- 麗らかな昼下がり。
河原では草野球の練習や、ピクニックを楽しむ家族。
一方に喪服の男女。
飛行機が大きく空を横切った。
- 女
- 空、たっかいなぁ。
- 男
- ああ。
- 女
- 吸い込まれそう。
- 男
- うん。
- 女
- あん時も、ここに連れてきてくれたやんなぁ。
- 男
- 飛行機、見に。
- 女
- うん。
- 男
- 想像の翼があれば、どこへでも行けるって。
- 女
- うん。
- 男
- 飛行機眺めて、心落ち着かせて。
- 女
- うん。
- 男
- だから。
- 女
- ありがと。
- 男
- うん。
- 女
- あれから十年かぁ。
- 男
- うん。
- 女
- 一人、また一人、また一人。
- 男
- うん。
- 女
- 飛行機に乗って行ったわけやないんやけどね。
- 男
- うん。
- 女
- そんなん、わかってるつもりやねんけどね。
- 男
- うん。
- 女
- 上向いてたら、少しは我慢できそうな気がして。あ。
- 男がそっと女の手を握った。
また、飛行機が大きく横切った
- 男
- まだや。
- 女
- え。
- 男
- まだ、もうちょっと、こっち側や。
- 女
- うん。
- 男
- 我慢せんでええよ。
- 女の目から涙が溢れ出した。
- 了