- ――男がゲームをしている。女はそれを見ている。
- 男
- こんなん見てて飽きへんの?
- 女
- ううん、おもしろいよ
- 男
- あ、そうなん。ちょっとやってみる?
- 女
- いい
- 男
- ああ、そう
- 女
- 私、苦手やからな。自分でやるよりも、人の上手なプレイを見てた方がおもしろい
- 男
- へえ。変わってるな
- 女
- そうかな
- 男
- 絶対、自分でやる方がおもしろいと思うけど
- 女
- ゲーム、上手いからやって。私はそうじゃないもん
- 男
- おもしろい?
- 女
- おもしろいよ
- 男
- ええ彼女やなあ
- 女
- なんなん、いきなり
- 男
- 彼氏のやってるゲームをおもしろがって見ててくれるなんてええ彼女やん
- 女
- えへへ、褒められた
- 男
- かわいいなあ
- 女
- えへへ。ってか、よくゲームしながら話せるよな
- 男
- え、なんで?
- 女
- 私、なんかしながら同時に他のことするって苦手やから、すごいなあって思う
- 男
- え、普通やけど
- 女
- ゲームと会話やったら、どっちの方が集中してんの?
- 男
- 同じくらいかな
- 女
- え、同じくらい?
- 男
- どっちにも集中してるよ。どっちもおろそかにしてない
- 女
- あのさあ、ゲームしながらでいいからさ、聞いてほしいねんけど
- 男
- えっ、あれやったら、ゲーム止めるけど
- 女
- ううn、むしろゲームやっててほしい
- 男
- うん。なに?
- 女
- 私、やっぱり卒業したら実家に帰ることにしようと思って
- 男
- え。あ、そうなん
- 女
- やっぱり親のこととかいろいろ考えたらそうした方がいいかなあって。
叔父さんが就職先を紹介してくれるって言ってくれてるし
- 男
- あ、そうなんや。よかったやん
- 女
- どう思う?
- 男
- いや、いいんじゃないの。ちゃんといろいろ悩んで決めたことやと思うし
- 女
- うん。ありがとう
- 男
- 遠距離でいいから、別れたくないんやけど
- 女
- え、できるかな。私達にそんなこと
- 男
- できるよ。それで、俺が仕事にも慣れて立派な社会人になったら、お前のこと迎えに行くから。
どんなに手強い敵が現れても、絶対に迎えに行くから。それまで待っててほしい
- 女
- うん。わかった
- ――間。
- 女
- え、でも、どうしようかな
- 男
- でも、もう決めたことなんやろ
- 女
- うん
- ――終わり。