- 女
- ここだけの話があるんやけど、聞く?
- 男
- なんや、改まって
- 女
- 私さあ、ここだけの話なんやけど、投げキッスを極めた女として有名やねん
- 男
- なんやそれ
- 女
- 一部の界隈から投げキッスの達人って言われてんねん
- 男
- なんやそれ。どこで言われてんねん
- 女
- 私の投げキッスすごいねんで
- 男
- 投げキッスみたいなもん、誰がやったって一緒やろ
- 女
- あ、馬鹿にしたな
- 男
- 達人かなんか知らんけど、一緒一緒
- 女
- 私の投げキッス、ほんまにすごいねんで。
みんなメロメロになんねん。象をも倒す投げキッス
- 男
- 倒すんかい。倒すってなんやねん
- 女
- 雨をもやます投げキッス
- 男
- 何言うてんねん、さっきから
- 女
- 枯れ木に花を咲かせましょう
- 男
- 昔話やん。もう投げキッス関係ないやん
- 女
- とにかく凄いんやから、私の投げキッス。
私がここまで大きくなれたのは、投げキッスのお陰やわ
- 男
- はあ?
- 女
- 私は投げキッスに育てられたといっても過言ではないわ
- 男
- ようわからんけど、悲しいこと言うな
- 女
- 私の投げキッスが凄いっていうことまだ信じてないやろ
- 男
- 信じるも何も、投げキッスに良いも悪いもないって
- 女
- そこまで言うなら受けてみるか、私の投げキッス
- 男
- おう。望むところや
- 女
- ちなみに言うとくけどな、私の投げキッス受けて、
可愛いって言えへんかったやつおれへんからな
- 男
- 言えへん。俺は絶対言えへん
- 女
- 私の投げキッス受けて、頬を赤らめへんかったやつおらへんからな
- 男
- 赤らめるか。赤らめるわけないやろ
- 女
- ある人なんか私の投げキッス受けて、泣きながら、これから生きていく希望を持てました、
言うたんやからな。救っとんねんこっちは、投げキッスで人を
- 男
- ごちゃごちゃ言わんと、はよ投げキッスせえ
- 女
- あれ、投げキッス楽しみなってんちゃうん
- 男
- なってへんわ
- 女
- ほんだら、お待ちかねの投げキッス、するで
- 男
- やかましわ
- ――投げキッスする。
- 女
- どう?
- 男
- え。かわいい
- 女
- ほら見てみろ
- 男
- めちゃくちゃかわいいやん。投げキッスしてる姿、めちゃくちゃかわいいやん
- 女
- せやろ
- 男
- 想像してた以上にかわいかったわ
- 女
- あれ、頬赤なってんちゃうん
- 男
- うわ、ほんまや、ほっぺためっちゃ熱い
- 女
- ほらな、私の投げキッス受けたらみんなそうなんねん
- 男
- ありがとう。俺に投げキッスしてくれてほんまありがとう
- 女
- いやええねんけど、別にええねんけどな
- 男
- どうしたん。急にテンション落ちたけど
- 女
- 私、投げキッスせんと人から好かれへんのちゃうかなあって不安になって。
私のこと好きな人って、私がする投げキッスが好きなだけで、
私のことなんか別に好きじゃないんやろうなって思うねんけど、どうやろう
- 男
- 俺、でも、投げキッスされる前から全然好きやで。
お前のこと好きな気持ちに投げキッス関係ないで
- 女
- ほんまに?
- 男
- ほんまほんま
- ――終わりです。