- バタバタと足音が聞こえてくる。
- 少女
- ただいまー。
- 男
- おかえり、ちーちゃん。
- 少女
- ねえ・・・ちょっと、お願いがあるの。
- 男
- ん、何?
- 少女
- うーんと・・・・あのね・・・・・欲しいものがあるの。
- 男
- 分かった・・・ちーちゃん、おやつの時間まで、もうちょっと我慢してね。
- 少女
- ちがうもーん・・・おやつじゃないもん。
- 男
- ん・・・・・何かな?
- 少女
- んーと・・・・お人形さんが欲しいんだけど。
- 男
- そう言えば・・・・もうすぐ、ちーちゃんのお誕生日だったね。
よしっ、お誕生日に買いに行こうか。
- 少女
- 違う・・・・違うの。
- 男
- えっ・・・何が・・・違うのかな?
- 少女
- それじゃあ、遅いの・・・・・間に合わないよー。
- 男
- ええっ・・間に合わない?
- 少女
- 明後日までには・・・・・欲しいんだもん。
- 男
- 明後日・・・・、何があったっけ・・・・今日が1日だろ・・・明後日は3日。
分かった、ちーちゃん!お雛祭り!
- 少女
- そう・・・・お雛様の人形が欲しいの。
- 男
- もう、ちーちゃん・・・早く言ってよ・・・じゃあ・・・・・(言いかけてやめる)
- 「ちょっと、待って・・・・いくら何でも、お雛様ってあれって、
すっごく高いんだよなあ、確か・・・・・。
もし・・・・もしもだよ、買えたとしても・・・・この家にあんな何段も飾るような
スペースなんてないんじゃないかなあ・・・・・・うん、ないなあ。
どうしよ・・・・・女の子だもんなあ、欲しいよなあ・・・・やっぱり。」
- 少女
- ねえ・・・・おひなさま、欲しいよお。
- 男
- ちーちゃん・・・・・うーんと・・・えっと。
- 少女
- ダメなの・・・・かな。
- 男
- ええっと、その・・・・うーん。
- ドアをガチャリと開ける音。
- 女
- ただいまー・・・もう、スーパー混んじゃって遅くなっちゃった、ごめんね。
って・・・・・どうしたの、二人共。
- 男
- それが・・・・。
- 少女
- ちーちゃん・・・おひなさま・・・・欲しいの。
- 男
- やっぱり、お年ごろかな・・・・欲しいよなあ。
(小声で)飾ってあげたいけど・・・・飾るとこなんて・・・・それにあれって・・・。
- 女
- そうね、女の子だもの・・・・飾っちゃいましょう。
- 少女
- わーやったー!!
- 男
- え・・・・えっ・・・・どうするの?
- 女
- 作るのよ、お雛様。
- 男
- どうやって?
- 女
- じゃーん。
- 少女・男
- おりがみ?
- 女
- うん、ちょっと他のお雛様よりスリムだけど、
その代わり、ちーちゃんの好きな色の着物を着せてあげれるわよ。
- 少女
- わー、色んな模様の折り紙がある・・・・・きれい!
- 女
- 気に入った?・・これをこうやって折り目をつけて・・・
広げて、折ってここに、お雛様のお顔を書いてみて。
- 少女
- わー・・・・出来た・・・・かわいい!
- 男
- 上手だぞー、ちーちゃん。
- 少女
- 他のお雛様のお人形、ちょっと怖い顔してるけど、これすっごくカワイイ!
- 男
- お雛様っていうより、「おひなちゃん」って感じするね。
- 少女
- 色んなおひなちゃん、折ってみるー。
- 男
- ちーちゃんも、頑張ってるなら・・・・やってみようかな。
あ、金色の紙もある・・・・・ちょっといい?
- 女
- いいわよ、何?
- 少女
- おびなさま、作ってくれるの?
- 男
- そんな難しいのは、いきなりは無理だけど・・・・これをこうして広げて段折にして、
広げますっと・・・・お雛様の後ろに置くと。
- 少女
- わー!!
- 女
- 金屏風ね・・・・とっても豪華。
- 男
- でしょ・・・・ちょっと、面白いかも・・・次は、桃の花とか挑戦してみようかな。
- 少女
- ちーちゃんも、折りたい!
- 男
- じゃあ、ちーちゃんは桃の花・・・・・僕は・・・・・何、折ろうかな?
- 少女
- ぼんぼりー。
- 男
- えっ・・・・・ぼんぼりって、どういうやつ?
- 少女
- (歌う)明かりをつけましょ、ぼんぼりにー。だよ。
- 男
- ああ、そうか・・・・・って、どうやって折るんだろ。
- 3人共、賑やかに笑いながら折り紙を手にする。
- おわり。