女

私、生まれてから今までずっと間が悪かったり、失敗ばっかりしてきてて、なんて私は頭が悪いんやろうとか、能力が低いんやろうって思ってたんやけど、最近は、なるべくそう思わんようにしようって考え方変えるようにしてんねん

男

あー、はい

女

頭悪いとか能力低いとか、そんな風に自分のこと責めるん辛いし、可哀想やから、だから私、私自身には実はそこまでの落ち度はなくて、ただ運が悪いだけ、運が極端に悪いだけって思うようにしてん

男

それで、楽になりました？

女

うーん。傷付いて落ち込んだり、一緒におる人に私で申し訳ないなって思うことは少なくなったけど。考え方変え始めた当初は、なんか嫌なことがあっても、はいはい運が悪いだけ、私は悪くない、運が悪かっただけって誤魔化せてたんやけど、運悪いなあ運悪いなあってなんでもかんでも思うようにしてたら、なにをしてても全然楽しくなくなってしまった。楽しいことがあっても、運さえ悪くなければほんまはもっと楽しかったんやろうなって思えてきて全然楽しくなくなんねん

男

それは辛いっすねえ

女

うん。辛い。めちゃくちゃ辛い。ほんま、私が私じゃなかったらよかったのに。私が私なん嫌やわ

男

あれ？　じゃあ今楽しくないっすか？

女

今は楽しいけど、うーんでもどうやろう、楽しいと思うけど

男

ぼくのこと、飲みに誘って、ぼくが暇で、暇やし全然行きましょうって答えたの運悪いなあって思いました？　なんで暇やねん、アホちゃうか、こいつ、って思いました？

女

ううん。一緒に飲みに行きたかったし、話してて楽しいから運悪いの忘れてたけど

男

わざわざ辛いって思うことないと思いますけどね

女

え、なにが？

男

辛いと思おうとして辛くなってないですか？

女

あ、でも、申し訳ないなって思う。お酒飲みに行くにしても、私じゃない他の先輩の方がよかったやろうなって。私と飲んでもあんまり楽しくないと思うし

男

楽しいっすけどね、やあ、楽しいな

女

ありがとう

男

普段からですけど、楽しくないことないっすよ。普通に面白いと思いますし。ぼく、好きですけどね、恋愛的な意味で。恋愛的な意味でですよ。ぼくから好かれても運悪いなって、なに好いてくれとんねん、って思うかもしれないですけど

女

いや、ラッキーやなって思うよ。ラッキー

男

ラッキーですか？　どういうことすか、それ

女

私、でも、すごい面倒くさいで

男

確かに。面倒くさそうですねー。ははははは

女

笑うことないやろ

男

あ、すいません

――終わりです。