- 岡田
- 俺は分子細胞生物学の研究をしている学生だ。顕微鏡からのぞく世界はまさしく宇宙。
果てなき世界。細胞を研究し、人類の謎を紐解こうとしている。
今日も顕微鏡をのぞけば・・・
お・・こ、これはなんだ。。
- 星崎
- Yo!
- 岡田
- ひ、ひとだ!
ハツカネズミのがん細胞を、まるでピクニックシートのようにして座っているのは、、、
人じゃないか!!こ、これはいったい、、、
- 星崎
- まあ驚くな、岡田。
- 岡田
- お、おれの名前をしっている!
- 星崎
- ぼくだよ、星崎だ。
- 岡田
- ほ、ほしざき???
- 星崎
- よいしょと。そう。ほら。見覚えがあるだろう。
- 岡田
- は!白い歯を見せながら笑うキザったらしいその笑顔!!!
ほしざき!!
- 星崎
- ターンアンドターン
- 岡田
- てめえ!ひとの細胞の上で!
- 星崎
- Hahaha, 相変わらず君は真面目だね。
- 岡田
- おまえ、小さくなったって噂、本当だったのか。
- 星崎
- ああ、そうさ。噂の絶えない男その名も星崎。
- 岡田
- まさかそこまで。。。
- 星崎
- だろ。ぼくだって驚いてる。
- 岡田
- ・・・やってやる。(呟く)
- 星崎
- ん?何かいったかい。
- 岡田
- 潰してやる。いまのおまえならすぐにやれる!
- 星崎
- おっと!
- 岡田
- にげるな!
- 星崎
- ほっ。
- 岡田
- こっちは顕微鏡ごしで動きが繊細なんだよ!
- 星崎
- そんなピペットでぼくを潰せるとでも?
- 岡田
- いまこそしとめてやる!
- 星崎
- よっ きみ、まだ忘れてないんだね。
- 岡田
- 忘れるもんか!
- 星崎
- ほっ
- 岡田
- おまえさえ!おまえさえ現れなけりゃあ!
- 星崎
- ほっ
- 岡田
- 彼女はおれのもんだった!!!
- 星崎
- 執念深いなあ。
- 岡田
- ああ!それがおれの研究に役立ってるんだ!くそう!!
- 星崎
- まあ聞けよ、岡田。
- 岡田
- きかない!
- 星崎
- 僕をみたまえ。こんなにちっぽけな僕がいったい彼女に何をできる?忘れることだね。
- 岡田
- 忘れない!
- 星崎
- 執念深いなあ。(いいねえ) じゃあ教えてやろう。岡田。きみの細胞は死んでいる。
- 岡田
- なっな??
- 星崎
- つまり、きみはもう劣化の一途だよ。
- 岡田
- なに?
- 星崎
- 赤子をみろ。彼らの細胞は眩しい。エネルギーの塊だ。
生きよう、生きようと日々分裂している。それにくらべ、もう背丈の伸びない君よ。
劣化の一途だ。
- 岡田
- なにを言い出すんだ。
- 星崎
- いいのかい。ときめかくなくて。
- 岡田
- へっ
- 星崎
- 産まれながらに授かった、成長エネルギーを使い果たした君。
君はいったい、残る人生、なにを原動力に生きるんだ。
- 岡田
- な、なに・・・?
- 星崎
- それはね、ときめきだよ。人類が唯一その身ひとつで成すことができるエネルギー活動さ。
- 岡田
- ときめき。
- 星崎
- 岡田。おまえ、ときめいてるか。
- 岡田
- お、おれは、、、
- 星崎
- 細胞よりも小さな僕には、見えてるぞ。おまえの細胞は生きながらに死んでいる。
そんなの、さみしいじゃないか。(とても純粋に)
- 岡田
- 星崎、、、
- 星崎
- 僕はこれからさらに小さくなる。もはや、顕微鏡じゃみえなくなるだろう。
遺言とおもい受け取ってくれ。ちっぽけな男への、ちっぽけな憎しみなんて捨て、
いきろ岡田。ときめけ岡田。、、、じゃあね。
- 岡田
- ま、まて!
- 星崎
- ん?
- 岡田
- おれは、おれは忘れないぞ!
- 星崎
- え?
- 岡田
- おまえがいくら小さくなっても!おれは忘れないからな!
- 星崎
- はは、君ってやつは、ほんとう執念深いなあ。(涙ぐむ) ぼくも、
- 岡田
- あっ、星崎、星崎???
どこいった?? み、見えなくなった。
そうか、また小さくなったのか。細胞の次の世界へ、いったのか。ミクロの世界へ。
星崎、おれは忘れない。忘れないからな。
- おしまい