ネバネバした音。
うぉ……くさい……くさい。
そこへ女がやってくる。
あのすいません。あなたも遭難者ですか。
ええ。そのようです。
ここは……どこですか?
……わかりません。
これ、納豆ですよね。
そのようです。
世界はいつの間に納豆で溢れかえってしまったのですか?
わかりません。気が付いたらここに。
……同じです。最後の記憶、それは納豆を食べている記憶……
……同じです。あ。
え?
ちょっと動かないで……頭に刻みネギが。
ネギをとってやる。
ほら。
ありがとうございます。あ。
え?
ちょっと動かないで……頭に細切れのイカが。
イカをとってやる。
ほら。
ありがとうございます。
納豆にイカはいれるタイプですか?
もちろんです。イカの入っていない納豆なんてただの納豆です。僕の求める納豆はイカ納豆です。
……わかります。
……本当ですか?
ええ。心の底から。
……はじめてです。イカ納豆に共感を示してくれた方は。あ。
え?
ちょっと動かないで……耳に何か入ってます。
男は何かをとってやる。
これは……キムチだ。
……ごめんなさい。
……なぜ謝るんです?
……実は私、イカも大好きですけどキムチが……キムチ納豆が……好きなんです。
……僕もです。
え?
イカと同じぐらい……
……ふふふ。
……ふふふ。
……ここ、暖かいですね。
……ええ。納豆はいつでも僕らを優しく包んでくれる。ちょっと臭いですけど……
その臭さに私は親しみを覚えます。
……さて、どうしましょうか?
とりあえずどこか陸を探さないと。
そうですね……ああ。そうか何か足りないと思ったら。
なんです?
……ライスですよ。
……ああ。
きっと陸にライスがあるんでしょう。
……卵もあるかな?
ふふふ。ありますよ。
二人は納豆の海を泳ぎだして……
終わり