- ラジオ
- …は、明朝5:00頃になるとの発表がありました。繰り返します。
先ほどの公式会見で…
- 女
- といわけで、今夜が最後の晩餐や。何食べたい?
- 男
- それはもうあれや、バブの玉ねぎまるごと揚げたあるやつ、ハスの花みたいに開いてるやつな。
- 女
- ミートゥー!それな。こないだ行った時、新玉の季節ちゃういうて食べられへんかったもんな。
- 男
- 最後の晩餐ていうか今食べたいやつ!
- 女
- でもな、もう外はえらいことやし店はどっこもやってへん。しかもあんたインフルエンザやし。
- 男
- そうやった。オレどういうわけかインフルやった。こんな世界が終ろうという日にインフルて。
- 女
- だから予防接種しときやっていうてたやん。
- 男
- うーん、いやでもオレ、インフルなったことなかったやんか。思てたよりもだいぶしんどかったけど、なんか世界が終る前にやったことないことできて、これはこれでまぁアリやったかなって。
- 女
- 私もそういや人の看病ちゃんとしたの初めてやったかも。
- 男
- ありがとうな。
- 女
- 熱下がってよかったな。
- ラジオ、ノイズだけになる
- 女
- ラジオの人もはよ帰らなあかんもんな。
- 男
- いや、なんじゃかし仕事しはるんちゃう?最後まで。
- 女
- たいへんやなー。
- 男
- やなー。
- 女
- あそうや、ずっと気になってたこと思い出した!
- 男
- なになに?
- 女
- 私、去年のセールでめっちゃかわいいニット買うたやん。
- 男
- え、色ちがいで5枚おんなじの買うたやつ?
- 女
- ちゃう、もっと前に。まぁ買うてんけど、気に入って着てたら毛玉だらけになって、
あーあーと思っててんけどさ、毛玉取り機あったらええんやって気づいて、
毛玉取り機、ええやつゲットしてん。その毛玉取る作業せなあかんかった。
- 男
- 毛玉取り機とかあるん?
- 女
- そやで。最新の、着たままでも取れるやつやで…これこれ。
- 男
- うそー取ろうや、オレのも取って。
- 女
- ええで。
- 毛玉を取る音
- 女
- すごいわ。めっちゃ取れる。
- 男
- ほんま?見えへん。
- 女
- ほら…新品みたいなる。
- 男
- うそやん、めっちゃキレイなるやん。これ自分がプレゼントしてくれたセーターやで、
もらった時みたいになってる!スゴイなー。
- 女
- サイコー。
- 男
- オレも取ったるわかして。
- 二人
- おおー。
- 男
- 取れるなあ。
- 女
- 取れるなあ。
- 男
- もっと取ろう。
- 女
- 靴下もキレイにしよう。
- 男
- ぬごか?いける?骨とかあるで。
- 女
- いけるいける。
- 男
- 上級テクやな。
- 女
- カーブにそってやるんや。
- 男
- ほーなるほど。かして。自分毛玉すごない?
- 女
- うるさい。
- 男
- …なあなあ。インフルてさ、治っても一週間はあれやろ、
- 女
- ウイルス生きてる。
- 男
- ほんなあれやな、世界が終ってもオレのウイルスは一週間は生き続けるんやな。
- 女
- そうなるな。
- 男
- なんか申し訳ないなあ。オレのせいで孤独な一週間を過ごさせてしまうことになって。
- 女
- ほんまやで。
- 男
- オレのインフルウイルスよ、あとはたのんだで。
世界の終わりのその後を、オレのかわりに見届けてくれ。
- 女
- 了解しました!(変な声で)
- 男
- ウイルス?(笑)
- 女
- ウイルス(笑)
- 男
- あ!穴あいた!
- 女
- ブー!上級者失格じゃ!
- 男
- (笑)
- 女
- (笑)
- 毛玉を取る音
- 終わり