- 女
- 第一回、聴いて聴いてなんじゃろなゲーム~。
- 男
- イエーイ。
- クイズ番組的なジングル。
- 女
- 117グループ ラヴィーナ&メゾン提供、STORY FOR TWO。この番組は毎週土曜十時から、
 愛の恋の想の夢の2人物語をお送りしておるんですけれども…。
- 男
- のたにさん、今日はちょっと、趣向が違う感じで。
- 女
- そうなのです、坂本さん。今から私が、「ある音」を鳴らします。皆様には、それが何の音なのか想像して、当てていただきたいのです。例えば、例題いきますよ。坂本さんもちょっと目を閉じてください。
- 男
- はいはい。
- 女
- プリーズリッスン。
- 缶をあける音。
- 男
- あっ、プシュ。これはもう、はい。
- 女
- わかりましたか?
- 男
- 今のは、缶をあけた音ですね。
- 女
- 残念! 缶コーヒーをあけた音、です。
- 男
- あーっと、そこまでは難しいなぁ。
- 女
- でも、炭酸じゃないことはわかりましたね。
- 男
- うーん。
- 女
- 正解は、コーヒーショップの老舗ランドルトカフェが全面協力する、アイアイブラックコーヒーのスチール缶をあけた音、でした。
- 男
- うわあ。
- 女
- 上品な香りが鼻をくすぐりましたね。
- 男
- ラジオです。
- 女
- さあ、以上の例題のようにお答えください。目を閉じて。それではさっそく第一問!
- 男
- やばい。
- 女
- プリーズリッスン。
- 紙をめくる音。
- 男
- なるほど。
- 女
- わかりましたか。
- 男
- これはまあ、紙をめくる音、ですね。
- 女
- 残念、紙じゃありません。
- 男
- えっ、紙じゃない。
- 女
- 本です。
- 男
- ああ、本。まあ、紙ですね。
- 女
- どんな本だと思います?
- 男
- スタジオですから、台本、ですかね。
- 女
- 残念。フランツ・カフカです。
- 男
- フランツ・カフカ。
- 女
- の?
- 男
- そこまで想像は…。
- 女
- はい、リスナーの皆さんはわかりましたか。正解は、新潮文庫 フランツ・カフカ『城』 129ページから133ページを開いた音、でした。ちょうどKがまた寝過ごしたあたりですね。カフカの人たちはよく寝過ごしますね。
- 男
- わかりませんけども。
- 女
- それでは最終問題! 坂本さん目を閉じて、しっかり想像してくださいよ。この番組は、愛の二人物語ですからね。こんなことも……、耳を澄まして…、プリーズリッスン。
- 椅子から立つ音、パーカーのジッパーを下ろす音。それを椅子に掛ける音。
- 男
- あれ? のたにさん?
- 女
- さあ、想像して。
- 髪留めを外し、ほどく音。Tシャツを脱ぐ「うんしょ」という小声。吐息。ジーンズのベルトを外す音。ジーンズを脱ぐ音。靴下を脱ぎ、裸足がぺたり。
 ……そんなふうに聞こえる。
- 男
- あれ? ちょっと、のたにさん、もしかして服を……。
- 女
- 今度は簡単な答えじゃ駄目ですよ。しっかり想像して……。
- 男
- あ、ちょっとのたにさん、最終問題、これ、想像が……想像が止まりませんけど…!
- END