- エミリア
- 私はこのスーパー恐山(おそれざん)の女狩人。狙った獲物は逃さない。
人は私をこういう。万引きハンターエミリア……
- 銃声
小動物が倒れる音。
- エミリア
- あんた、いくつ。
- 小鹿
- は、はたちです。
- エミリア
- はたちで万引き?それがどんだけ恥ずかしいことかわかってる?
ポケットの中のもの出して。
- 小鹿
- いやです。
- エミリア
- やったよね。
- 小鹿
- ぼ、ぼく、な、何もしてないです。
- エミリア
- 何もしてないならポケットの中、見せてくれてもいいよね?
- 小鹿
- ぼ、ぼく、ポケットもってないです。
- エミリア
- え?じゃあ君がはいてるのはズボンじゃないの?
- 小鹿
- ズボンじゃないです。
- エミリア
- じゃあそれは何?スカート。
- 小鹿
- スカートです。
- エミリア
- あのね。スカートっていうのは私がはいてるやつのことをいうの。
- 小鹿
- ち、ちがいます。これが僕なりのスカートです。
- エミリア
- 今更嘘言ったってどうにもならないよ?
- 小鹿
- うそじゃないです!!
- エミリア
- 君さ、もしかして刑務所入りたいの?嘘つく人は全員もれなく警察に引き渡してるよ。
もし君がポケットの中のもの出して正直に謝ったら、
もしかしたら刑務所には入らずに済むかもしれない。
- 小鹿
- ……ほ、本当ですか?
- エミリア
- 君次第だよ。
- 小鹿がポケットからキャラメルを取り出し机に置く音。
- 小鹿
- ごめんなさい……
- エミリア
- 本当にこれだけ?
- 小鹿
- 本当です。キャラメル一個です。たったの一個です。99円です。
キャラメルはお母さんの味です。うへへ。
- エミリア
- 警察呼ぶね。
- 小鹿
- え!?そ、そんな!!警察は呼ばないって言ったじゃないですか!?
- エミリア
- それはあんたからキャラメルを引き出すための嘘。
- 小鹿
- ひきょうもの!!
- 銃を構える音
- 小鹿
- ひぃぃぃ
- エミリア
- 本当のひきょうものはどっちだい!!
- 小鹿
- う、う、うわぁぁぁん
- 小鹿が泣く。
パトカーのサイレン音。
- エミリア
- キャラメル一個ぐらい……そんな気持ちで万引きする、か弱き小鹿の群れどもへ……
次に万引きハンターエミリアが狙うのは、そこの君かもしれない……
- 銃声が鳴り響き、
- 終わり