- 男
- 具合どう・・・・・熱、まだあるかな?
- 女
- ごめんね・・・・ご飯の用意・・・・。
- 男
- 大丈夫、今日は俺がやるから・・・・そのまま寝てて。
- 女
- でも・・・・。
- 男
- ちょっとしたもんなら、作れるし・・・・何か食べたいものあったら言ってよ。
- 女
- うーんとね。
- 氷水にタオルを浸して絞り上げる音。
- 女
- ・・・カレーが食べたいな。
- 男
- ・・・・えっ?
- 女
- 美味しいカレー、食べたい・・・・・。
- 男
- ええっと・・・・やっぱり風邪の時は、うどんとか・・・・って、寝ちゃってる。
- 女
- (ぐっすり)・・・・・・・・。
- 男
- なんで・・・リクエスト聞いちゃったのかなあ・・・・実は料理なんて出来ないし。
素麺とか冷やしうどんなら、俺にも出来ると思ったんだけど・・・・。
それか、みかんとか桃の缶詰とかって言うと思ったんだけど・・・子供じゃないもんなあ。
いっそのこと、聞かなかったことにしようか・・・・それともレトルトにしようか。
- 女
- ・・・・・カレー、食べたいな・・・・・。
- 男
- 寝言・・・・もう、お嫁ちゃんにここまで言われたら・・・やるしかないよなあ。
あれって・・・どうやって作るんだろう・・・・炒めたり煮込んだりするんだろ?
時間かかるのかな・・・・・・とにかくなんとかしないと・・・・検索・・・検索。
- スマートフォンで入力する音。
- 男
- (打ちながら)カレー、スピードメニュー・・・・・あった。
ホールトマトと茄子と鶏肉で簡単カレー。
- バタバタと戸棚や冷蔵庫を開ける音。
- 男
- ホールトマトの缶詰、よし!茄子よーし!玉ねぎよーし!・・・・・鶏肉・・・・ない!?
どうしよう・・・・ええっと「鶏肉がない場合はツナ缶でも可」!?
えーと、何処だ・・・・・あった!良かった・・・・・・。
よし・・・・やりますか。
- ぎこちなく、包丁で切る音。
- 男
- 茄子は乱切り・・・・・って何だろ?
こんな感じかな・・・・・違うかな・・・・・いや、乱れて切るって書くからいいんだよな。
玉ねぎ・・・・・・・うう、目に染みるなあ・・・・涙止まらないし・・・・・。
あいつ・・・・毎日こんな大変な感じで、御飯作ってるのか・・・今度からもっと優しくしよう、ホント・・・・。
- 炒める音が聞こえてくる。
- 男
- うん・・・・・なんか、料理っぽくなってきた・・・・いい感じいい感じ!
よし・・・次はどうするんだ・・・・えーと、「カレー粉を加えて更に炒めます。」
うんうん・・・・・・あれ、カレー粉って何処にあるんだよ・・・・・。
- 台所の戸棚の引き出しを開けて探す男。
- 男
- 一番、肝心な・・・・・カレー粉がない・・・・・どうしよう。
- コトリと何かを置く音。
- 女
- はい・・・・カレー粉。
- 男
- 良かったあ・・・・ってごめん、起こしちゃったよね?
- 女
- ううん、大丈夫・・・・・何かいい匂いがしてきたから。
本当に作ってくれるなんて思わなくって・・・・・。
- 男
- びっくりしたっていうか・・・・危なっかしいよなあ、きっと・・・・ははは。
もうちょっと待ってて・・・・出来たら、起こすから。
- 女
- 大丈夫。
- 男
- でも・・・・・。
- 女
- なんかね・・・・嬉しくなったから、ちょっと元気になったみたい。
- 男
- そっか・・・・そんなに食べたかったんだなあ。
お前・・・・・好きだもんなあ、カレー。
- 女
- それもあるんだけど・・・・。
- 男
- ん?
- 女
- 私のために・・・・一生懸命、カレー作ってくれるのがやっぱり一番・・・嬉しいかな。
- 2人、少し笑う。
- 男
- (照れ隠しのように)ええっと・・・カレー粉ってどれぐらい入れるの?
- 女
- もうちょっと・・・。
- 男
- これぐらい?
- 女
- そうそう。
- 2人の楽しそうな会話が台所で静かに響いていく。
- 終わり