綿棒A
気が付くと私たちは、円柱の形をした狭い部屋にぎっしり詰めこまれていた。
周りを見渡すと、不思議なことに全員同じ顔、同じ体・・・。
気の狂った科学者の、実験なのだろうか・・・。
綿棒B
おい、綿棒A。
綿棒A
綿棒B。
綿棒B
久しぶりだな。元気か。
・・・それは、綿棒Cだ。
おっと。・・・同じ顔だからな。それにしても最近おかしいと思わないか。
なんだか仲間がどんどんいなくなっているというか・・・。
確かに、スッカスカになってきたな。
実は、綿棒Kと綿棒MとTとRとFがいないんだ。
何?
まるで神隠しにでもあってしまったような・・・。
そういえば・・・。
なんだ。
この間、綿棒Xから妙な話を聞いた。我々はあるさだめのもとにあると。
あるさだめ?
それがいつかはわからぬ。しかしある時、巨大な二本の指が天空から現れ、
我々を先の見えぬ洞穴に連れていく。そして頭に何かカスのようなものをひりつけられた後、なんか捨てられる運命らしい。
そんな!!
それが我々の、避けられないさだめだと。
俺は信じないぞ!
綿棒S うわあー。
A・B
綿棒S!!
連れていかれた・・・!やはりさだめは本当・・・!
そんな・・・!
しょうがない。我々も静かに終わりが来るのを待とう・・・。
俺はいやだ!まだまだやりたいことがいっぱいあるんだ!!
何がしたいんだ。
恋。恋がしたい。
恋?
いいものらしいじゃないか。そうだ。綿棒A、俺と恋に落ちてくれ!
・・・それは、綿棒Dだ。
あっ。
それ間違えたらお前、もう・・・。
(綿棒Aに唾をはく)
何をする!
ツバをつけたんだ。
びしょびしょだ・・・。
水もしたたるいい・・・お前どっちだ。
綿棒に性別はない。
じゃあお前がメス、俺がオスということにしよう。
なぜ。
俺以外の男見るの、禁止。
なんだその恋愛ゲームみたいなセリフは。
同じ空の下、一億人の中から、君を見つけたよ。
J-POPじゃないか。ずっと隣にいただろう。
気が付けばいつもそばに君が。
気持ち悪いわ。
壁ドン!・・・あっ、手がなかった!
そりゃそうさ!
よし、結婚式だ!
ええっ?
結婚式っぽい音楽が流れる。
誓います、誓います。
神父もいないのに!
誓いのキッスだ。・・・うわあ、カサカサしてるなあ。
綿棒、だからな。
急に暗くなったな。あっ。手が!天空から巨大な手が!!
うっ!!
綿棒A!
女の声
何この綿棒、濡れてるじゃない。やだー。
助かった。
よかったな!
はっ!上を見ろ!
わー!
綿棒B―!!・・・自業自得、か・・・。
終わり。