おはよう。
おはよう。
ふふっ。
あーあ。ほんと夢みたい。朝目覚めたら、隣にあなたがいるなんて。
夢じゃないよ。そうだ、ほっぺたをつねってごらん。
え?
女、男の頬をつねる。
いてててて。いや、僕のじゃなくて。君の、君のほっぺた。
あ、ごめん。こう?
そうそう。どうだい、夢じゃないだろう。
……あれ?
ん?
え、全然痛くない。
え?
え? あれ、なにこれ。全然痛くない。え、あ、なにこれ。夢?
いや、え?
え、全然痛くないよ。
……あ、じゃあこれ、夢か。
え?
あ、じゃあこれ、夢だ。
え、え、え、嘘。だって、え? だって、あなたは痛いんでしょ?
いや、実は、僕も痛くはなかったんだよ。
え?
だから、僕の夢かなと思ったんだけど。
え、え、え、どういうこと?
いや、だから、痛くなかったんでしょ? じゃあ、これは、君の夢の中ってことだ。
いやだって、あなたも痛くなかったんでしょう?
君がつねったからね?
ん?
ん?
あ?
いや、夢の君がつねったんだから、痛くないでしょ。
え、ちょっと自分でつねってみてよ。
いいけど。
どう? 痛い?
いや、痛くないよ。
え? じゃあ、夢じゃん。
君のね?
え、だから、あなたも夢じゃん。
いやいや、あなた「も」とか訳わかんねえから。
あ?
あん?
なんだよ。
いや、だから、絶対どっちかの夢だから。
どっちの夢なの。
そりゃ君でしょ。
あん?
あん?
え、じゃあいいよ。あたしの夢だとして、お前ちょっと空飛んでみろよ。
は?
いや出来るでしょ。夢なんだから。ほら。
いや出来ねえよ。
なんで。
てめえの想像力が貧困なんだろ。
なんだコノヤロー。
なんだコノヤロー。さっさと起きろよ、てめー。
てめーが起きろ。てめーの夢だろ。
俺の夢じゃねーよ。てめーなんか夢に見るかバカヤロー。
こっちの台詞だコノヤロー。
上等だコノヤロー。
男、女、取っ組み合い。
目覚まし時計の音。
(目覚めて)はっ! 夢か…。
(同時に)はっ! 夢か…。
二人
え?
END