イエーイ! ヒデオくん、お誕生日おめでとー!
ありがとう。
ねえねえ、なにが欲しい? なにが欲しい? なんでもしてあげるよ?
なんでも?
あ、エッチなのは駄目だからね?
じゃあ、まゆみちゃん、お願いがあるんだけど。
うん。
「二人だけの秘密だからね」って、言ってくれないかな。
なにそれ?
少し照れた、恥ずかしそうな声で、「二人だけの秘密だからね」って、言ってくれないかな。
あたしが言うの?
うん。いいかな?
「二人だけの、秘密だからね」
oh……。
なに。こんなのでいいの?
うん。ありがとう。
別に、こんなのでいいなら、いくらでも言ってあげるけど。
本当? なら、「あーあ、文化祭、終わっちゃうね」って、言ってくれないかな。
文化祭?
放課後、片づけをしながら、僕だけに聞こえる声で。
「あーあ、文化祭、終わっちゃうね」
oh……。
これでいいの?
じゃあ、次は、「バッカみたい、鼻の下伸ばしちゃって」って、言ってくれないかな。
少し嫉妬して、頬を膨らました様子で。
「バッカみたい、鼻の下伸ばしちゃって」
oh……。
ヒデオくん、何かをやり直そうとしてない?
え?
そりゃ、ヒデオくんがモテてこなかったのは知ってるけどさ。
ごめん、注文が多すぎたかな。
いや別に、言うくらいなら、いくらでも言ってあげるけど。
じゃあ次は、「先輩のギター、もっと聞きたいです」って。
ヒデオくん、ギターなんて弾けないのに?
いいから。
「先輩のギター、もっと聞きたいです」
「ふーん、ヒデくん、まだ彼女できたことないんだー」って。
ええ?
今度は女の先輩。金髪の。ちょっと大人な。
「ふーん、ヒデくん、まだ彼女できたことないんだー」
俺今、サッカーにしか興味ないんで。
なに?
いや。
ヒデオくん、パソコン部でしょ?
「くそ、クイズに間違えたから天井が落ちてきた!」
なに?
「俺が天井を支える! お前は、俺を置いて、先に行け!」
え、どうしたらいい?
いや、今のは僕が言いたくて。
あ、そう。
「ねえ、今日ウチ、親いないんだ」って。
ヒデオくん。
「二人とも遅くなるんだって、だから」って。
ヒデオくん。
それで僕の服の裾をギュッと握って。
ヒデオくん、それはもうエッチだよ。
だめ?
だーめ。
誕生日なのに。
あーあー、もう。そんなんだからいつまでも、恥ずかしくて紹介できないのよ。
はやくしっかりしなさい。こんなことしてるなんて、二人だけの秘密だからね。
あ、うん。
過去に聞けなかった妄想の台詞で鼻の下伸ばしちゃって。バッカみたい。
おお。
今ここにいるあたしから、聞きたい言葉はないの?
……好きって言って。
だめ。先に言いなさい。
ああ…、好き。
END