- 男
- 借りたいビデオはいつも借りられている・・・畜生。
- 女
- どうしたの?
- 男
- まただ。またない。この前も借りようと思ってたのに。
- 二人は歩き出す。
- 女
- たぶん延長してるんだよ。
- 男
- いや違う。俺が借りようと思うやつはいっつもないんだ。
- 女
- あんたはタイミングが悪いから。
- 男
- そうか?本当にそうか?まだ新作映画とかならわかるよ。だってみんな見たいもん。
そりゃあ借りるさ。でも俺がいつも借りたいのは旧作映画だし。
しかもかなりマニアックなやつだし。え?今、それ借りる?ってタイミングのやつだし。
- 女
- ねぇ。あたしこれ観てない。
- 男
- ちょっと俺の話、聞いてる?
- 女
- うん、聞いてない。
- 男
- 聞けよ。これは誰かの陰謀だぞ。
- 女
- 誰かって誰?
- 男
- まさかお前じゃないだろうな?
- 女
- あんたって本当に映画のこととなると面倒くさいね。
- 男
- ・・・あ。
- 女
- 何?
- 男
- 新たに観たい映画、思いついた。「小さな恋のメロディ」
- 女
- あ。あたしも見たいかも。
- 男
- 今、棚にあると思う?あったらおまえの身の潔白は証明されるな?
- 二人は駆け足になる。
- 男
- ち、ち、ち、ち・・・あ!!
- 女
- あった?
- 男
- ・・・レンタル中。
- 女
- あたし、あんたと別れようかしら。
- 男
- あー!!!(と悶絶する)
- すると遠くから店員の声。
- 店員
- 返却日は25日までとなっております。ありがとうございましたー。
- エントランスが閉まる音。
- 男
- ・・・おい。見ろよ。今、借りていったやつ。あいつ、俺がビデオ借りに来るといつもいる・・・
- 女
- はぁ?
- 男
- あいつだ。
- 男は走りだす。
- 女
- ちょっと!
- 男
- 俺は走ってそいつを追いかける。今日こそ一言いってやる!
レンタル中の恨みは恐ろしいんだぞ!言ってやる。言ってやる、言ってやる!
そしてとうとうやつの居場所を突き止めた!
- ドアを勢いよく開ける音。
- 男
- このやろう!!いっつも先に借りてんじゃねぇー!!
- 間
- 男
- ・・・あれ?ここって・・・俺んちじゃん!
- 女
- ただいまー。
- 男
- おい。どこ行った?あの男?
- 女
- はぁ?何言ってんの?もう急に走り出して。頭おかしくなったかと思ったわ。
- 男
- ・・・あ。
- ガサゴソと音がする。
- 男
- 「小さな恋のメロディ」・・・返却日。昨日まで・・・
- 女
- ・・・よし。別れましょう。
- 終わり