君。あんぱん食べたでしょう
彼女
えっ
あんぱん、食べたでしょう。
彼女
えと
金屋の、あんぱん、たべたでしょう。ひとつ250円
彼女
食べました。(小さな声)
僕は君にこれは残しておいてねと明日の朝の楽しみですと言ったでしょう。昨日の夜。
彼女
言いました。(小さな声)
なのになぜ君という人は食べてしまうんだ真夜中に。我慢ができなかったのか。
僕の顔を思い出さなかったのか。明日を夢みて楽しみに眠っている僕の顔を。
君は、思い出さなかったのか。
彼女
思い出しました。
!じゃあ君は!僕の寝顔をみながら、食べたというんだね。美味しそうに金屋のあんぱんを。
彼女
違います。
ほう!どう違うというんですか。説明が聞きたい。僕にはその権利がある。
彼女
(歌)・・・・パン、ワールド
む。
彼女
(歌)・あなたとわたし。パン、ワールド。
君はそうやってすぐ、
彼女
(歌)・あなたはいつも、すぐに、夢のなか。
そうです、僕はまぶたを閉じればすぐに眠れる男だ。だって睡眠は、
彼女
(歌)・一番のご褒美。
そう、そうですよ。
彼女
(歌)・だから、わたしは、いつも。真夜中、ひとりきり。
彼女
(歌)・食卓のあんぱん。明日の約束。ぼくたちの約束。
手にした瞬間、やわらかな重み。明日の楽しみが、つまって、いる。
彼女
(歌)・ねえ、おきて、おきてよ。ねえ。世界はひとつ。ひとつきりなのに。
(歌)・ぼくは、眠る。眠り、続ける。
彼女
(歌)・あなたとわたし、ひとつきりの世界。。。。おきて。
ぐー。
彼女
(歌)・食卓のあんぱん。ひとつだけのあんぱん。
眠るあなたと、眠れないわたし。そして、パン。
パン、ワールド。パン、ワールド。
彼女
食べてしまって、ごめんなさい。
しょうがない。君に恋した時点で、僕は君に負けているんです。
彼女
えっ
一緒に買いにいきましょう。京都まで。まったく。理論は歌にかなわない。
おわり。