寒風が吹き抜ける音。
うう・・・・寒い。
心の寒さか、体の寒さ・・・・・どっちが原因だろ・・・・心だよなあ、やっぱ。
(涙ぐんで) なんで・・・・フラレたのかなあ・・・・。
なんで・・・・クリスマス前なんだよ・・・・・。
っていうか・・・・クリスマス前にフラレるのってなんで?
どうせ別れるなら、クリスマス終わってからにしてよ・・・・・。
いや、別れる前提みたいな付き合いしてたわけじゃないんだけど・・・・・。
もう・・・・何、ずっと一人でぶつぶつ言ってんだろ・・・・俺しかいないのに。
シクシクと子供の泣き声が聞こえてくる。
なんか・・・・泣き声が聞こえる・・・・・自分が悲しいからって空耳すぎるだろ。
王子
うう・・・・・ママ・・・・・・。
そうだよな・・・・人寂しいんだよ、恋しいんだよなあ・・・・・ママが・・・・・え?
王子
ママ・・・・・ママ上さまあ・・・・。
迷子かな・・・・何処にいるんだろ、すごく近くで聞こえるんだけど。
おーい・・・・・泣いてる子・・・・・何処にいるんだ、出ておいで・・・
一緒にママを探してやるからさ。
王子
うう・・・・ここです。
え?
王子
ここ・・・。
何処?
王子
もう、ここだって!
ピュン。
わっ・・・・何か飛んできた。
星の飾り・・・・ピカピカ光ってる。
王子
飾りとは、失礼な!
喋った・・・・・!?
王子
ボクは飾りじゃないぞ・・・・正真正銘の星の子・・・・・星の王子様だ!
ホシノオウジサマ?
王子
いかにも。
俺・・・・・とうとうおかしくなったのかな・・・・。
王子
ボクに会えるなんて・・・・おじさんは、とてもラッキーなんだぞ。
おじさん・・・・せめて・・・お兄さんって、言ってくれないかな?
王子
では・・早速参ろうぞ!
何処に?
王子
先程言ったではないか・・・ママ上さまを探してくれると。
ああ・・・・・そうだった。
ママとは、どこではぐれたんだ?
王子
宇宙の彼方から、ここに飛んでくる途中で・・・・・。
なんとアバウト・・・この幻影と幻聴。
王子
これは現実に今、おこっているのだぞ。
で・・・・王子様、君は何しにこの星へ?
まさか・・・・地球侵略とか!?
王子
失礼な、そんな物騒な用件ではないぞ。
じゃあ、何?
王子
えっへん・・・・・クリスマスだ。
クリスマス?
王子
さよう・・・・年に一度の聖なる夜を照らすためにやってきたのだ。
毎年、きてるの?
王子
ううん、今年で初めて・・・・ボクは方向音痴だから・・・・。
だから、お母さんと一緒・・・・
クリスマスを君に任せて大丈夫かなあ・・・。
王子
うるさーい!聖なる夜を照らす一人星になってこそ、星の王になれるんだ!
でも・・・・・・ママがいないと、それも難しいんだろ?
王子
そうだ・・・・・・ママ・・・・ママ上様。
おいおい、泣くな・・・・・きっと、今頃ママも探してるだろうな。
しかし、いくらピカピカに光ってても・・・夜だしこんなに広くちゃ難しいかも。
王子
・・・・・・うう、どうすれば。
あっ・・・・そうだ!
王子様・・・・・あの大きな木の上まで飛べるかな?
あのてっぺんでピカピカしてればきっと、ママがお前を見つけてくれる。
王子
なるほど・・・・ママ上さまー!
ピュピュン。
お、飛んだ飛んだ・・・・・木の上でピカピカしてまるでクリスマスツリーだな。
ピュン。
流れ星・・・・・・あ、急に止まった。
女王
ぼうやー、そこにいたのね。
王子
ママ上さまー!
おっ・・・ママ上様か・・・・・おーい、王子様・・・・良かったなあ!
王子
ありがとー!
女王
ありがとうございます・・・・
お礼にあなたの願いを1つ叶えます。
3回、願いを唱えてくださいね。
じゃあ・・・・・恋・恋・恋!
シュシューン。
あ、消えた・・・・。
電話がなる。
もしかして・・・・もしかすると・・・(出て)もしもし・・・。
音楽が嬉しそうな男を包み込むように聞こえてくる。
おわり。