- 朝まで営業している居酒屋。現在、午前3時30分。
複数人の男女が、大きなテーブルで三次会をした後のようだ。
男と女が一人ずつ起きていて、他の人間は寝息を立てて、眠っている。
男と女は酔っている。
- 女
- (大きく、やや高く)えぇー本当ですか?
- 男
- ……うん。
- 女
- へぇーそうなんだぁ……どれくらいですかぁ?遠距離(恋愛)始めて。
- 男
- 3年くらいかなー。
- 女
- えぇー長いですねぇー!すごーーい!えぇーー馴れ初め教えて下さいよー。
- 男
- いやぁ、大したことないよ、高校のバスケ部の後輩で、あっちは、マネージャーしてて。
- 女
- うんうん。
- 男
- 高校卒業するときに、告白されてさ。
- 女
- そうなんだぁーなんかぁ、ドラマみたいでいいですね。
- 男
- へへ…いいでしょ。
- 女
- …。
- 男
- ……あ、まだ飲む?
- 女
- じゃあーソルティードック貰おうかなぁ。
- 男
- おーいいねぇ…(店員に向かって)すみません~!ソルティドック二つ下さい。
- 女
- ありがとうございます。
- 男
- ううん…………さおりちゃん、結構飲むね。
- 女
- はいー、お酒、大好きなんです。
- 男
- 大学で飲むやつあんまりいないからさぁ、嬉しいなぁ。
- 女
- あたしも嬉しいですよー。
- 間。寝息が聞こえる。
- 女
- ……でも、残念です。
- 男
- ん?なにが?
- 女
- だいすけさん、彼女さんいて。
- 男
- まぁ遠距離だけどねぇー。
- 女
- …。
- 男
- 分ってたけどねぇー寂しいよー、やっぱ。
- 間。寝息が聞こえる。
- 女
- ……あたしが、埋めましょうか?
- 男
- えぇ?
- 女
- 寂しさ、あたしが埋めてあげますよぉ。
- 男
- なんだよ急に、さおりちゃん、酔っ払ってるの?
- 女
- 酔っ払っちゃ、駄目ですか?
- 男
- ……。
- 女
- あたし、だいすけさんの事、好きです。
- 男
- で、でも…俺、彼女いるよ?
- 女
- (かなり酩酊して)あたし、だいすけさんの事、好きです!
- ソルティドックが運ばれてきて、テーブルに置かれる。
女、ソルティドックを一気に飲み干す。
- 女
- …ぷはーっ!
- 男
- ………(細い声で)……さおりちゃんは凄く可愛いと思うし、俺みたいなやつじゃ…勿体ないよ
…とか思うけど、でも……もしも、もしもの話なんだけど…俺彼女いなかったら、
さおりちゃんと付き合いたいなぁって、よく思ってるんだけど、でもその……
俺彼女…彼女が…い…る…けど……けど!
- 男もソルティドックを一気に飲み干す。
- 男
- (若干大きい声で)…とりあえず、俺もさおりちゃんのことは好きだよ!
もしも、もしも!遠距離の彼女と別れたら、別れることがあったら!
その時に、付き合うか、どうか、考えさせて下さい!
- 女
- …。
- 男
- …さ、さおりちゃん?…あのー。
- 女
- (寝息を立てている)
- 男
- ……寝てる…の…?
- 女
- (寝息を立てている)。
- 男
- (ため息をひとつ)…………何言ってんだろ、俺………。
- 女
- (寝息を立てている)
- 男
- ……飲み過ぎだな……。
- 男、スマートホンを取り出して、電話をかける。
- 男
- …………(遠距離恋愛をしている彼女が電話に出る)…あ、ごめん、寝てた?あの……
ごめんな…いや、深い意味はないんだけど、あの、ごめんな…。
- 終