- 女
- ううん、そうじゃなくて、結ぶでしょ、で、一方を親指と人差し指でもって、
もう一方を、結び目に置くわね。そうしたら、右手でもってるほうの紐をくるっと回して、
だいたい箱から一回り小さいぐらいかな、円ができたら、
結び目のうえに、反対の手で押さえますー、そうして、
- 男
- あー、ちょっと。
- 女
- うん?
- 男
- いやもう、
- 女
- なに?わからなかった?もう一回やろうか。
- 男
- いやもう、その、、、、いいよ。
- 女
- なにが?
- 男
- それ
- 女
- それって、これ?
- 男
- ちょうちょ結び
- 女
- ちょうちょ結び。
- 男
- めんどくさい。
- 女
- は?
- 男
- めんどくさい。
- 女
- ちょうちょ結びが?
- 男
- めんどくさい。
- 女
- 、、、えっと、プレゼント贈るんじゃないの?
- 男
- 贈るけど。
- 女
- 贈るよね。じゃあちょうちょ結びなんじゃないの。
- 男
- そうなの?
- 女
- 彼女にプレゼント贈るからラッピングするんじゃないの?
- 男
- まあそうだけど。
- 女
- え、言ったよね、可愛いのが好きな子だから、とりあえず可愛くしたいんだけど、
って相談してきたよね。さっき百均一緒に行って選んできたよね。リボンとか、箱とか。
- 男
- そうだけど。
- 女
- どれがいいって聞いても、うーん、拙者女心はわからぬ。とか言って私が選んだんだけど、
それも、考えるのめんどくさいから選ばせたわけ?
- 男
- いやそこまでは。
- 女
- そう。じゃあなに。この箱は、このリボンは、どうするつもりなの?
- 男
- ラッピングに、、、?
- 女
- じゃあ、ちょうちょ結びよね。
- 男
- まあ、そうかもしれない。
- 女
- そおうかもしれないい?(ちょっとキレ気味)
- 電話
- 男
- あ。彼女だ。
- 女
- どうぞ。
- 男
- いや、いまはやめとく。長くなるから。
- 女
- 長くなる?
- 男
- そう、長いんだよ。
- 電話しばらくなって切れる。
きれたとたん喋り出す男
- 男
- な、ちょうちょ結びさ、わざわざ、そんな丁寧に俺に教えてくれなくていいよ。
めんどくさいでしょ。めんどくさくない?不器用な俺よりも、おまえがやったほうが早いし、
そっちのほうが効率的じゃないか。出来る人が、出来ることをやるんだよ。
それが社会の仕組みじゃないか、うん。誰がやったかなんて問題じゃないんだよ。この際。
- 女
- 25万円ください。
- 男
- た、たかくないか。
- 女
- 買い物につきあったぶんと、選んだぶん。あんたの彼女からあんたの相談受けてたぶん。
真夜中の泣きながらの電話に付き合ったぶん。
- 男
- え?
- 女
- あんたと彼女は私の友達だから、うまくいってほしいって願ったぶん。
- 男
- 泣いてた?
- 女
- いろいろめんどくさいぶん!
- 男
- ちょ、ちょ。
- 女
- さっさと払いなさいよ。わたしと彼女とで、ハワイに行くわ。
あんたのことなんか青い海の向こうに、すーぐに忘れて次に行くわ。
誰がやったかなんて関係ないわよ。ちょうちょ結びが解けたら、残るのはぜんぶ消耗品よ!
- 男
- ちょ、意味が
- 女
- めんどくさいから、説明なし!
- 男
- おいおい。
- 女
- 口座番号はこれ。ふう! はーめんどくさかった。
- おわり。