエルの意識が戻り、
悪魔の行動をストップさせる。
- ミカ
- やめろ! お嬢さんに何をするんだ!
- マル
- ミカエル? あなたなの?
- ミカ
- 僕の意識が残ってる間に、この悪魔の槍で、僕ごとこいつを貫いてください!
- マル
- ミカエル・・・死ねー!!(刺す)
- ミカ
- ちょっとは躊躇してください!(貫かれる)
- マル
- こうしてミカエルは儚くなりました。今度も人間に生まれてくるといいわね!
- 終わり。