朝まで営業している居酒屋。現在、午前3時30分。
複数人の男女が、大きなテーブルで三次会をした後のようだ。
男と女が一人ずつ起きていて、他の人間は寝息を立てて、眠っている。
男と女は酔っている。
(大きく、やや高く)えぇー本当ですか?
……うん。
へぇーそうなんだぁ……どれくらいですかぁ?遠距離(恋愛)始めて。
3年くらいかなー。
えぇー長いですねぇー!すごーーい!えぇーー馴れ初め教えて下さいよー。
いやぁ、大したことないよ、高校のバスケ部の後輩で、あっちは、マネージャーしてて。
うんうん。
高校卒業するときに、告白されてさ。
そうなんだぁーなんかぁ、ドラマみたいでいいですね。
へへ…いいでしょ。
…。
……あ、まだ飲む?
じゃあーソルティードック貰おうかなぁ。
おーいいねぇ…(店員に向かって)すみません~!ソルティドック二つ下さい。
ありがとうございます。
ううん…………さおりちゃん、結構飲むね。
はいー、お酒、大好きなんです。
大学で飲むやつあんまりいないからさぁ、嬉しいなぁ。
あたしも嬉しいですよー。
間。寝息が聞こえる。
……でも、残念です。
ん?なにが?
だいすけさん、彼女さんいて。
まぁ遠距離だけどねぇー。
…。
分ってたけどねぇー寂しいよー、やっぱ。
間。寝息が聞こえる。
……あたしが、埋めましょうか?
えぇ?
寂しさ、あたしが埋めてあげますよぉ。
なんだよ急に、さおりちゃん、酔っ払ってるの?
酔っ払っちゃ、駄目ですか?
……。
あたし、だいすけさんの事、好きです。
で、でも…俺、彼女いるよ?
(かなり酩酊して)あたし、だいすけさんの事、好きです!
ソルティドックが運ばれてきて、テーブルに置かれる。
女、ソルティドックを一気に飲み干す。
…ぷはーっ!
………(細い声で)……さおりちゃんは凄く可愛いと思うし、俺みたいなやつじゃ…勿体ないよ
…とか思うけど、でも……もしも、もしもの話なんだけど…俺彼女いなかったら、
さおりちゃんと付き合いたいなぁって、よく思ってるんだけど、でもその……
俺彼女…彼女が…い…る…けど……けど!
男もソルティドックを一気に飲み干す。
(若干大きい声で)…とりあえず、俺もさおりちゃんのことは好きだよ!
もしも、もしも!遠距離の彼女と別れたら、別れることがあったら!
その時に、付き合うか、どうか、考えさせて下さい!
…。
…さ、さおりちゃん?…あのー。
(寝息を立てている)
……寝てる…の…?
(寝息を立てている)。
(ため息をひとつ)…………何言ってんだろ、俺………。
(寝息を立てている)
……飲み過ぎだな……。
男、スマートホンを取り出して、電話をかける。
…………(遠距離恋愛をしている彼女が電話に出る)…あ、ごめん、寝てた?あの……
ごめんな…いや、深い意味はないんだけど、あの、ごめんな…。