- バタバタと走ってくる音。
- 少女
- ねえ、何かお手伝いすることなあい?
- 男
- どうしたの、ちーちゃん?
- 少女
- 今日は・・・・何かお手伝いしたい気分なの。
- 男
- ん・・・・ひょっとして、春休みの宿題で「お手伝い」があるとか、そうでしょ?
- 少女
- ちがうもーん、そんなんじゃないもん。
ねえねえ、お手伝いなんかなあい?
- 男
- うーんと・・・今は、ないかなあ。
- 少女
- もう。
- 男
- どうしたの、お手伝いなんて・・・・ちょっぴりお姉さんっぽいこと言ったりして。
- 少女
- (照れ笑いしながら)分かっちゃった?
だって・・・・・「おねえさん」になるんだもん。
- 男
- おねーさん?
- 少女
- そう、おねえさん!
- 男
- おねえさんって・・・・もしかしてもしかして・・・・
ええっ、そうなの・・・ちーちゃん!?
- 玄関のドアを開ける音。
- 女
- ただいまー、遅くなっちゃったスーパー混んでて。
- 男
- お、おかえり・・・・・ね、そうなの本当に!?
- 女
- ええっ・・・何・・・どうしたの?
- 男
- いや・・・・・その、なんて言ったらいいか、ほら・・・ちーちゃん。
- 少女
- ちーちゃん、「おねえさん」になるの。
- 男
- ほら。
- 少女
- ねー。
- 女
- ?
- 男
- なんで、言ってくれないの・・・・水臭いっていうか、なんていうか、ねえ。
- 女
- えーと・・・・・ちーちゃん、どういうこと?
- 少女
- 明日、1年生の子達のおねえさんになるんだよ。
- 男
- ん?
- 女
- ああ・・・入学式の時に、お手伝いするってプリントに書いてたわね。
- 男
- えーと、つまり・・・。
- 少女
- 「きょうだい学級」っていうのがあって、
ちーちゃん達のクラスは、1年生のお兄さんやお姉さんになるの。
- 男
- え・・・・・ああ、そっちの「おねえさん」ね・・・・・。
- 女
- どの「おねえさん」だと思ってたの?
- 男
- (笑ってごまかす)
- 少女
- ねえねえ、お母さん・・・何かお手伝いすることなあい?
- 女
- そうね・・・・お手伝いして欲しいこともあるにはあるけど、
明日のお手伝いってどんなことするの?
- 少女
- えーとね、1年生の子のお洋服にお花のコ、コサ・・・・・なんだっけ?
- 男
- コサージュ?
- 少女
- そう・・・・それをつけてあげて、一緒に手を繋いで・・・・
えーと体育館を行進するの。
- 男
- ああ、入場ね。
- 少女
- そうそう、それ。
- 男
- そうか、ちーちゃんも・・・おねえさんデビューか・・・・ちょっと、危なっかしいけど。
- 女
- (少し笑って)そういうところ、あなたに似てるわね。
- 男
- ええっ・・・・・結構しっかりしてるけどなあ。
- 女
- そう?
- 男
- 勿論、こう見えても「お父さん」ですから。
- 女
- それもそうね。
- 2人思わず笑う。
- 少女
- ねえ、ちょっとお手伝いの練習のお手伝いして欲しいんだけど。
- 男
- 何したらいいの?
- 少女
- 1年生の役、やって。
- 男
- ええっ・・・・・うんちょっと・・・かなり大きな1年生役だけどいいかな。
- 少女
- いいよ・・・・やっぱり、大きいかな。
- 男
- ひどいなあ、ちーちゃん。
- 3人思わず笑ってしまう。
- 終わり