- ジングル。
- 女
- 山の下スタジオからお送りする
- 男女
- 「あなたとあなたにこんにちは」
- 男
- ぼく、田丸ジョンと、
- 女
- なぎさミーがお届けする、ハッピーなテンミニッツ。
- 男
- お楽しみ頂いていますか? 
- ラジオSE 「イェーイ」
- 男
- では今夜最後の、
- 女
- ハ・ガ・キ・です。
- ラジオSE「ありがとー」
- 男
- 中学3年生、ペンネーム、ナイトドリーマーさんからのお便り。
 「ミーさん、ジョンさん。こんばんは。」
- 男女
- こんばんはー。
- 男
- 「僕は、今、進路に迷っています。」
- 女
- きたわね、田丸ジョン。
- 男
- ああ、なぎさミー。進路相談だ。
- 女
- いつかリスナーが大人になって、私たちのことを思い出してくれるのよ。
- 男
- そう、あの時の、あのラジオに救われましたってね。
- 女
- ええ。
- 男
- 続きを読むよ。なぎさミー。
- 女
- ええお願い。
- 男
- 「親は公務員を勧めますが、僕はお二人のようなパーソナリティになりたいのです」
- 女
- まあ。光栄だわ。
- 男
- 「けれど、おしゃべりが苦手です。」
- 女
- 致命的じゃない?
- 男
- 「僕の声が、電波にのり、空をかけ、宇宙ステーションから跳ね返り、また地球にかえっていく。考えただけでも緊張します。」
- 女
- 宇宙ステーション?
- 男
- 知らないのかい、なぎさミー。彼が言うように、僕らの声は、一度地球を巡る宇宙ステーションに集約されて、地上のあらゆるステーションに届けられるんだ。
- 女
- そうだった。なんだか急に緊張してきたわ。
- 男
- 「ジョンさん、ミーさん。進路希望の紙に、ラジオパーソナリティと書く勇気を、僕にください。」
- 女
- 実はね、私、進路希望に嘘を書いたの。
- 男
- なぎさミー。
- 女
- 後悔してるわ。相談する勇気すらなかったのよ。
- 男
- 「僕は、今日、とっても泣きたかったのですが、」
- 女
- 今日? いったいドリーマーくんの身に なにがッ?
- 男
- 落ち着くんだ、なぎさミー。郵便はだいたい二日後に届く。
- 女
- なんだか人ごとに思えなくって!
- 男
- 「このハガキをお二人が読んでくれる頃、僕は笑っていれるようにしたいと思います。」
 ・・・以上だ。
- 女
- 逆に心配になる一行で終わってる!!!!
- 男
- 落ち着くんだ、なぎさミー!
- 女
- ドリーマーくーーーん。聞こえてるー??読んだわよー!!
 ちゃんと君のハガキ、読んだからーーー!!
- 男
- なぎさミー!
- 女
- ちゃんと笑ってる? ちゃんと書いたの?  君の夢!!
 きっと、きっと、なれるから!!
 ラジオパーソナリティに!!・・・に、に、に・・・・。
- 声が宇宙に行って、星たちの間を走り抜けていく。
 時間が過ぎていく。ジングル。
- おじいさん
- えー、山の下スタジオからお送りしているぅ、
- ドリーマーくん
- せーの。
- おじいさんとドリーマーくん
- 「あなたとあなたにこんにちは!」
- おじいさん
- 田丸ジョンと
- 若い男
- 僕、ナイトドリーマーがお送りしています! なぎさミーさん。
 今夜も聞こえてますか。
 聞こえてますか。
- おじいさん
- ああ、きっと聞いてるよ。星の間で、なぎさミーは。
- おわり。