- 真夏の夜10時。テレビでは「心霊現象24時」がOA中。
- たかし
- ただいま。
- なおこ
- お帰りなさい。
- たかし
- なんか、蒸すなあ。
- なおこ
- クーラーつける?
- たかし
- お願いします。ふー。
- なおこ
- 疲れた?
- たかし
- いや、疲れてはいない。
- なおこ
- 研究はひと段落ついたの?
- たかし
- いや、研究とは、終わりがないものだから。
我々はただ毎日化学と向き合うだけの、一匹の蟻だから。
- なおこ
- 蟻ですか。あ、そうだ。これ、お世話になった結婚相談所から。
結婚したカップルの体験談がほしいんですって。
- テレビの音が聞こえてくる。
- テレビ
- 「誰もいないはずの廃墟。
しかし、カメラが向きを変えた瞬間、我々は信じられないものを発見することになる・・・」
- なおこ
- チャンネル変えてくれていいわよ。
- たかし
- ああ・・・。
- 赤子の泣き声。
- なおこ
- やだ、起きちゃった。ちょっと見てくるわ。
- たかし
- はい。
- なおこ、となりの部屋に寝ている子供をあやしに行く。
- なおこ
- よしよし、ねんねよ~。ねんねよ~。
- 赤子の泣き声、やむ。なおこ、ドアをあけて
- なおこ
- 寝た寝た。
- たかし
- うああっ!!!
- なおこ
- 何、どうしたの?
- たかし
- あー、びっくりした。死ぬかと思った。
- テレビ
- 「その時、カメラがとらえたのは、こちらをうらめしそうに見る子供の顔・・・」
- なおこ
- それまだ見てたんだ。何、怖くなったの?
- たかし
- いや、怖くはない。
- なおこ
- そうよね。(歩き出す)
- たかし
- どこへ行くんだ。
- なおこ
- トイレよ。
- たかし
- ダメだ!
- なおこ
- なんでよ。
- たかし
- 一人にしないで・・・!
- なおこ
- やっぱり怖いんじゃない。あなた、そんなに怖がりだったの?
- たかし
- いや、だってな、他の人には見えてないんだ、この子供は・・・!
- なおこ
- どうせ作り物だって。
- たかし
- 証拠は?
- なおこ
- 証拠はないけど・・・。何よ、あなた、研究者でしょ?
- たかし
- だからこそ・・・!作り物という証拠がない限り、信じられないんだ・・・!
- テレビ
- 「こちらをにらむ、恨めしそうな顔・・・!」
- たかし
- ひええ!
- なおこ
- チャンネル変えましょ。
- たかし
- 見たい・・・!
- なおこ
- そんな怖がってんのに?
- 家の外の階段を誰かがのぼる音。
- たかし
- ひい!霊が来た!
- なおこ
- 誰かが階段上ってるだけでしょ?
- ラインの着信音。
- たかし
- ひゃあ!そんな音、聞いたことない!!
- なおこ
- 毎日聞いてるでしょ?ラインの着信音よ。
- たかし
- 誰からライン?死んだ人から?
- なおこ
- 友達からよ!
- 赤子の泣き声。
- たかし
- 隣の部屋に何かいる!!
- なおこ
- 自分の子供でしょ?
- たかし
- 悪霊じゃないか?
- なおこ
- なんてこと言うのよ。あなたそんな怖がりだったのね。じゃあ、これ言うのやめとこうかな。
- たかし
- 君も死んでるのか。
- なおこ
- 生きてます!
あのね、こないだ私の友達がここへ来たんだけど・・・
ここのマンションのエレベーター、いるっていってた。
・・・あなた!あなた気絶しないで・・・!ちょっとー!
- おしまい。