- 病院のとある病室。
窓の外から近くの公園の子どもたちの声が聞こえてくる。
- 男
- やあ・・・。
- 少女
- (心配そうに)お母さん・・・大丈夫?
- 女
- あら、今日も来てくれたの・・・勿論大丈夫。
- 男
- えーと、何か困ったことない・・・食べたいものとか・・・えーと。
- 女
- (笑って)もう、そんなに心配しなくても大丈夫よ。
二人目なんだもの・・・。
- 男
- やっぱり男には何て言うか・・・いつでも、初めてみたいなもんかな。
- 少女
- あのね・・・お母さんいつ帰ってくるの?
- 女
- そうね、そろそろだって思うんだけど・・・ね。
- 男
- もうちょっとだから・・・たぶん。
- 少女
- どうして分からないの?
- 男
- うーん・・・赤ちゃんは今、産まれてくる準備をしてるとこだから。
ちょっと恥ずかしがりやかもしれないから、
僕達に会うのがちょっと恥ずかしくなってるのかもしれないね・・・たぶん。
- 少女
- たぶん・・・たぶんって、変なの。
- 男
- で・・・名前なんだけど、色々考えたんだけど、聞いてくれる。
- 女
- 何?
- 少女
- ・・・・・・・・・。
- 男
- んーとね・・・ちーちゃん、何処行くの?
- 少女
- ちょっと・・・トイレ。
- バタバタと走る足音。
- 少女
- つまんないつまんない、みんな赤ちゃんばっかり。
- 少女、人とぶつかって転ぶ。
- 少女
- あっ・・・。
- 男
- 大丈夫!?
- 少女
- ごめんなさい・・・あれ、お父さん?
- 男
- え?
- 女
- あら、怪我はない?
- 少女
- あれ・・・お母さん・・・お腹どうしたの、へこんでるよ!?
- 女
- ええっと・・・あなたのお母さんとお父さんに似てるのかしら?
- 少女
- うん・・・でも、なんか私の知ってるお母さんとお父さんとちょっと違う・・・。
服とか・・・髪型とか・・・顔の感じが・・・なんかアルバムで見た写真の方に似てるの。
- 男
- へえ、そんなに似てるんだ。
- 女
- ねえ・・・あなたのお母さん、ひょっとしてもうすぐ赤ちゃんが生まれるの?
- 少女
- うん・・・。
- 男
- なんか、あまり嬉しそうじゃないね。
- 少女
- だって・・・みんな赤ちゃんのことばっかりだから。
ちーちゃん・・・ちょっと、つまんないの。
- 男
- ・・・そっか。
- 女
- きっと、お母さん達も・・・あなたのことも大事に思ってるわよ。
でも、赤ちゃんが産まれてくるのって簡単なことじゃないの。
無事に生まれるまで時間がかかるし、お母さんも二人分、頑張って動くし食べるし・・・なんか色々大変なの・・・たぶん。
- 少女
- たぶん?
- 女
- うん、私もこれから・・・お母さんになるから、まだ分かんないんだけどね。
赤ちゃんが出来たんだけど、これからお腹が大きくなっていって、
たぶん色々あると思うから緊張しちゃって。
- 少女
- どーして?
- 女
- だって、やっぱり初めてだし、お腹の赤ちゃんが元気で生まれてきてくれるようにって考えると・・・緊張しちゃうわね・・・仲良くやっていけるかなとか。
たぶん、あなたのお母さんも、何回目でも同じ気持なのかも。
赤ちゃんにとっては、毎日が初めてで・・・
お母さんにとっても赤ちゃんとはじめましての毎日が始まるんだもん。
- 男
- そんなこと言われたら、緊張しちゃうなあ・・・僕も毎日が初めてだし。
- 女
- (笑って)そうね・・・頑張らなくっちゃね。
- 少女
- そっか・・・ちーちゃんも赤ちゃんも、毎日が初めてになるんだ・・・。
- 男
- 僕も頑張るから、君も頑張って。
- 少女
- うん、ありがとう。
- 少女、走って行く。
- 男
- ちーちゃん、おかえり。
- 少女
- ただいま。
- 少女
- お母さん・・・お腹触っていい?
- 女
- いいわよ。
- 少女
- 赤ちゃん・・・ちーちゃんも頑張るから・・・毎日新しいこと一緒に頑張ろうね。
- 男
- そうだね・・・僕も毎日が初めてだ・・・君とちーちゃんと赤ちゃんとの毎日。
- 3人思わず笑顔になる。
- 女
- そういえばあの子、元気かなあ。
- 男
- ああ・・・あの「ちーちゃん」ね。
- 少女
- ちーちゃん?
- 男
- ええっとね・・・・。
- 楽しそうに話を続ける3人。
- 終わり。