- 作五郎
- 邪魔するよ。
- おはま
- はい?あら、作五郎親分。
- 作五郎
- おう。
- おはま
- どうしたんですかい?調べですかい?
- 作五郎
- 牛込で盗みがあってね。俺も狩りだされたのさ。
- おはま
- ご苦労様です。
- 作五郎
- ここいらは又八親分の縄張りだろう?
早めに調べが終わったから、ちくといっぱいどうかなと思ってね。
- おはま
- それがねぇ、生憎うちの人は昨日から帰ってないんだよ。
- 作五郎
- え?
- おはま
- なんか事件の探索してるんだろうけど、ここのとこ忙しそうでね。
- 作五郎
- そういや今回の現場にも顔出して無かったな。
- おはま
- 兎に角、うちの人いつ帰るか分からないんですよ。
- 作五郎
- じゃあまた明日出直すか。
- 次の日
- おはま
- おや作五郎の親分。
- 作五郎
- 今日こそ又八は居るかい?
- おはま
- それがね、やっぱり帰ってこないんだよ。
- 作五郎
- なんだって?
- おはま
- あたし心配でねぇ。
- 作五郎
- ふむふむ、わかった。俺がちっと探してみるよ。
- おはま
- 本当かい!?
- 作五郎
- あぁ。こっちは人探しが仕事だ。直ぐに見つけてやるよ。
そうさなぁ、先ずは最近の又八について、なんか変わったことがあったら教えてくれ。
- おはま
- そうだねぇ。あ、お茶と煎餅です。どうぞ召し上がってください。
- 作五郎
- お、こりゃすまねぇ。
- おはま
- うーん、なにか変ったことねぇ。
- 次の日
- 作五郎
- 昨日おはまさんから聞いた話を頼りに、ちょいと探してみたんだがよ。
- おはま
- ほんとにすまないねぇ。
- 作五郎
- 最近の又八は押しこみ事件を追っていたようでね、本郷辺りで聞き込みしてたそうだ。
- おはま
- じゃウチの人は本郷に?
- 作五郎
- いや、最近はとんと姿を見せねぇらしい。
- おはま
- 心配だねぇ。
- 作五郎
- ま、もうちっと探ってみるよ。それにしても上手い菓子だねぇ。
- おはま
- ええ。作五郎さんが報告に来てくれると思って用意しといたんですよ。
- 作五郎
- お、嬉しいねぇ。
- 次の日
- 作五郎
- 又八は押しこみの下手人に目星をつけてて、
下手人の家の向かいの茶屋の二階を借りて、連日張り込んでたらしい。
- おはま
- てことはそこにウチの人が?
- 作五郎
- いや、今日行ってみたんだが、三日前から張り込みには来てねぇそうだ。
ま、もうちっと探ってみるよ。
- おはま
- ところで作五郎さん、ちょいとこのへっついを動かしてもらえません?
裏を掃除したいんだけど重くって。
- 作五郎
- おう任せろ任せろ。男手がいないと大変だろう。
- おはま
- 作五郎さんは頼りになるねぇ。
- 次の日
- 作五郎
- ちょいと、おはまさんには言いにくいのだがね。
又八が間借りしていた茶屋の女将もね、同じ日に姿を消したんだよ。
- おはま
- え、それって。
- 作五郎
- もしかしたら示し合せての事かもしれねぇ。
- おはま
- そんな。
- 作五郎
- 張り込み先の女と良い仲になっちまうってのはよくあることだが・・
又八ももしかすると・・
- おはま
- ウチの人に限ってそんなこと。
- 作五郎
- そうだな。不安にさせてすまねぇ。ま、もうちっと探ってみるよ。
それより昨日は晩飯までよばれちまって悪かったね。
- おはま
- いいんですよぉ。今日も食べてくでしょ?お酒もつけてますからね。
- 次の日
- 作五郎
- おはまさんには酷な話なんだがね、又八の居所が分かったよ。
- おはま
- そうかい。悪い話なんだね。
- 作五郎
- ああ。向島の裏店に、例の女将と二人で居るのが分かったよ。
- おはま
- そんな・・うぅ。(泣く)
- 作五郎
- おはまさん。可哀想に。
- おはま
- 作五郎さん。ううぅ・・・
- 作五郎
- 大丈夫だ。俺がついてる。
- おはま
- ありがとうねぇ。
- 作五郎
- あぁ。そういえば、昨日は結局泊まっちまってすまなかったね。
- おはま
- いいんだよ。今日も泊まっていくでしょ?
- 作五郎
- いいのかい?
- おはま
- えぇ。もうお布団の準備も出来てますよ。
- おわり