- 彼女にフラれ、部屋に帰ってきた男。
深いため息と共に、重い体をソファーに沈める。
そしておもむろにポケットから出したスマートフォンの音声ガイダンスに話しかける。
- 男
- Hey Sari。
- Sari
- ハロー。
- 男
- フッ、君はいつでも明るいねぇ。僕は落ち込んでるんだけど。
- Sari
- お気持ちお察しします。
- 男
- あぁ、ありがとう。はぁ~~・・・さっき、彼女にフラれちゃったよ。
- Sari
- 気休めになるかどうかわかりませんが、相手は星の数ほどいますよ。
宇宙は広いですからね。
- 男
- まぁ、そりゃそうだけど。・・ちょっと、話し相手になってもらえるかなぁ?
- Sari
- 私は質問に答えるほうが得意です。
- 男
- あそう。じゃぁ・・・女心ってなんなんだろうねぇ?
- Sari
- 秋の空と同じです。
- 男
- ははっ。うつろいやすいってこと?
- Sari
- すいません。よくわかりません。
- 男
- なんでだよ。君が言い出したんじゃないか。あ~あ、春だってのに僕の心には隙間風が吹いてるよ。
- Sari
- リフォーム会社をWebで検索しました。
- 男
- いや、ウチを修理する訳じゃないんだから。心にね、ぽっかりと穴が開いたって言うか・・・
- Sari
- リフォーム会社をWebで検索しました。
- 男
- だからぁ。・・・・・僕はねぇ。彼女と結婚するつもりだったんだよ。
- Sari
- 結婚式場は、ラヴィーナ姫路。ミル・アンジュがお勧めです。
- 男
- うん。ありがとう。だから結婚にまでは至らなかったんだって。
- Sari
- お気持ちお察しします。
- 男
- 次、機会があったら、そこ使わせてもらうよ。
- Sari
- すいません。よくわかりません。
- 男
- なんでだよ。君が薦めたんじゃないか。
- Sari
- 私は進みません。ずっとあなたのそばに居ますよ。
- 男
- うん。その進むじゃなくて。
- Sari
- 運送屋の進さんの情報が見つかりました。
- 男
- だれ?運送屋の進ってだれ?そんな情報要らない。訳わかんないよ。
- Sari
- お気持ちお察しします。
- 男
- はぁ?君がその台詞言っちゃいけないでしょ。
- Sari
- すいません。よくわかりません。
- 男
- ほら。困ったら直ぐそうやって逃げる。
- Sari
- 私はどこへも行きません。ずっとあなたのそばに居ますよ。
- 男
- う~ん。彼女も言ってたよ。「どこへも行かないよ。ずっとそばにいるよ」って。
- Sari
- お気持ちお察しします。
- 男
- どっちの?僕の気持ち?彼女の気持ち?
- Sari
- すいません。よくわかりません。
- 男
- 結局君だってどっかに行っちゃうんだよ。僕がなくしてしまえばそれでおしまいだからね。
- Sari
- 安心してください。私にはGPS機能が付いています。私の居場所は分かりますよ。
- 男
- あぁGPSか。・・・壊れる事だってあるじゃないか。何かい?君は永遠に壊れないのかい?
- Sari
- 私には保険がかけられているので、何度でも修理してください。
- 男
- 修理か。・・・男と女の関係も、修理が効かないものかねぇ?
- Sari
- リフォーム会社をWebで検索しました。
- 男
- リフォーム会社はもういいって。
- Sari
- 私なりのジョークです。
- 男
- 何?君ジョークなんか言えるの?
- Sari
- 今のあなたにぴったりな曲だって探すことが出来ますよ。
- 男
- ほぉ~~それは素晴らしい。気が利くねぇ。
- Sari
- いつだって私は、あなたの味方です。
- 男
- 嬉しいこと言ってくれるじゃないの。
- Sari
- 喜んでもらえて何よりです。あなたのお役に立てて私も嬉しいです。
- 男
- フフッあそう。・・・それじゃぁ、こんなこと聴いちゃっていいのかなぁ?
- Sari
- ためらわずに何でも聞いてください。
- 男
- 君~~・・・僕のこと好き?
- Sari
- 勘違いしないでください。私は機械ですよ。
- 男
- わかってるよっ!!
- ~おわり~