借りたいビデオはいつも借りられている・・・畜生。
どうしたの?
まただ。またない。この前も借りようと思ってたのに。
二人は歩き出す。
たぶん延長してるんだよ。
いや違う。俺が借りようと思うやつはいっつもないんだ。
あんたはタイミングが悪いから。
そうか?本当にそうか?まだ新作映画とかならわかるよ。だってみんな見たいもん。
そりゃあ借りるさ。でも俺がいつも借りたいのは旧作映画だし。
しかもかなりマニアックなやつだし。え?今、それ借りる?ってタイミングのやつだし。
ねぇ。あたしこれ観てない。
ちょっと俺の話、聞いてる?
うん、聞いてない。
聞けよ。これは誰かの陰謀だぞ。
誰かって誰?
まさかお前じゃないだろうな?
あんたって本当に映画のこととなると面倒くさいね。
・・・あ。
何?
新たに観たい映画、思いついた。「小さな恋のメロディ」
あ。あたしも見たいかも。
今、棚にあると思う?あったらおまえの身の潔白は証明されるな?
二人は駆け足になる。
ち、ち、ち、ち・・・あ!!
あった?
・・・レンタル中。
あたし、あんたと別れようかしら。
あー!!!(と悶絶する)
すると遠くから店員の声。
店員
返却日は25日までとなっております。ありがとうございましたー。
エントランスが閉まる音。
・・・おい。見ろよ。今、借りていったやつ。あいつ、俺がビデオ借りに来るといつもいる・・・
はぁ?
あいつだ。
男は走りだす。
ちょっと!
俺は走ってそいつを追いかける。今日こそ一言いってやる!
レンタル中の恨みは恐ろしいんだぞ!言ってやる。言ってやる、言ってやる!
そしてとうとうやつの居場所を突き止めた!
ドアを勢いよく開ける音。
このやろう!!いっつも先に借りてんじゃねぇー!!
・・・あれ?ここって・・・俺んちじゃん!
ただいまー。
おい。どこ行った?あの男?
はぁ?何言ってんの?もう急に走り出して。頭おかしくなったかと思ったわ。
・・・あ。
ガサゴソと音がする。
「小さな恋のメロディ」・・・返却日。昨日まで・・・
・・・よし。別れましょう。
終わり