- 綿棒A
- 気が付くと私たちは、円柱の形をした狭い部屋にぎっしり詰めこまれていた。
周りを見渡すと、不思議なことに全員同じ顔、同じ体・・・。
気の狂った科学者の、実験なのだろうか・・・。
- 綿棒B
- おい、綿棒A。
- 綿棒A
- 綿棒B。
- 綿棒B
- 久しぶりだな。元気か。
- A
- ・・・それは、綿棒Cだ。
- B
- おっと。・・・同じ顔だからな。それにしても最近おかしいと思わないか。
なんだか仲間がどんどんいなくなっているというか・・・。
- A
- 確かに、スッカスカになってきたな。
- B
- 実は、綿棒Kと綿棒MとTとRとFがいないんだ。
- A
- 何?
- B
- まるで神隠しにでもあってしまったような・・・。
- A
- そういえば・・・。
- B
- なんだ。
- A
- この間、綿棒Xから妙な話を聞いた。我々はあるさだめのもとにあると。
- B
- あるさだめ?
- A
- それがいつかはわからぬ。しかしある時、巨大な二本の指が天空から現れ、
我々を先の見えぬ洞穴に連れていく。そして頭に何かカスのようなものをひりつけられた後、なんか捨てられる運命らしい。
- B
- そんな!!
- A
- それが我々の、避けられないさだめだと。
- B
- 俺は信じないぞ!
綿棒S うわあー。
- A・B
- 綿棒S!!
- A
- 連れていかれた・・・!やはりさだめは本当・・・!
- B
- そんな・・・!
- A
- しょうがない。我々も静かに終わりが来るのを待とう・・・。
- B
- 俺はいやだ!まだまだやりたいことがいっぱいあるんだ!!
- A
- 何がしたいんだ。
- B
- 恋。恋がしたい。
- A
- 恋?
- B
- いいものらしいじゃないか。そうだ。綿棒A、俺と恋に落ちてくれ!
- A
- ・・・それは、綿棒Dだ。
- B
- あっ。
- A
- それ間違えたらお前、もう・・・。
- B
- (綿棒Aに唾をはく)
- A
- 何をする!
- B
- ツバをつけたんだ。
- A
- びしょびしょだ・・・。
- B
- 水もしたたるいい・・・お前どっちだ。
- A
- 綿棒に性別はない。
- B
- じゃあお前がメス、俺がオスということにしよう。
- A
- なぜ。
- B
- 俺以外の男見るの、禁止。
- A
- なんだその恋愛ゲームみたいなセリフは。
- B
- 同じ空の下、一億人の中から、君を見つけたよ。
- A
- J-POPじゃないか。ずっと隣にいただろう。
- B
- 気が付けばいつもそばに君が。
- A
- 気持ち悪いわ。
- B
- 壁ドン!・・・あっ、手がなかった!
- A
- そりゃそうさ!
- B
- よし、結婚式だ!
- A
- ええっ?
- 結婚式っぽい音楽が流れる。
- B
- 誓います、誓います。
- A
- 神父もいないのに!
- B
- 誓いのキッスだ。・・・うわあ、カサカサしてるなあ。
- A
- 綿棒、だからな。
- B
- 急に暗くなったな。あっ。手が!天空から巨大な手が!!
- A
- うっ!!
- B
- 綿棒A!
- 女の声
- 何この綿棒、濡れてるじゃない。やだー。
- A
- 助かった。
- B
- よかったな!
- A
- はっ!上を見ろ!
- B
- わー!
- A
- 綿棒B―!!・・・自業自得、か・・・。
- 終わり。