- 結婚式場、「トワイライト・アマゾネス」の披露宴会場。
 ばたばたと披露宴の用意が行われている。
- ネギ沢
- すいませーん。遅れました。
- 蒜山
- また遅刻か、ネギ沢。
- ネギ沢
- やー、遅刻するつもりはなかったんですけど、調べものネットでしてたら電車が行ってて。
- 蒜山
- 言い訳はいいから、シルバーを運んできてくれ。
- ネギ沢
- 知ってます?松平健って若いころ、めっちゃめちゃ美男子だったんですよ!!
 これ見て下さい。やー、そりゃ電車も来たの気づかないわ。
- 蒜山
- ネギ沢!
- ネギ沢
- はいはい。運んでくりゃいいんでしょ、運んでくりゃ。(去る)
- 蒜山
- まったく・・・。俺が結婚式場「トワイライト・アマゾネス」の披露宴会場のチーフを務めて今年で四年になる。たくさんのお幸せなカップルを祝福してきた俺だが、この俺にふさわしい女性がいまだ現れないことが、唯一の悩みだ。
- 司会のリリカが現れる。
- リリカ
- おはようございます。
- 蒜山
- おはようございます。って、声ガサガサじゃないですか。
- リリカ
- そうなのよ。申し訳ないわ。カラオケって怖いわね。
 20時間歌ったらこうなっちゃうんだから。
- 蒜山
- リリカさん。プロ意識。
- リリカ
- ごめんね。でも昨日どんな枯れ声でも直すお医者に行って、
 肝臓つぶすくらい強い薬飲んできたから大丈夫。
- 蒜山
- 不安だ。ともあれ、披露宴は始まった。
- ネギ沢
- チーフ!
- 蒜山
- なんだ。子供用のオレンジジュースはつぎ終わったのか?
- ネギ沢
- はい。
- 蒜山
- 結構。
- ネギ沢
- ただ・・・オレンジジュースと間違ってシャンパンをついでしまったんですけどね
- 蒜山
- 回収だ!!
- ネギ沢
- ラジャー!
- 蒜山
- まったく、とんでもない・・・!!
- リリカ
- (ガサガサ)新郎智彦さんは1987年愛知県に生まれ・・・。(咳き込む)
- 蒜山
- クレームが来るかもしれんな・・・。よし、そろそろウエディングケーキの準備だ!
- ネギ沢
- チーフ。
- 蒜山
- なんだ。
- ネギ沢
- 私、腹立つことがあって。
- 蒜山
- どうした。
- ネギ沢
- あのウエディングケーキって、偽物じゃないですか。
- 蒜山
- セレモニーケーキと言え。
- ネギ沢
- ケーキカットする部分だけ、本物をはめ込んでるんですよね。
- 蒜山
- まあな。小さいケーキをな。
- ネギ沢
- だから・・・私落としちゃったじゃないですか。
- 蒜山
- なにい?
- ネギ沢
- これなんですけど。
- 蒜山
- ああ!!ぐちゃぐちゃだ!
- ネギ沢
- どうします?
- 蒜山
- お前なあ!とりあえず、形だけ整えて・・・。爪なども使ってそれっぽく・・・。持っていけ!
 ・・・なんて日だ・・・。しかし、あとは花嫁からの手紙と、新郎のあいさつで終わりだ。ふう。
- リリカ
- それではただいまより、新婦・・・
- 蒜山
- どうした?
- ネギ沢
- リリカさん、口が動いてるのに声が出ていない!
- 蒜山
- 完全にのどがつぶれたか!!
- ネギ沢
- どうします?
- 蒜山
- 仕方ない!俺が行く!(マイク)あ、あ。これより先は私・当会場チーフの蒜山が司会を務めさせていただきます。それではただいまより、新婦・・・(心の声)しまった!!新婦の名前が思い出せない!!よしえ・・・違う。はるみ・・・違う。あ・・・あ・・・。
- ネギ沢
- かなえですよ、チーフ!
- 蒜山
- お前を・・・信じていいのか・・・?
- ネギ沢
- 大丈夫!友達の名前と一緒だから覚えていたんです!
- 蒜山
- そうだったか!今初めて、お前がいてよかったと思うぞ!!それではただいまより、新婦かなえさんからご両親にあてた手紙を読んでいただきま・・・。
- 会場がざわつく。「かなえ?」「あの人名前間違えて・・・」「麻衣子だよ」とか聞こえてくる。
- 蒜山
- えっ?
- ネギ沢
- チーフ。今思い出したんですけど、かなえは隣の会場の新婦さんの名前だったですね。
- 蒜山
- ネギ沢!!やっぱり、信じられん奴は最後まで信じるべきじゃないな!!
- 終わり。